夏休みもいよいよ後半。学校で友だちに会えない子どもたちは、いつもよりも「LINE」を使っていたりしませんか? そんな子どもたちを見ると、親としては心配になってしまうかもしれません。かといって、禁止することも難しい……。
大丈夫です。今日は心強い先生をお呼びしました。一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事、小寺信良さん。「気をつけよう!SNS」(汐文社)などの著書がある、インターネット歴20年のベテランです。
インターネットをよりよく使うためにはどうしたらよいのか、ユーザーという立場から活動をしている小寺さんは最近、茨城県取手市の中学校でLINEについての授業をしました。テーマは、「夏休みに入る前に知っておきたいLINEを使う5つのコツ」。その授業を皆さんにもご紹介します。親子でLINEと上手に付き合うためにどうしたらよいのか。ぜひ、親子で読んでみてください。
■「LINEはスマートフォンでないとうまく使えない」
「インターネットで便利になったことは、何だと思いますか? 最新の情報を受信・発信したり、どこからでも買い物ができたりするようになりました。皆さんもアマゾンなどのオンラインストアで買い物をしたことがあるかもしれません。それから、直接会わなくてもコミュニケーションができるということがあります」
「インターネットを利用したコミュニケーションって何? って聞くと、Twitterと答える人が多いです。それから、FacebookやLINE、掲示板。メールもありますね。ただ、メールの利用率は今年5月に総務省が公開した資料によると、高校生では減少に転じています。そしてメールの代わりにLINEを使うという傾向がでてきています。ではまず、LINEの特徴を説明しましょう」
「LINEは感覚的にメールに近いものですね。今日はLINEを使う上で、知っておきたいことを5つご紹介しましょう。知っておきたいことその1は、『LINEはスマートフォンでないとうまく使えない』ということです」
「デジタルアーツ社の調査によると、中学生の半分ぐらいはまだスマートフォンを持っていません。つまり、半分ぐらいの同級生たちとはLINEでは連絡できないのです。これは大人の世界でも同じで、大体半分の人たちしか使っていません」
「今、LINEを使っている皆さんは、同級生の半分以上がLINEを使っていないことを知っておいてください。それから、LINEを使っていない皆さんは、LINEを使っていなくてもそれは恥ずかしいことではありません。LINEでなくても、メールや通話、そして直接コミュニケーションできることを忘れないでください」
■「LINEはあなたの電話帳を見ている」
「LINEを使っているとき、『知りあいかも?』といって友だちをすすめてきたことはありませんか? 『電話番号で友だちが追加されました』とでてきたこともあるかもしれません。知っておきたいことその2は、『LINEはあなたの電話帳を見ている』ということです」
「ここで、電話番号やメールアドレスが記録されている電話帳は、誰のものかを考えてみましょう。電話帳の中身は、君たちのもので、君たち自身が管理するものです。それをなぜLINEが知っているのでしょうか?」
「LINEの標準設定では、電話帳のデータをLINEに教えることで、お互い電話番号を知っている人たち同士を友だちとして設定するという仕組みになっています。これは、LINEを初めて起動したときに表示される注意書きにも書いてあって、LINEを使っている皆さんはそれを読まずに『同意』してしまっていることがほとんどです。しかしここで考えてほしいのは、自分の電話帳をどこかの企業に預けるということは、よいところと悪いところがあるということなんです」
「よいところは、わざわざ友だちに申請しなくても、自動的に友だち同士になることができるから楽ですね。一方で悪いところは、電話番号を知っている相手から見ると、LINE使っている子が『友だちかも』というところにでてくるので、LINEを使っていることが自動的にバレてしまいます。つまりLINEでつながりたくない友だちとつながってしまう可能性があるんです。それから、友だちじゃない人と友だちになってもよいのでしょうか。習い事や塾の先生、親戚のおじさんもLINEで友だちにならないといけないのでしょうか?」
「LINEはあくまでも企業のひとつです。そういう企業が、皆さんの友だち関係を把握していることは、いいことなのかどうか考えてみてください」
