STAP細胞の論文をめぐる不正疑惑で4月21日、小保方晴子さんは弁護士を通じて、不服申立の追加資料を理研に提出した。その中で小保方さんは、「真正な画像が存在する以上、捏造する意味がない」などとして、改めて研究不正ではなく、悪意のないミスによるものと訴えている。
また、調査委員会の報告で捏造と認定された画像について、弁護団は実験ノートやハードディスクに保存されているデータなどを基に小保方氏に聞き取りをしたうえで「真正な画像であることを確認した」としている。
報道向けに公開された資料は要約版で、実験の詳細や差し替えの分の画像などは省略されている。
平成26年4月20日
「不服申立についての理由補充書」要約版
第1 再調査のための審査について
再調査のための審査にあたっては、下記の点について考慮いただきたい。
1 資料入手からわずかな時間
申立人が資料を入手してからわずかな時間しか経っていない。すなわち、理研から、申立人の提出した資料の開示を受けたのは、4月8日夜(資料のごく一部)と4月15日であることなど、資料の入手から、わずかな時間しか経過していない。代理人らがその内容を十分に検討するために、今後、相当の時間が必要である。
2 申立人の体調
申立人は、体調が悪く治療のため入院中であり、長時間の打ち合わせができない状況にある。充実したヒアリングのためには、相当の時間が必要である。
3 小括
以上の事情から、再調査の審査に当たり、申立人からの不服申立理由補充期間としてさらに2週間の猶予を求める。
第2 (1−2)レーン3の挿入について
不服申立書と重複する点もあるが、整理も兼ねて再度主張する。
1 「改ざん」の定義
本規程2条2項2号において、「改ざん」とは、「研究資料、試料、機器、過程に操作を加え、データや研究結果の変更や省略により、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること」と定義づけられている。
2 「改ざん」の意味
この定義からすれば、研究資料に操作が加えられ、データの変更が行われても、それが、結果の偽装(真正でないものへの加工)に向けられたものではない場合は、「改ざん」にはあたらない。
3 申立人の行為は結果の偽装に向けられたものではない
申立人のレーン3の挿入は、ゲル1、ゲル2写真が存在する以上、結果の偽装に向けられたものでないことは明らかである(客観面)。また、申立人の認識ないし意図しても結果を偽装するために行ったものではない(主観面)。それゆえ、申立人の行為が「改ざん」にあたらないことは明らかである。
4 データの誤った解釈へ誘導する危険性を認識しながらなされた行為ではない
本報告書では、レーン3の挿入は、研究者を錯覚させるだけでなく、データの誤った解釈へ誘導する危険性を生じさせる行為であり、かつ、そのような危険性について認識しながら行った行為であると評価せざるをえないという判断のもとに、改ざんにあたるとするようである。
しかし、仮に、申立人が、そのような危険性について認識していたのであれば、真正なゲル1、ゲル2写真が存在しており、それらの写真を掲載すればよいという状況の下で、そのような危険性を生じさせる行為をする必要は全くない
あえてそのような行為をすることは、経験則条考えられない。
したがって、そのような危険性を認識しながらなされた行為ではない。
5 レーン3の挿入にあたってズレが生じるか
本報告書では、申立人の「標準DNAサイズマーカーの位置情報に基づいてレーン3の挿入位置を決定したとの説明」について、調査委員会の検証の結果、説明を裏付けることができなかったと認定している。
しかし、不服申立書添付の資料2のとおり、申立人の説明は合理的に裏付けられている。それゆえ、申立人のレーン3挿入行為が「科学的な考察と手順を踏まない」ものであるとの事実認定は誤りであり、誤った事実認定を前提とした本報告書の判断は誤りである。
6 小括
申立人は、再調査において上記の点を確認いただいたうえ、レーン3の挿入は「改ざん」にあたらず、研究不正がなかったとの結論を求める。
