Presented by ソニー

【ソニー デザインの舞台裏】トレンドではなく、本質の追求から生まれた 4K対応ブラビアの「究極的幾何学形」

「薄型テレビ」という呼称が一般化して久しいが、テレビメーカーはテレビ本体の薄型化だけではなく、パネル周辺のベゼル(縁)をいかに小さくするか(狭額化)でも競い合ってきた。この薄型化、狭額化の行きつく先には、テレビがモノとしての佇まいを無くし、ただコンテンツを映し出す「モニター」となった姿が見える。しかし、そんなトレンドの敢えて逆を行くようなテレビがソニーから登場した。それが、4K対応ブラビアX9200Bシリーズだ。

「薄型テレビ」という呼称が一般化して久しいが、テレビメーカーはテレビ本体の薄型化だけではなく、パネル周辺のベゼル(縁)をいかに小さくするか(狭額化)でも競い合ってきた。この薄型化、狭額化の行きつく先には、テレビがモノとしての佇まいを無くし、ただコンテンツを映し出す「モニター」となった姿が見える。しかし、そんなトレンドの敢えて逆を行くようなテレビがソニーから登場した。それが、4K対応ブラビアX9200Bシリーズだ。

KD-65X9200B

画面部と段差のないベゼルフレーム、そこに大胆に配置されたスピーカー、筐体を4点で支えるミニマルな形状のスタンド――異彩を放つこれらのデザインは、ソニーのデザインヒストリーに裏付けられた唯一無二の「価値」を、このテレビにもたらしていた。チーフアートディレクターの田幸宏崇氏に聞いた。

Sony チーフアートディレクター 田幸宏崇氏

■空間におけるデザインの最適解を求めて

私たちの生活空間には数多くの電機製品が存在しているが、それらのデザインがバラバラでは、誰もが理想とする心地良く洗練された空間からは遠ざかってしまう。こうした課題に対して、ソニーはテレビを始めとする製品群に、統一されたデザインコンセプトを与えることを以前より行っている。ブラビアとその周辺機器においては、1枚の板を目指す「Monolithic Design(2010年)」から、鉱物から研ぎ出したようなデザイン「Sense of Quartz(2013年)」へと進化し、2014年のいま、究極的な幾何学形「Pure Geometry」に至ったという。

「一枚の鉱物のような板、つまり段差のない四角形から、スピーカーという音を出す機能のための丸形が研ぎ出され、今度はそこに安定をもたらす三角形を与えることになったのです」(田幸氏)

無駄をそぎ落とした最もミニマルな「造形」によって、素材や機能、込められた意味をより的確に表現できるはずという思いが、そこにはある。

電機製品に限らず、家具や建築などデザイン全体の歴史、進化を考えてもこれは必然の流れだと田幸氏。私たちの身の回りの建築、居住空間、インテリアの要素の多くが、極めてシンプルで理にかなった幾何学的なシルエットで構成されている。だから、リビングに置かれるテレビも純粋な幾何学形体を追い求めていくことで違和感なく空間と調和するはずだと考えたというわけだ。

これらの要素を、リビングという空間にどのように配置するべきか、そのために求められる製品それぞれのデザインとはどのようなものなのか、それが現在の「Pure Geometry」というコンセプトで追求していることなのだという。

Pure Geometryのコンセプトスケッチ

「空間に溶け込んでいる、けれども機能を表す強いシルエット・造形でもある、そういうコンセプトで製品群がデザインされラインナップされる世界を目指してきました」(田幸氏)

X9200Bを横から見ると、力強い三角形で構成されていることが分かる。

X9200Bの特徴的な三角形のシルエット

「そもそもテレビって横から見たときに、薄く見せなきゃだめなのか?そういう根本的な疑問から生まれた考え方です」と田幸氏。筐体を薄くするために、パネルの後ろにある画質・音質を担うシステムが入った部分を削っていかなければならないことに、大きな矛盾を感じていたという。また、それは高画質・高音質という機能を削ることでもあり、最終的にはあらゆるテレビが壁に埋め込まれ、その存在自体も希薄なものになっていくのではないか、という危惧もそこにはあったはず。

