アメリカ疾病管理予防センター(CDC)は10月15日、アメリカで初めてエボラ出血熱により死亡したトーマス・エリック・ダンカン氏の治療に携わっていたまた別の女性看護師が、エボラ出血熱に感染したことを確認したと発表した。
アメリカ国内で感染した医療従事者は、これで2人目となる。しかもこの看護師は、症状が出た前日の10月13日に、国内便の飛行機に搭乗していたという。オハイオ州クリーブランド発、テキサス州ダラス行きの便だ。
CDCのトム・フリーデン長官は電話会見で、報道陣に対して次のように述べた。「この看護師は、民間航空機で旅行すべきではなかった。こういった場合のCDCガイドラインでは、いわゆる『制限された移動』が必要であることを規定している。これにはチャーター機や自動車が含まれるが、公共交通機関は含まれない」
この看護師は、ダンカン氏の治療にあたった76人の看護師のうちの1人だったため、飛行機に乗るべきではなかった、とフリーデン長官は述べた。76人は現在、全員が監視下に置かれている。
同長官はさらに、この看護師と同じ飛行機に搭乗していた人がエボラ出血熱に感染するリスクはほとんどないだろうとも付け加えた。エボラ出血熱は体液に触れることで感染するからだ。ただし、CDCは念のため、他の乗客たちに連絡を取っているという。
フリーデン長官は次のように述べた。「2人目の感染者が、搭乗の翌日まで発熱せず、機内で吐き気を催したり嘔吐することもなかったという事実は、この個人の周囲にいた乗客へのリスクが極めて低いことを示すものだ。ただしわれわれは、常により一層の安全対策を講じていく」
フリーデン長官ら衛生当局者は当初、1人目の感染者となった、ダラスにあるテキサス長老派教会病院の看護師ニーナ・ファムさんについて、「規定違反」があったに違いないということ以外、発病した状況や、エボラ出血熱に感染した経緯はわからないと述べていた。フリーデン長官は15日、何が問題だったのかが明らかになってきたことを示唆した。
「2人目の感染者は、1人目と同様、患者(ダンカン氏)による大量の嘔吐と下痢を処理していた際にかなりの接触があった」と、フリーデン長官は説明している。
病院の状態を査察したCDCチームによると、(ダンカン氏が)入院していた最初の数日間に、「さまざまな形態の個人用防護具」が使われたという。これに関して、登録看護師を代表するアメリカ最大の労働組合「全米看護師連合」(NNU)は10月14日、テキサス長老派教会病院の職員たちが、ダンカン氏の入院後、訓練や設備が不十分だと批判していたことを明らかにした。
NNUのデボラ・バーガー共同議長は次のように述べている。「看護師たちは、ダンカン氏がおびただしい量の下痢と嘔吐を繰り返し、感染源となる液体を大量に吐き出す間も、何であれその時点で利用できる限りの防護具を身に付けてダンカン氏と接触しなければならなかった」
NNUの根本的な主張は、ダラスの病院だけでなく他のどの病院であっても、エボラ出血熱に対応する訓練も設備も足りておらず(日本語版記事)、CDCの規定に従うことができない、というものだ。こうした主張についてハフポストUS版がフリーデン長官に尋ねたところ、長官は、CDCは当該病院と緊密に連携していると述べた。
フリーデン長官はさらに、アメリカ政府の対応として、看護師たちが個人用防護具を着脱する様子をチェックする現場監督者を置いた、と付け加えた(個人用防護具の安全な着脱手順は非常に複雑で、プロセスをチェックする専門スタッフが必要とされている)。
さらに、保健福祉省のシルビア・バーウェル長官は、オバマ政権が、どの病院でエボラ出血熱が発生してもすぐに駆け付けられる対策チームを設置したと述べた。
3月以降、4000人以上がエボラ出血熱に感染して死亡しており、そのほとんどは西アフリカで発生している。ダラスの病院で感染した2人の看護師は、アメリカで初めてエボラウイルスに感染した例となる。
[Arthur Delaney(English) 日本語版:湯本牧子/ガリレオ]
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