小笠原諸島と都心を結ぶはずだった超高速旅客船「テクノスーパーライナー」が、一度も定期航路に就かないまま解体工事が開始されることになった。広島県の江田島で解体場に向かう直前の様子が、8月25日にTwitterに投稿されている。
小笠原諸島は、都心から約1000km南方にある絶海の孤島。豊かな自然が残り、2011年には世界遺産に登録された。島内には空港がなく、船が唯一の旅客輸送ルートになっている。竹芝埠頭〜父島間は旅客船「おがさわら丸」で約25時間もかかる。
そこで白羽の矢が立ったのが、「海の新幹線」という触れ込みで、国家プロジェクトとして開発されたテクノスーパーライナーだった。建造費は115億円。当時のアルミ合金製の船舶としては、世界最大級の超高速船。742人を乗せて、38ノット(時速70キロ)の高速航行が可能で、この船を使えば、都心から父島まで約16時間に短縮できるはずだった。2004年11月には「スーパーライナーおがさわら」と命名された。
だが、原油価格の高騰が計画を狂わせた。2005年に国と東京都は、年30億円に上る赤字が見込まれることから、負担の折り合いがつかず就航を断念した。一度も使われないまま、岡山県の三井造船玉野事業所に係留された後に、船舶解体会社のある江田島に運ばれて解体のときを待っていた。2011年の東日本大震災直後、宮城県石巻市に寄港して被災者に無料開放したのが、最初で最後の晴れ舞台だった。
8月26日、解体会社の工事担当者は、ハフィントンポストの電話取材に対し「解体の準備はしているが、まだ解体は始まっていない。見物客が押し寄せても困るので、解体の時期は答えられない」と話している。
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