中国の電子商取引大手、アリババ・グループ・ホールディング
アリババの米上場はハイテク企業の新規株式公開(IPO)として過去最大規模を記録すると見られている。しかしこれは、過去3年間で120件を超える中国ハイテク企業上場の1つでしかない。
インターネットサービス大手の騰訊控股(テンセント・ホールディングス)
ジュリウス・ベアーのデータによると、中国における「百万長者」の数は、既に日本を除くアジアで最も多く、来年には5年前の水準から2倍以上に増えて130万人超となる見込みだ。
プライベートバンクはこれに対応し、中国富裕層への玄関口とされる香港とシンガポールで人員を強化している。資産運用ビジネスでアジア首位のUBS
DBSグループ・ホールディングス
クレディ・スイス
<ハイテク長者>
アリババはIPO時の時価総額が150億ドルを超えるとの見方もあり、共同創業者の馬雲(ジャック・マー)氏は米誌フォーブスの中国長者番付けにおいて2013年の8位から5位以内に踊り出る見通しだ。馬氏が保有する株式8.9%は103億ドル相当になると見られている。
アリババにはほかに、同社株を相当規模で保有するパートナーが27人おり、IPOによって百万長者の仲間入りを果たす見通しだ。
トムソン・ロイターのデータによると、MSCI中国指数を構成するハイテク企業7社の時価総額は、合計で13年初めから約75%増えて1490億ドルとなっている。この中にはテンセントやレノボ・グループ(聯想集団)
テンセントの時価総額は昨年1000億ドルを超え、04年の上場から2倍以上に膨らんだ。創設者の馬化騰・最高経営責任者(CEO)は昨年のフォーブス誌長者番付けで中国第5位となり、保有資産は差し引き102億ドル。百度のロビン・リーCEOは第3位だった。
通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)もプライベートバンクにとって豊富な顧客層を提供してくれそうな企業。同社の株主は15万人に及ぶ社員だ。
<新鮮さ>
若く、高い教育を受け、身軽に世界を飛び回るハイテク長者らは、プライベートバンカーにとって新鮮な風を吹き込む存在でもある。
ハイテク長者らが期待するリターンは従来の投資家に比べて控え目で、世界的な分散投資や資産配分を重視する傾向がある。
不動産や鉱業といった分野で資金を稼いできた従来の投資家と比べ、ハイテク長者は「新しい着想や人々、人材、エンジェル投資家への関心が強い」とロンドン・アンド・キャピタル・アジアのフィリップ・ルグランCEOは言う。
しかし中国のハイテク長者は、派手なシリコンバレーの面々に比べてずっと保守的でもある。資産保全型の金融資産や中国語経済圏への投資を好む。
シンガポール不動産への投資がその一例で、購入者に占める中国勢の割合は09年の15%から33%弱に増えた。
新たに登場した中国の長者は互いの結びつきが強いという面もあり、バンカーは信頼できる筋を通じて顧客を開拓できることが多い。
プライベートバンクにとって目下の課題は、中国の新たな大富豪が株式の形で富を抱えたままで、現金保有が増えるわけではないという点にある。このため株式を担保に資金を調達し、他の資産に投資するといった選択肢を彼らに勧めている。
DBSバンクの消費者向けバンキング・資産運用グループヘッド、タン・スー・シャン氏はインタビューで「彼らは一夜にしてキャッシュリッチになるわけではない。ストックリッチ(保有株式の価値が上がる)になるのだ」と指摘。「彼らの大半は株式を保有したままなので、流動性の提供方法を示してくれる銀行と協力する必要がある」と話した。
(Saeed Azhar、Nishant Kumar記者)
[シンガポール/香港 9日 ロイター]
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