さまざまな食品や日用品に含まれている精子の機能との間の直接的な関連が証明されました」と、研究の共著者である、コペンハーゲン大学病院のニールス・E・スカケベック教授は述べている。
国際的な研究者のチームは、今回の研究のために、新たなバイオアッセイ(生物学的毒性試験)の手法を開発し、これを用いて、内分泌かく乱化学物質がヒトの精子に及ぼす影響を調べた。
その結果、調査対象となった化学物質のおよそ3分の1は、精子に悪い影響を及ぼすことが示された。たとえば、一部の日焼け止めに用いられる紫外線吸収剤4-MBC(4-メチルベンジリデンカンファー)、薬用石鹸や歯磨き粉などに使われる殺菌剤トリクロサン、ネイル用化粧品や接着剤等に含まれる可塑剤フタル酸ジブチルなどだ。
内分泌かく乱化学物質は、精子のカルシウムレベルの増加をもたらすと考えられている。カルシウムレベルが高くなると、精子の遊泳が妨げられたり、精子が卵子と融合するために酵素を放出するタイミングが早められたりてしまう可能性がある。
また、精子細胞は、女性の生殖器官の中で卵子を見つけるためにホルモン信号を利用しているが、これが内分泌かく乱化学物質によってかき消されると、受精が妨げられるなどの問題の原因になりうる。
スカケベック教授は「The Independent」に対して、「個人的には、この調査結果は間違いなく懸念すべきものだと思います。一部の内分泌かく乱物質は、これまで考えられていた以上に危険かもしれないのです」と語っている。「ただし、私たちの調査結果によって、現代社会で増えている不妊現象を説明できるかどうかはまだわからず、今後の臨床研究を待たなければなりません」
研究結果は、2014年5月9日付けで、欧州分子生物学機構(EMBO)のウェブサイト「EMBO Press」で発表された。
文末のスライドショーでは、「日常生活で使われている内分泌かく乱化学物質」について紹介している。
[Jacqueline Howard(English) 日本語版:水書健司/ガリレオ]
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