「テレビは空間に溶け込んでしまったほうがいいという意見もあるでしょう。また、ホームシアターシステムのようにスピーカーをテレビとは別に配置するから、テレビにはそこまでの高音質は求めない(だから狭額のほうがよい)というお客様もいるでしょう。でも、例えばクルマなら嗜好や用途に応じていろんな車種がありますよね?だったら、テレビだってリビングにそれ1台置くだけでケーブルや置き場所の心配をせずに最高の画質・音質を楽しめます、と言えるようなモデルが、ラインアップの1つとしてあっても良いのではないかと考えました」

4K対応テレビの解像度はフルハイビジョンテレビの4倍になるため、画面上の粒子感がほぼ無くなる。ソニーの映像解析・処理技術も相まって、従来の2Kコンテンツであっても大画面に美しくアップコンバートされる。一方で、その高画質を実現するための部品は、どうしても従来よりスペースを必要とする。仮にその分のスペースを、本来スピーカーに割くべきスペースから奪ったとしたら……美しくなった映像と貧弱になった音のギャップは大きくなってしまう。折角の4Kの高画質に音質がついてこられず、臨場感が損なわれるという訳だ。

「本来、スピーカーは映像と同じ高さ、つまり真横に置くのがベストなんです」と田幸氏。X9200Bの画面の両側に、上から高音域・中音域・低音域と配置されたスピーカーは、音作りのための基本にあくまで忠実だ。

X9200Bのスピーカー部

これらのスピーカーは下に配置したものほど、より大きくなり、音を増幅させるための容量もより大きなものが求められ、X9200Bもそのためのスペースを可能な限り確保している。そして、画質制御などのための基板も、製品を安定させるためにできる限り下の方に配置してあるという。それにより大型のテレビであるにも関わらず、安定感が生まれてくる。そのため、一見細く見えるスタンドでもしっかりとX9200Bを設置できる。横から見たときに三角形であることはこれらの価値を生むための「必然」のデザインだったのだ。

■トレンドではなく、本質を追求

X9200Bのスタンド部

薄型化・狭額化のお陰で壁掛けも可能になったテレビだが、壁掛けのためのブラケットや、パネル裏からのケーブル配線などを加えると、実は厚みが生じ、壁から飛び出してしまうのが現実だ。画面が大きくなればなるほど、たとえ壁掛けにしてもその存在感は増してしまう。壁に掛けることが必ずしも合理的とは限らない、と田幸氏は話す。

もしスタンドが占有する面積が小さく、壁面に寄せて設置できれば、壁掛けよりも奥行きが有利になることだってあるだろう、という訳だ。面ではなく4点で筐体を支えるX9200Bのスタンドは、椅子や机などの家具と同様、大きな画面をしっかりと支えている。(このスタンドは小さなテレビ台でも利用できるよう、従来のスタンド同様中央に寄せた位置に変更することも可能だ。またオプションのポートリプリケーターを使用すれば、ケーブル類をまとめてよりシンプルに美しく設置することもできる)

付属のポートリプリケーター

「展示会や販売店では、薄くて狭額であることを各社が競っています。我々ももちろん追求している要素です。でも映像を主として考えると、映像がテレビの縁のギリギリのところまで迫っていくということは、すぐ隣に住宅の「壁」が来るわけです。当然、あらゆる壁が映像の鑑賞に適した設計になっているわけではありませんので、狭額であることが必ずしも映像への「没入感」にプラスになるとは限らないのです。絵を壁に飾る時も額縁が重要な役割を果たします。映画館でもスクリーンの周りは黒いエリアで囲まれています。フレームやベゼルにはコンテンツの『体験』にとってもちゃんと意味があるんです」 (田幸氏)

リビングという空間の中でテレビ本体の存在感を消し込みたい、という事と、最高の画質・音質でコンテンツに没入したい、というのは全く別のベクトルの話だと田幸氏は強調する。X9200Bは明確に後者に重きをおいた、理に適ったデザインの結晶なのだ。