「僕たちのおすすめ設定は、アドレス帳の設定で、『友だちの自動追加』(アドレスのアップロードを許可すること)と『友だちへの追加を許可』(電話番号を知っている人たちを自動的に友だちにすること)という設定を、両方ともオフにすることです。この2つの設定は初期設定ではオンになっているので気をつけてください。この機能を使わなくても、LINEで友だちになる方法はあります。それが、『ふるふる』機能と『QRコード』機能です」
「これは、近くにいる子たち同士で、友だちになる機能です。目の前に相手がいて、その人と友だち関係になろうというわけですから、この2つの方法は比較的安全です。必ず守ってほしいことは、知らない人や知りあったばかりの人、インターネットで知りあった人、連絡を取りたくない人には連絡先を絶対に教えないでください」
■「つながり依存になってませんか?」
「次は、このマンガを見てみましょう」
「知っておきたいことその3は、『つながり依存になっていませんか?』ということです。LINEのメッセージが既読になったからといって、すぐに返事がくるわけではありませんし、必ずすぐに返事をする必要もありません。返事がすぐに来なくても、イライラしないでください。本当に急ぐ用事は、電話で伝えましょう。インターネットを使ったコミュニケーションのよいところは、時間と場所が離れていても、会話が成り立つところです。実際に会おうとすれば、時間や場所を合わせないといけない。電話は時間を合わせないといけない。インターネットのコミュニケーションで、時間をしばるようなことをしてしまったら、それはインターネットの意味がありません」
「それから、つながり依存やコミュニケーションが過多になっている子たちの傾向として、勉強時間ではなく睡眠時間を削っているという統計があります。中学生、高校生の時期には十分な睡眠が重要ですし、メッセージを受け取る相手も眠れていないということを考えてください」
「では、どうやったらLINEでのメッセージを終わらせられるのでしょうか? 皆さんの話を聞いていると『眠いから寝る』と正直に伝えることができる人が多いようですね。ただ、『眠い』という理由だと『がんばって起きようよ』といわれてしまうかもしれません。そういうときは『お風呂に入ってくる』や『筋トレやらなきゃ』のように、次の用事があるということをいえば、『筋トレならしょうがない』と穏便に終わらせることができます。『おやすみ』のスタンプを使うのも効果的でしょう」
「一対一のチャットではなく、グループチャットの場合は、自分だけが途中でに抜けてしまうと、抜けたあとに何が話されるのが気になってしまうので、つい最後までがんばってしまいます。そこで、おじさんたちがまだインターネットが普及していなかったパソコン通信時代から20年以上、ずーっととチャットをしてきた経験から編み出した技を今日は伝授しましょう。それは『全員カウントダウン』です。全員で一緒に終われば大丈夫。みんなでカウントダウンをして、チャットを終わりにしましょう。」
■インターネットに流したデータはずっとインターネットに残る
「ここでひとつ、本当にあった怖い話をしましょう。広島県のある高校の男子生徒たちが、女子更衣室に仕掛けたスマートフォンで女子生徒の着替えを盗撮。その映像をLINEのグループに送信しました。映像はグループ内で共有され、そのうちにそれが保護者にバレて、警察沙汰になりました。男子生徒たちは自宅謹慎などの処分をうけました。男子生徒たちは盗撮した映像をLINEのグループ以外には漏らしていないといっていますが、もし誰かがその映像をインターネットにアップロードしていたら、その映像はインターネットにずっと残り続けることになるでしょう。皆さんの会話の履歴もスクリーンショット機能を使えば、それを画像として保存して、インターネットにアップロードすることもできます」
「一度インターネットにアップロードされたデータをあとで完全に消すことは本当に難しいんです。LINEでコミュニケーションをするときは、その写真や映像、書き込みを赤の他人に読まれても大丈夫か? どうしてもLINEに流さないとダメ? と考えてからにしましょう。もしも他の人が写っている写真や映像だったら、写っている人に許可をもらってからにしましょう。これはLINEだけの話ではなく、インターネットを使う上でとても重要なことです。これが知っておきたいことその4です」
「プロフィール設定にも注意が必要です。初期設定のままだと、誰でもプロフィールを読めますし、プロフィール写真も見られます。でも、自分の顔を大勢の人に見せてメリットがあるのは、政治家やタレントなどでしょう。一般の人が不特定多数の人たちに顔を知られることは、メリットよりもデメリットが多いことがほとんどです。くれぐれもプロフィールに、学校名や学年、本名、メールアドレスや電話番号などは書かないでください。プロフィール写真も自分の写真ではなく、景色や動物の写真などを使ったほうがいいですね。タイムラインの設定も初期設定のままにせず、読むことができる人を限定しましょう」
