焦点:多額投資で赤字の米アマゾン、投資家は苛立ち
[サンフランシスコ 25日 ロイター] - 米オンライン小売り大手アマゾン・ドット・コム
アマゾンはことし上期、スマートフォンからハリウッド型の番組制作、生鮮食品配送に至るまで、ありとあらゆる分野に忙しく投資した。投資家としては、同社がもう少し野心を抑制して持続可能な利益を達成するか、あるいは投資がオンライン小売事業の収益率拡大に結び付く証拠を早く示してほしいと待ち構えている。
マニュライフ・アセット・マネジメントのファンドマネジャー、マイケル・スキャンロン氏は「四半期ごとに投資を繰り返し、売上高を利益に回さないことに苛立っている。何といっても利益が欲しい」と語る。
一方で、今投資の手を緩めれば「オンライン小売のウォルマートになる」という目標が挫折しかねないとの見方もある。取扱高がアマゾンと米イーベイ
<セールスポイント>
創業者のジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は長期的視点で見守ってほしいと訴える。昨年、株主に宛てた書簡では投資をめぐる批判に対し「直前になって(投資を)行うのは思い上がりだ」と反論した。
小売業界でシェアを拡大していることは、投資家にとって大きなセールスポイントだ。ニーダム・アンド・カンパニーのアナリスト、ケリー・ライス氏は「長期的視野を持たなければならない。売上高が着実に伸び続けている点を買うべきだ」と言う。
しかし、そのシェア拡大には代償も伴っている。24日発表の第2・四半期決算は技術・コンテンツ投資が40%拡大したのを主因に営業経費が24%増え、2012年以来で最大の赤字を出した。
さらに悪いことに、同社は第3・四半期に最大8億1000万ドルの営業損失を予想している。
投資家が懸念するのは、入ってきた収入をすべて使ってしまう経営姿勢だけではなく、何に使っているのかの情報開示が少ないことだ。
デスティネーション・ウェルス・マネジメントのマイケル・ヨシカミCEOは「アマゾンほどの売上高を持つ企業で、こんなに赤字を出すところはほとんどない。信頼感を維持するためにもっと情報を出す必要がある」と語る。
アマゾンはタブレット型端末「キンドル」の販売台数や、有料サービス「アマゾン・プライム」の正確な登録者数といった基本的な数字さえ、競争上支障があるとして開示していない。
スキャンロン氏は、情報開示を広げれば「投資収益率を測る際などに役立つ。支出の期間がどの程度に及ぶかなども把握しやすくなる」と話した。
<受け入れ難い投資>
一部の投資家にとって受け入れ難い投資分野は2つある。グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」に大きく修正を加えた新型デバイスを導入したことと、番組制作事業への進出だ。
アマゾンは25日の週に649ドルの「ファイアフォン」を発表したが、手ごたえは薄かった。テレビ番組も始めたが、オンライン動画配信のネットフリックスのような称賛は浴びていない。それでも第3・四半期にはオリジナルの動画コンテンツに1億ドル以上を投じる計画だ。
アマゾンの株価は割高だとの指摘もある。トムソン・ロイター・スターマインによると、アマゾン株の「イントリンシック(本質的)価格」は36.37ドルと、現在の価格の10分の1程度にとどまり、米企業4000社以上の中で最も割高な銘柄の1つとなっている。
S&PキャピタルIQのアナリスト、トゥナ・アモビ氏は「事業多角化のために投資するのは何も悪くない。しかしスパゲッティーを壁に投げつけて落ちてこない麺を探すようなやり方ではなく、的を絞った方法を採るべきだ。上場企業なのだから、ある程度(株主に)配慮する必要がある」と話した。
(Deepa Seetharaman記者)
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