三菱重工業は、防衛省から委託を受けて研究を進めている国産ステルス戦闘機の試作機「先進技術実証機“ATD−X”(通称:心神=しんしん)」の初飛行を、2015年1月に行う方針を固めた。性能やコストを確認した上で、防衛省は実用化するかどうかを2018年度までに判断する。8月12日、毎日新聞が報じた。
政府は00年度以降、ステルス技術の研究に着手。09年度からは、総事業費392億円をかけて試作機の開発を進めていた。試作機のステルス関連技術はすべて三菱重工業など国内企業が開発。敵のレーダーから届いた電波を真っすぐに反射して探知されないよう、機体や外板接合面の形状を設計した。(中略)
三菱重工がエンジンやシステムの作動テスト、基本的な飛行試験などを行った上で、来年3月末までに防衛省に機体を引き渡す。同省は15年度から2年間かけて実戦を想定した試験飛行を重ね、ステルス性や飛行性能を詳しく検証する方針。
(毎日新聞「国産ステルス:1月初飛行、4年で実用化判断…三菱重方針」より 2014/08/12 07:30)
敵のレーダー電波を吸収したり別の方向にはね返したりして探知されにくいように設計されたステルス戦闘機は、世界がこぞって開発を進めており、中国のJ20(殲20)やロシアのT50などが数年以内に配備されると見られている。
日本の航空自衛隊(空自)が保有する戦闘機は、2013年3月末現在で第3世代のF4が62機、第4世代のF15が201機、そしてアメリカと共同開発した第4世代のF2が92機と、ステルス戦闘機は存在しない。このうち老朽化したF4が、アメリカ主導で国際共同開発中の最新鋭ステルス戦闘機・F35、42機に置き換わる予定となっており、2030年代ごろから退役するF2も、後継機の選択肢に国産ステルス機を加えたいという考えだ。
■日本が国産のステルス戦闘機を開発する理由
外国産の戦闘機を利用しなければならなくなると、ライセンス元の海外企業等による技術情報が非公開となり、日本国内での機器の修理が難しくなる。日本もかつて、アメリカのステルス機F22を導入する計画だったが、技術流出を懸念するアメリカ議会などの反対で断念した経緯がある。また、何か事故が発生したときに、きちんと海外から報告が上がってくるのかという安全面からの指摘もあった。
さらに、海外製品を利用することにより国内企業が防衛事業から撤退し、これまで培われてきた技術・技能が失われるという懸念も出ている。戦闘機の開発・生産に携わる企業への調査では、戦闘機の生産が5年間ない場合、技術者を戦闘機関連部門から異動させるなどと回答した企業は約75%に上ったという。
防衛省はATD−Xの試験飛行で得たデータを元に、「次世代ハイパワー・スリム・エンジン」「誰かが撃てる、撃てば当るクラウド・シューティング」「従来のレーダーでは探知不可能な敵ステルス機を早期発見するカウンター・ステルス」などの機能を実現する次世代型戦闘機「i3 FIGHTER」の開発も視野にいれている。しかし、開発段階で5〜8000億円規模の経費が必要と見込まれることもあり、、日本単独で開発するには課題も多い。
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