【エボラ出血熱】アメリカの看護師たちが悲痛な訴え「訓練も説明も受けていない」

エボラ出血熱に医療関係者が感染する危険性を取り除くには、治療活動を繰り返し練習・訓練し、実践する必要があるが、現場で働く看護師たちは適切なトレーニングを受けていないと話す。
DALLAS, TX - OCTOBER 14: The Texas Health Presbyterian Hospital, where health care worker Nina Pham, is being treated for the Ebola virus is seen on October 14, 2014 in Dallas, Texas. Pham contracted the virus when she provided treatment to Thomas Eric Duncan, the West African man who later died from the disease. (Photo by Mike Stone/Getty Images)
DALLAS, TX - OCTOBER 14: The Texas Health Presbyterian Hospital, where health care worker Nina Pham, is being treated for the Ebola virus is seen on October 14, 2014 in Dallas, Texas. Pham contracted the virus when she provided treatment to Thomas Eric Duncan, the West African man who later died from the disease. (Photo by Mike Stone/Getty Images)
Mike Stone via Getty Images

致死性の高いエボラ出血熱に医療関係者が感染する危険性を完全に取り除くには、長年にわたって治療活動を繰り返し練習・訓練し、さらには細心の注意を払って実践する必要がある。現場で働く看護師たちはそう訴えている。彼らはまた、自らの身や社会を守るための適切なトレーニングを受けていないと話す。

「治療手順のトレーニングを受けたいと要望を出していますが、まだ実現されていません」。カリフォルニア州オークランドのカイザー・パーマネンテ総合病院に勤務し、全米看護師連合(NNU)のメンバーでもあるケイティ・レーマー正看護師はそう語る。「最低限の指示が書かれたプリントが数枚配られましたが、エボラ出血熱のようなウィルスに対処するには十分ではありません」

レーマー看護師のような意見は、NNUが2000人以上の看護師を対象に、「勤務先の医療機関がエボラ出血熱への備えが十分かどうか」を尋ねた調査結果でも数多く見受けられた。「エボラ出血熱患者の受け入れ態勢に関して勤務先から何の説明も受けていない」という回答は76%、「エボラ出血熱の治療手順に関する看護師向け説明会が開かれていない」という回答は85%だった。

また、NNUの調査では、「目を保護するゴーグルの在庫が不十分」と答えたのが37%、「不浸透性ガウンの在庫が不十分」と答えたのが36%、「隔離施設用のプラスチックシートや使い捨て寝具の備蓄計画がない」と答えたのが39%となっている。

アメリカ国内でエボラ出血熱が初めて確認された患者トーマス・エリック・ダンカン氏(10月8日に死亡)の治療に携わっていた看護師ニーナ・ファムさんが感染したことが確認された翌日の10月13日、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のトム・フリーデン長官は会見で、病院スタッフのトレーニングや治療手順に改善の必要性があることを認めた。

CDCは現在、ファムさんが感染した経緯を詳しく調査中だ。「この個人が隔離施設内で感染した経緯が把握できなければ、他の関係者も感染する可能性がある」とフリーデン長官は述べた。

公衆衛生当局者は、万全の備えを誇る数少ない医療施設のひとつに注目している。それは、ネブラスカ州にあるネブラスカ医療センターの生物学的封じ込め施設(Biocontainment Unit)だ。リベリアでエボラ出血熱に感染した3人目のアメリカ人支援者であるリチャード・サクラ医師と、米国人としては5人目の感染者となったNBCニュースのカメラマン、アショカ・ムクボ氏が帰国して治療を受けた医療機関だ。

伝染病患者ならびにバイオテロの被害者受け入れを目的とした生物学的封じ込め施設を備える医療機関はアメリカに4つあるが、ネブラスカ医療センターはそのひとつだ。その規模は全米最大で、エアロック(二重気密ドア)の専用出入り口のほか、スタッフ用の汚染除去シャワー、隔離施設の空気が院内の他の部分に流れ込むのを防ぐ負圧空調等が備えられている(エボラ出血熱は空気感染ではないが)。また、生物学的封じ込め施設の中に専用の研究室(BSL-3)もあるので、検査のために検体が病院内で持ち運ばれることもない。

看護学修士号を持ち、同施設の計画に携わったシェリー・シュベトヘルム看護部長は、ネブラスカ医療センターで最も重要な安全対策のひとつとして、各医療従事者が防護用のガウンや手袋、顔用マスクを着脱する際に、その管理監督を行なう専門のスタッフを配置したことが挙げられると語る。

具体的には、防護服を着る際に管理監督を行なうスタッフ「donner」と、防護服を脱ぐ際に管理監督を行なうスタッフ「doffer」だ。着脱時には必ず彼らが、段階を踏んだ声がけを行なう。さらに、医療従事者が隔離施設を出入りする際には、「防護服を適切に着脱するプロセスを、段階を踏んで細かく説明したポスター」を必ず目にする設計になっている。

また、患者がいる隔離施設から出されるゴミや寝具の汚染除去を専門に行なうスタッフも配置されている。汚染除去には、高圧蒸気を噴出して殺菌消毒を行なう「オートクレーブ」という機械が導入されている。すべての病院にこの機械が配備されているわけではない、とシュベトヘルム看護部長は指摘する。

ネブラスカ医療センターがエボラ出血熱患者の受け入れを2人から3人に限っているのは、以上のようにさまざまな特別体制が必要だからだという。

シュベトヘルム看護部長は現在、他の病院に対して、有効性が実証された同医療センターのやりかたを導入するよう勧めている。「医療関係者個人が身を守るためのポスター」をウェブで公開し、ダウンロードできるようにしている。また、電話やメールによる問い合わせ、ならびに視察を世界中から受け付けている。

CDCのフリーデン長官は、検討事案として、エボラ出血熱患者の受け入れ治療施設を大都市や地域毎にひとつに指定することを挙げたが、看護師の立場を主張するレーマー看護師は、それでは不十分だと指摘する。来院してから診察・隔離されるまでには、人との接点があまりにも多く、看護師をはじめとする現場で働く人々がエボラウィルスにさらされる可能性が高いからだ。

[Anna Almendrala(English) 日本語版:遠藤康子、合原弘子/ガリレオ]

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