福島第一原子力発電所で5月28日、作業後に入退域管理施設に戻った作業員の1人が、体調不良のため、ドクターヘリで運ばれる事態が発生した。東京電力の記者会見によると、この作業員が作業していたのはEタンクエリアと呼ばれ、防護服の他、全面マスクの装着も必要な場所だった。
この日、福島第一原発から約10km北西にある気象庁浪江観測所では29.6度まで気温が上昇していた。東電は5月から熱中症対策を始めているが、現場では東電の推奨を守らず、作業を続けてしまう作業員がいるという。作業員が休憩を取りたがらないのは、どうしてだろうか。
■福島第一原発の熱中症対策
2013年、福島第一原発では9人の熱中症患者が発生。疑いのある人も含めた合計は18人にのぼった。
2014年は5月から熱中症対策がスタート。全面マスクに代わり、使い捨て式防じんマスクを利用することが可能なエリアが拡大されたり、気温や湿度、日射や地面からの照り返しによる熱(輻射熱)に基づいて、休憩の頻度や時間を変更したりするなどが、東電から指示されている。
7月からは午後2〜5時の間の作業は中止される。6月からサマータイム制を導入し、なるべく気温が上がらないうちから作業を始めるようにしている協力会社もある。
その他、飲料やクールベストなどは用意されるが、作業用冷風機などは放射能物質をまきあげてしまうため導入することができない。
■「休憩を取りたくない」という作業員
また、いくら東電側が休憩時間を伸ばすよう、協力会社に指示を行ったとしても、作業員の側からみると「休憩を取りたくない」とする事情もあるという。
原発作業員の支援活動を行っている団体「アプリシエイト・フクシマ・ワーカーズ(AFW)」代表の吉川彰浩さんは、積算線量などの関係で休憩を取りたくないという心情が働くと分析する。
「休憩していても、被ばくしますからね。それよりも早く終わらせたい、早く帰りたいという気持ちのほうが、強くなってしまいます」
昼休みなどに休憩を取る免震棟の中では被曝の心配はないが、ここに入るには、いちいち防護服や手袋、靴下を脱いで被曝線量を測定する長い列に並ばなくてはならない。作業の合間の小休憩のたびに免震棟に戻り、装備を脱着することは現実的ではない。そのため、小休憩を取らず、作業を続けてしまう作業員がいるのが現状だと吉川さんは言う。
作業員にきちんと、適度な休憩を取ってもらうにはにはどうすればよいか。吉川さんらは、東電に対して働きかけを行うと同時に、全国から募金を募り、冷感作用のある夏用インナーを原発作業員に送るという活動を行うという。
「この動きがきっかけとなって、少しでも作業環境が改善されればいいと思う」
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