壊される寸前のオフィスビルが丸ごと1棟、斬新で自由な「美術館」に生まれ変わった。東京・麹町で9月15日まで開かれているアートイベント「#BCTION」。舞台となったのは築50年に届こうというビルで、老朽化などの理由から建て替えが決定、10月には引き渡される運命だ。そこで、若い世代を中心としたアーティストたちが、ペインティング、映像、立体、インスタレーションとさまざまな表現を用いて、このビルを変貌させた。
【UPDATE】9月15日までの期間限定開催だったが、好評のため、9月27日(土)13時〜20時、9月28日(日)13時〜20時の2日間、オープンすることとなった。詳細は公式サイトまで。
■都市のデッドスペースをアート空間として再利用
70組を超えるアーティストたちが挑んだのは、1フロア約250平方メートル、9階建という空きビルだ。美術館やギャラリーは「ホワイトキューブ」とも言われ、壁や床は白くニュートラルな空間がスタンダードとされている。しかし、このビルでは、そんなお行儀の良さは通用しない。
天井は配線がむき出しになり、床材は剥がされてところどころ陥没している。そんなだだっ広いフロアを、アーティストたちは「むさぼり尽くした」という表現がしっくりくるほど、自らの表現で埋め尽くした。その表現は時に荒々しく、時に驚くほど繊細で、それぞれの個性がぶつかり合い、一つの空間を完成させている。そのパワーは、見る者を圧倒する。
主宰者のサイトには、こんなテキストが掲げられていた。
2011年の大震災と2020年の国際的スポーツの祭典、東京が生まれかわろうとする狭間で私達は生きています。これからの数年間、オリンピックや耐震対策などの理由で多くの建物が壊されていくのではないでしょうか。
私達は都市のデッドスペースである取り壊し予定のビルをアート空間として再利用することによって、アーティストが社会に積極的に関与できるチャンスを広げ、表現の場を増やし、さらにはアートマーケットを拡大できると考えます。
また、世界中の都市、特に経済成長著しい東南アジアの諸都市でも同様のプロジェクトが生まれ、新たなムーブメントとして定着すればと願い、BCTIONを開催します。
スピードを加速させながら変貌する東京。毎日通り過ぎる風景で見慣れたビルが、いつ建て変わったのかもわからない日常に私たちも追われている。しかし、この「美術館」は、私たちの歩みを止め、消えゆく寸前の風景に一瞬の輝きとこれからの未来を感じさせてくれた。
タイトルの「BCTION」とは、「一つのアクション『A』が次のアクション『B』を促すようなクリエイティブが連鎖して膨らんでいく様子のこと」を表す言葉なのだという。次なる連鎖を期待したい。
「#BCTION」は9月15日まで。入場無料だが、予約が必要だ。詳しくは公式サイトまで。
【※】アンコール情報を加筆しました。(2014/9/16/12:20)
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