政府は福島第一原子力発電所の建屋から汚染水が海に流れだすのを防ぐ「氷の壁」の建設工事を断念し、別の方法を探り始めたことが8月13日、わかった。19日に開かれる原子力規制委員会の検討会で、建設を継続するかどうか判断する。
タービン建屋の配管やケーブルなどが通るトレンチ内には、事故直後に流出した高濃度汚染水、約1万1000トンが溜まったままとなっている。この汚染水が海に流れだすのを防ぐため、東京電力は2、3号機タービン建屋とトレンチの接続部分に氷の壁をつくり、汚染水を抜き取る工事を進めていた。
しかし、4月28日から凍結を開始したものの、3カ月経っても思うように凍らなかった。7月30日からは氷やドライアイスを投入。水温を下げる作業が行われていたが凍結が見られなかった。
政府は今後の検討会での議論を経た上で、氷の壁の代わりにコンクリートを使うなどの代替方法の検討も視野に入れているという。MSN産経ニュースが報じた。
氷の壁が凍結しないことは、規制委の検討会でも有識者から指摘されており、「コンクリートを流し込んでトレンチを充(じゅう)填(てん)すべきだ」との意見があった。政府関係者によると、19日に予定されている検討会では、氷投入の効果を評価した上で、効果がないと判断されれば代替工法の作業に着手するという。
規制委は、トレンチにたまっている汚染水が海洋に流れ出す恐れがあることから「最大のリスク」と位置付けており、早期解決を目指している。
(MSN産経ニュース『福島第1、凍らない「氷の壁」断念か 別工法も 19日に規制委が検討』より 2014/08/14 08:09)
止水の「切り札」にも同様の方法が使われている
埋め込んだ凍結管の中に冷媒を流すことで水分を凍らせる技術は、トレンチ建屋の中だけでなく、1〜4号機の周囲約1.5kmを取り囲み、原子炉建屋への地下水の流入を防ぐ凍土遮水壁(凍土壁)の工事でも使われることになっている。そのため氷の壁での失敗が、凍土壁にも影響しないか懸念がある。
凍土壁の建設工事は、2014年6月から工事が始まっている。しかし、東電はトレンチ内の凍結方法は「水そのもの」を凍らせるものであり、凍土壁は「地中の水分」を凍らせるとして「異なる技術」と位置づけている。
凍土壁は汚染水問題解決の「切り札」として、約320億円の国費が投じられ、2015年3月の完成を目指し整備が進められている。これまでにも海底トンネルや地下鉄の工事で採用されていることもあり、東電は「十分に実績とノウハウが有る」と自信を見せている。
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