■もう「日本のリモコンはかっこ悪い」とは言わせない

日本のテレビのリモコンは、これまで海外製品に対して無骨でかっこ悪いものの象徴のように語られることがあった。しかし、X9200Bの「タッチパッドリモコン」はそんな先入観を一蹴するものだ。

タッチパッドリモコン

「ワンフリックエンターテインメントと私たちは呼んでいますが、ノートPCのタッチパッドのように、フリックで操作できるようになっており、最低限のキーしか備わっていません。それによって生まれる価値は、画面から目を離さず直感的に操作できることです。これは先ほどお話しした没入感を妨げない仕組みでもあるのです」

タッチパッドリモコンは没入感だけでなく、関連するコンテンツを発見したいときにも有効だ。パッドの下から上へ指をフリックすると、画面下から「番組チェック」のインターフェースが現われる。今見ている番組、あるいはこれまでの視聴履歴や検索履歴などから、おすすめのコンテンツが表示されるのだ。フリックによるこれらの操作は、Xperiaなど対応のスマホ・タブレットからも可能となっている。

「番組チェック」画面

こういったコンテンツが画面上に流れ出るような演出は、ソフト面だけでなく、テレビというハードのデザインとも親和性が高い。従来テレビのベゼルフレームを無くし、X9200Bでは従来の画面強度を保ったまま、フィルム素材で包み込むことで、あたかもテレビ全体を包むような角や線のないデザインを成立させることに成功している。三角形というシルエットとも相まって、滝が流れ出るような印象を見るものに与える。そして、タッチパッドやスマホによる操作はそのシルエットと寄り添うような演出で表現されるのだ。

番組チェック機能の紹介動画

※動画に登場するBRAVIAは海外仕様版です

■「ソニーデザイン」の系譜を受け継いだX9200Bシリーズ

デザインにおいては「一言で説明できること」が大切だと語る田幸氏。X9200Bにおいては一度見たら忘れられない「三角形をモチーフにしたテレビ」という強いシルエットが与えられることになった。

ここにその原点となったプロダクトがある。「プロフィールPro」――80年代に登場し、映像制作者に絶大な支持を得たモニターの名機だ。モニターの本質を追求し、ブラウン管の形を覆うかのように大きな立方体のフレームを配置することで、積み上げて使用できるという新たな価値を生み出した本機は、X9200Bシリーズに確かに通じるものがある。

田幸氏がこの製品のことを知ったのはもちろんソニー入社前だが、「どうしてこんな発想が出来るのだろう」と大きな衝撃を受けたことが忘れられないと話す。

プロフィールPro

私たちが抱きがちな短小軽薄といった日本メーカーのモノ作りに対する見方は、実は非常に一面的な見方でしかないことが良くわかるエピソードとも言えるだろう。

「人間の欲求というのは際限がありませんから、これからも大画面化・高精細化が進むでしょう。それにつれテレビが空間においてどうあるべきか、という問題は一層大きくなっています。壁に埋め込まれて存在感が『消えて』しまうのではない、あるいはシアタールームのように特別な空間にある存在とも異なる、『リビング』という日常の建築空間と人との間にある家具のような存在としての『テレビ』、そしてそのためのデザインを追求していきたいと思います。それはおそらくテレビという製品そのものだけでなく、人がそこでどんなデバイスを操り、どんな風に生活するのかを先回りして考え続けることにも繋がります。」(田幸氏)

テレビをデザインすることは、生活空間をデザインすることにも等しいという田幸氏。テレビに限らずその空間に存在する製品群やコンテンツをラインナップできるのもソニーの強みだ。

これらの「価値」はウェブや店頭で製品のスペックを確認するだけで分かる、というものではない。実際にリビングに置いて、その佇まい、そして映像・音を空間の中で体験してはじめて腹落ちするものと言えるかも知れない。それらの感性的な価値を生み出したデザインが、一見トレンドに逆行しているように見えて、実はその理由を考え抜かれた、デザインの系譜にも則ったロジカルな最適解であるというのも、実にソニーらしいアプローチだと言えるのではないだろうか?

(執筆:まつもとあつし 撮影:太田 隆生)

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