■「あなたが送ったメッセージには必ずそれを受け取る人がいる」
「そして最後に知っておきたいことその5は、『あなたが送ったメッセージには必ずそれを受け取る人がいる』です。『お前ウザい』とか、『あいつ超ムカつくからみんなで無視しようぜ』とか、そんなメッセージを受け取ったり、また送ったりすることは楽しいでしょうか? 自分がそう思ったことは本当なんだから、感じたままに書いてもいいと思うかもしれません。しかし実際に顔を合わせて話をするとき、会話の相手が傷つくようなことはいませんよね? これはインターネットを使ったコミュニケーションも同じことです。本人を前に直接いないようなことは、LINEでも書かないでください」
「それから、微妙な話はなるべく直接伝えるようにしましょう。LINEでは表情や口調が伝わらないので、非常に誤解が生まれやすいんです。悪口や文句、グチといったネガティブなことではなく、楽しいことやうれしいことをおすそわけするために使うことからスタートしましょう。そうすればもめません。『アイスの当たりがでた!』とかから始めてみたらどうでしょうか? そんなことに気をつけながら、LINEを使ってください!」
■LINEを使っているお子さんを持つお父さん、お母さんへ
「親の視点から、子どものスマートフォンの使い方が目に余るからといって、その利用を禁止するのは、確かにその瞬間の解決策としては効果があります。しかしその場合、いつまで禁止するのかという問題もあります。子どもも、いつかはスマートフォン、そしてインターネットを使う必要がでてきます。現在、高校生のスマートフォンの所持率は84.5%という調査があります。中学生の間はスマートフォンから遠ざけておいて、高校生になって急にポンと渡したとしても、子どもは高校生になったからといって急に成長するわけではありません。大ケガをする前に、小さなケガで学んで成長できるように、少しずつスマートフォンやインターネットの使い方を覚えさせたほうがよいと思います」
「それから、子どもがLINEを使っている場合は、大人も使ってみてください。これまでも大人は、ゲームやマンガなどいろいろなメディアに対して、自分が理解できないものを子どもに使わせることに恐怖を持ってきました。それは大人がそのような新しいメディアに興味を持てないからというものもあったかもしれません。しかしLINEはコミュニケーションツールなので、お子さんと一緒に始められます。ぜひ親子でLINEにトライしてみてください」
MIAU代表理事、小寺信良さん
【注釈】この記事のピクトグラムは下記を利用しました。
Browser by Nicholas Menghini
http://thenounproject.com/term/browser/10811/
Mobile-Shopping by Benny Forsberg
http://thenounproject.com/term/mobile-shopping/14939/
Communication by Eric Bird
http://thenounproject.com/term/communication/29033/
Email by iconoci
http://thenounproject.com/term/email/12462/
Advertisement by Laurène Smith
http://thenounproject.com/term/advertisement/51135/
上記のピクトグラムはクリエイティブ・コモンズ 表示 3.0 非移植 ライセンスの下に提供されています。 https://creativecommons.org/licenses/by/3.0/deed.ja
【訂正】文中の小見出しが「LINEはスマートフォンを持っていないと使えない」となっていましたが、パソコンではアカウントの新規登録ができず、ガラパゴス携帯でのアカウント登録はできますが、プッシュができないなどLINEとしての使い方に制限があるため、小寺さんの発言に即して「LINEはスマートフォンでないとうまく使えない」に修正しました。(2014/08/17 10:12)
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