ダライ・ラマ14世が自身の後継者を選ぶ「転生活仏制度を廃止すべきだ」との発言に、中国政府が「絶対に認めない」と反発している。
チベット仏教では、ダライ・ラマなど高僧は自身の死後、生まれ変わりとされる子供を後継者に選ぶ「転生活仏制度」を用いている。
この制度についてダライ・ラマ14世はドイツのヴェルト紙のインタビューで「今や“ダライ・ラマ”制度は、政治的に使われるようになった」と述べ、自分が死んだ後は転生活仏制度を廃止するべきだとの見解を示した。ダライラマは「チベット仏教は、一個人に依存するものではない。私たちの組織にはすでに、高度に訓練された僧侶や学者がたくさんいる」として、自身が最後のダライ・ラマになるとする考えを明かした。
これに対して、中国政府は「秩序を損なう」と猛反発。認めないとする考えを示した。MSN産経ニュースなどが報じた。
中国外務省の華春瑩報道官は10日の記者会見で、「発言はチベット仏教の正常な秩序を大きく損なうもので、中央政府と信者は絶対に認めない」と反発し、転生制度の維持を求めた。(中略)
亡命中のダライ・ラマの発言は、この中国政府の策略を熟知したもので、転生制度の廃止という重大決断を今回初めて明示したが、今後、中国当局とチベット亡命政府の新たな確執を招くことは避けられない。
(MSN産経ニュース『ダライ・ラマ14世の転生「廃止」発言 後継選定を主導したい中国政府「秩序損なう」と猛反発』より 2014/09/10 21:12)
中国憲法は「宗教信仰の自由」を明記してはいるが、宗教が外国勢力と結びつくことや共産党体制と対立することを警戒した中国政府は、抑圧的な宗教政策をとってきた。
チベット仏教についても転生制度を容認はするが、過去にはダライ・ラマに次ぐ高僧「パンチェン・ラマ」の生まれ変わりとされる子供を政府が誘拐し、別の少年を擁立している。
さらに2007年に中国政府は「チベット仏教活仏転生管理弁法」をつくり、「ダライの称号自体、中央が賜るものである。歴史的にダライ・ラマはみな中央政府が最終的に確認している」として、チベット仏教を監視下に置こうとした。ダライ・ラマ14世の死後には、中央で選んだダライ・ラマ15世の擁立を行うと見られている。
ダライ・ラマ14世は2011年にも「後継者は自分が生きている間に指名するか、いっそ選挙で選ぶことになるかもしれない」と述べていた。今回のヴェルト紙のインタビューでは自分の人気が高いことを指摘して、「人気のあるうちにやめるべきだ。弱いダライ・ラマになったら制度を傷つけることになる」と語った。
コロンビア大学のチベットの専門家ロバート·バーネット氏は「中国政府がダライ·ラマの発言を無視し、独自に選んだダライ・ラマを擁立しても、チベットの人々は受け入れないだろう」と指摘した。
ダライ・ラマ報道官、テンジン・タクラ氏は「今回の発言は、個人としての発言であり、どうするかはチベットの人々によって決められることになる」としているが、アメリカのチベットハウス(ダライ・ラマ法王代表部事務所文化部)のエグゼクティブディレクター、ガンデン・サーマン氏はハフポストUS版の取材に答え、「後継者の必要性を否定することで、ダライ・ラマ法王はチベットをより民主的な方向へと促した」と述べた。
サーマン氏は、ダライ・ラマの存在以上にチベットが繁栄するためには、より民主化されたシステムが必要だとの考えを示していた。
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【訂正】2014/09/11 17:20
当初の記事で、「輪廻転生」と表記していた部分を「転生活仏」と変更しました。
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