イスラム国、性奴隷を正当化 機関誌で「イスラム教徒への誘惑を防ぐため」と主張

イスラム国の戦闘員たちは、イラクの宗教的少数派ヤジディ教徒の女性や子どもたちを捕まえて奴隷にし、売り飛ばしていることを認めた。

イスラム過激派組織「イスラム国」(旧称ISIS)は10月12日、フルカラーの機関誌『ダビク(Dabiq)』第4号を発行した(第1号は2014年7月に、英語を含む各国語で発行されている

最新号の中で彼らは、イスラム国の戦闘員たちは、イラクの宗教的少数派ヤジディ教徒の女性や子どもたちを捕まえて奴隷にし、売り飛ばしていることを認めた。そしてこれは、イスラム教の男性が、奴隷ではない他の女性から「誘惑される」のを防ぐための正当な行為だ、と主張している。

英語で発行された同誌は、明らかに西欧諸国に住む人々に向けた内容であり、イラク国内でイスラム国が残酷な行為を働いているという、長く噂されてきた行為を裏づけている。それは、ヤジディ教徒の女性が拉致され、わずかな金で売り飛ばされた上に、繰り返し性的暴行を受けている(日本語版記事)というものだ。

最新号の記事によると、「ヤジディ教徒の女性ならびに子どもは、シンジャールでの軍事行動に参加したイスラム国の戦闘員の間で、イスラム法“シャリーア”に準じて分配されている」という(シンジャールはヤジディ教徒が古くから住む一帯で、今年8月にイスラム国が制圧した(日本語版記事))。

記事はさらに、「多くのよく知られた規則は守られており、幼い子どもと母親を引き離す行為は禁じられている」と続く。

同記事は、こうした状況下で奴隷制に異を唱える者はイスラム教徒ではない、と主張している。「カフィール(異教徒に対する蔑称)の家族を奴隷とする行為、ならびにその女性を第2夫人とする行為は、イスラム法の確固たる解釈として認められている。それを否認また愚弄することは、コーランの一節を否認もしくは愚弄することであり、よって、イスラム教に背くことに他ならない」

奴隷制の廃止は、乱交や不倫の増加を招いた、と記事は主張する。「(奴隷ではない)自由な身分の女性との結婚が、経済的な理由によって不可能な男性は、知らぬ間に悪の道への誘惑に囲まれる。そればかりか、家政婦を雇ったイスラム教徒の家族の多くは、密会(ハルワ)の禁止(女性は、家族以外の男性と2人きりになってはいけない)という教えに反する状況に陥り、誘惑に直面する。しかし、その女性が(正妻以外の)妻であれば、その関係は教えに背かない」というのだ(一般のイスラム界は、こうした解釈はイスラム法を曲解したものだとして認めていない)。

米人権NGO団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」は、ヤジディ教徒の避難民たちに聞き取り調査を行ない、その結果を報告書にまとめて10月12日に公開した。それによると、イラクのヤジディ教徒である何百人もの男性、女性、子どもたちが、イスラム国が間に合わせで作った収容所に監禁されている。

また、イスラム国は若い女性や未成年の少女たちを家族から引き離し、(無理やり改宗させられたうえで)戦闘員と結婚させているという。

お祭りを眺めるヤジド派の少女たち。イラクのドホーク近郊にて。宗教的少数派はイスラム国の攻撃対象となっている。

報告書では、イスラム国戦闘員が少女を買っているところを目撃したというある女性の話や、1000ドルで戦闘員に買われたが、なんとか逃亡したという未成年女性の証言なども紹介されている。

なお、同機関誌では、アメリカ人ジャーナリストのスティーブン・ソトロフ氏が、処刑される前に、自身の母親に対して宛てたとされる手紙も掲載されている。そこには、息子の命を救ってほしいと母親がイスラム国に対して嘆願する動画も、「私の命を救うことはできななかった」と書かれている。

冒頭の画像は同誌の表紙で、バチカン市国のサンピエトロ広場中央に立つオベリスク(高さ25.5メートルの記念塔)の上に、イスラム国の黒い旗がはためいているというデザインだ。同誌には、イスラム国のモハメド・アドナニ広報官による、敵対する人々に向けた声明も掲載されている。「われわれはお前たちのローマを制圧し、十字架を壊し、お前たちの女を奴隷にする」という内容だ(なお、機関誌名のダビクとは、シリア北部にある都市の名前だが、アルマゲドンに関するハディース(預言者ムハンマドの言行録)に「イスラム教徒とキリスト教徒が最終的に対決する場所」として言及されているとして、イスラム国が採用したもの)。

[Jessica Elgot(English) 日本語版:遠藤康子、合原弘子/ガリレオ]

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