G7(先進7カ国首脳会議)が日本時間6月5日未明、ベルギーの首都ブリュッセルで始まった。もともとはロシアのソチでG8(主要8カ国首脳会議)が開催される予定だったが、ロシアがウクライナ南部のクリミアを編入したことに抗議して、ロシアを除外する形で開催されることになった。
メインとなる議論は、混乱が続くウクライナ情勢に対する対応だが、ロシアに対する姿勢は国によって温度差がある。アメリカがロシアに対して制裁を強めたいとしているのに対し、日本やフランスなどは、ロシアとの関係を悪化させたくないとしている。アメリカの面子を潰さないような落とし所を探る議論が続く見込みだ。
■G7共通認識「ウクライナ暫定政権を認めよ」「ウクライナの混乱も収拾して」
G7諸国は、ロシアがクリミアを編入したことに対して経済制裁を加えるなどの抗議を行ってきた。
その後、クリミアに関してはうやむやになりつつある一方、選挙を受けて誕生したウクライナのポロシェンコ新政権をロシアに認めさせたい考えだ。7日に開催されるポロシェンコ氏の大統領就任式に、ロシアの代表が派遣されるかどうかが焦点となる。
また、激しさを増すウクライナ東部での新ロシア派と暫定政権側との衝突については、親ロシア派武装勢力への影響力があるロシアに対し、混乱収拾へ圧力をかける考えだ。
これらの要求に対するロシアの対応次第では、各国は制裁を一段と強化するとの表明が行われる見通し。
■アメリカ「制裁強めるべし」
G7会合に先駆け、アメリカのオバマ大統領は4日、ウクライナのポロシェンコ次期大統領とポーランドの首都ワルシャワで会談。「国際社会はポロシェンコ氏を支援すべき」と強調し、アメリカも軍事支援を強化すると約束した。
オバマ大統領は継続して、ロシアが挑発的行動を続ければ追加制裁に踏み切る」と厳しい姿勢を示しており、G7でも同調を求める考え。
オバマ大統領とプーチン大統領は、6日にフランスで行われるノルマンディー上陸70周年記念イベントなどで顔をあわせる予定だが、具体的な会談は設定されていない。オバマ氏は、関係が改善するかどうかは「プーチン大統領の決断次第」としているのに対し、プーチン大統領は「オバマ大統領の選択次第だ。私には対話の準備がある」と述べている。
■日本「北方領土問題や中国への牽制もあり、関係を悪化させたくない」
日本では北方領土問題の交渉が続いていることもあり、ロシアとの関係は悪化させたくない考えだ。安倍首相はG7会合で、ロシアへの制裁の方向性については同調しながらも、「ウクライナに対してロシアか西側かの選択を迫るべきではない」と述べ、過度のロシアの孤立化は国際社会の不安定化につながりかねないとの考えを示し、バランスを取った。
緊張が続く日本と中国の関係を尻目に、プーチン大統領は中国の習近平国家主席と20日に会談。21日にはロシアから中国への天然ガス供給で合意している。日本は安全保障の観点からも、ロシアとの良好な関係を保ちたい考えだ。
■EU諸国「エネルギー」「ロシアマネー」などで対応にばらつき
EU諸国は基本的に、ウクライナの状態が悪化するようならば、ロシアに対するさらなる追加措置を検討する構えだ。しかし、ロシアと経済的に依存関係にある点が多く、各国の対応にばらつきがある。
ドイツのメルケル首相は、ウクライナの状況を悪化させるようならば、ロシアに対する対応についてより協議が必要だとしている。
しかし、ドイツは割安なロシア産の天然ガスを輸入しており、その依存度は40%にのぼる。ロシアの報復を考えると、すぐに制裁ということは考えにくい。
フランスはロシアを孤立させたいアメリカの取り組みに背を向けて、ロシアへの武器輸出を続けている。アメリカがフランスの大手金融機関に100億ドル(約1兆200億円)超ともいわれる制裁金を課すなど、アメリカとフランスの溝が深まる一方、ロシアとフランスのフ合弁企業が設立され、ロシアでシェールオイル鉱床を開発するなどが報じられるなど、ロシアとフランスの親密さが増しているようにも映る。
イギリスではチャールズ皇太子が「プーチン大統領はヒトラーとまったく同じことをしている」などと述べるなどして、ロシアとの関係を悪化させているが、イギリスではロシアマネーが社会の上流に浸透していることが、制裁の足かせになっているとの見方もある。
また、フランスと同様、イギリスもロシア企業と共同で、ロシアにおけるシェールオイル探査を行うことに合意しているなど、他のEU諸国に先を越されまいと躍起だ。イギリスのキャメロン首相とプーチン大統領の会談も、急遽前倒しで行うと発表されている。