「残業代ゼロ制度」との指摘もある、労働時間ではなく成果のみによって報酬が決まる新しい労働時間制度について、政府の担当者は6月4日、年収300万円以下の人を対象にするかどうか「今後議論されていく」と述べた。衆議院厚生労働委員会で山井和則議員の質問に答えた。
この新しい労働時間制度は政府が創設を検討しているもので、現在では原則1日8時間が上限となっている規制を、高度な専門職に付く人などの一部に限って取り払うというもの。政府は、始業・就業時間や残業などの労働時間の観念を無くすことで、ワークライフバランスや労働生産性向上が期待できるとしている。
しかし、山井議員は、新しい労働時間制度について「残業という観念がなくなるということは、残業代がゼロになることと同じ」と指摘。現在議論されている対象者の案についても、「極めて曖昧」で、「プロジェクトリーダーや企画責任者というような肩書をつけることで、だれでも対象になりえる」と追及した。
民間有識者議員の長谷川閑史氏が提出した対象の案
さらに山井議員は、年収によって対象者を制限するかどうかがまだ決まっていないことについて、「年収300万円以下の人も対象になり得るのではないか」と質問。これに対して政府の担当者は、「案では、能力、経験、実績などが高い極めて限られた方が対象になると明示されており、年収300万円の方が対象になるかどうかということは、今後議論されていくことになる」と答えた。
なお、山井議員の後に質問を行った柚木道義議員は、「生産性が上がる制度なら、公務員も制度の対象にすべきだ」と指摘。これに対して担当者は、「今回は公務員に対しての制度として議論を行っていない」として、対象外であると答えた。その際、委員会に同席していた厚労省官僚は、「とんでもない」と手を振って拒否したという。
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