第3 (1−5)画像取り違えについて
1 「捏造」が問題となる事案ではない
(1)「捏造」の意味
本規程では、「捏造」とは、「データや研究結果を作り上げ、これを記録または報告すること」と規定されており、その意味は、不服申立書12頁に記載のように存在しないデータや研究結果を作り上げ、これを記録または報告することという意味である。
(2)本件における画像取り違えは「捏造」にあたらない
本件では、掲載すべきであった画像B(脾臓の造血系細胞から作製したSTAP細胞を用いた画像)と異なる画像A2(骨髄の造血系細胞から作製したSTAP細胞を用いた画像)が、論文1に掲載された。
掲載すべき画像Bは、現に存在している(資料6)。掲載すべき画像Bが存在している以上、存在しないデータや研究結果を作り上げた行為は存在しない。
(3)悪意のない間違い
掲載すべき画像Bが存在する以上,「掲載した画像が、掲載すべき画像Bと異なる画像A2であること」を知りながら、あえて掲載することは経験則上ありえない。申立人の画像取り違えは、悪意のない間違いである。
2 調査すべき対象は画像B
(1)申立人による申告
この画像取り違えの問題は、申立人自らが発見して、2014年2月20日、自ら調査委員会に申告した(資料7 3頁)。
(2)調査委員会の調査結果
そうすると、調査委員会としては、掲載すべきであったとされる画像Bが、脾臓由来の細胞を酸処理することにより得られたSTAP細胞が用いられたテラトーマの免疫染色データであることを確認すべきであった。
この点が確認されたならば、真の画像が存在する以上、存在しないものを作り上げたのではなく(捏造にあたらない)、申立人のミスによるものであることは明らかになるのである。
ところが、本報告書においては、画像Bが提出されたことについて何らの記載はなく、また、その提出された画像Bが脾臓由来の酸処理することにより得られたSTAP細胞が用いられたテラトーマの免疫染色データであるか否かについての調査の結果について、何らの記載もないのである。
すなわち、調査委員会は、申立人が「掲載すべきであった真の画像」として提出した画像Bについて、十分な調査を行っていない。言い換えると、申立人が行ったテラトーマ実験の経緯について調査を行っていないのである。
3 テラトーマ実験の概要
申立人代理人らは、実験ノート、ハードディスクに保存されているデータ等をもとに、申立人からテラトーマ実験の経緯を聞き取った。その概要は下記のとおりである。<以下 略>
4 画像Bのひも付け
(1)検討
以上のテラトーマ実験の経緯からすれば、次の事実が認められる。
<以下 略>
(2)結論
以上のことから、画像Bのテラトーマは、脾臓由来の細胞を酸処理することにより得られたSTAP細胞が用いられたテラトーマであることは疑いがない。
5 画像Bが存在する以上、捏造ではなく、悪意によらない間違い
画像Bは、脾臓由来の細胞を酸処理することにより得られたSTAP細胞が用いられたテラトーマの画像である以上、画像A2を、脾臓由来の細胞を酸処理することにより得られたSTAP細胞が用いられたテラトーマであると偽る必要はなく、存在しないものを作出する行為は客観的に存在せず、捏造にあたらない。
また、掲載すべき画像Bが存在する以上、「掲載した画像が、掲載すべき画像Bと異なる画像A2であること」を知りながら、申立人があえて掲載することはありえず、申立人の画像取り違えは、悪意のない間違いである。
6 テラトーマの画像の取り違えの経緯
(1)本報告書の誤り
本報告書では、申立人が画像取り違えの経緯について、「この条件の違いを十分に認識しておらず、単純に間違えて使用してしまった」(本報告書7頁8行目)、「実験条件の違いを認識せずに切り貼り操作を経て論文1の図を作成した」(本報告書7頁下から9行目)と説明したとされているが、申立人は、そのような説明をしたことはない。
申立人は、両者の実験条件の違いは十分に認識していたのであるが、論文を仕上げていく経緯の中で、論文の趣旨の変更を行った過程で、画像を取り違えが生じたと説明したのである(資料7)。
(2)申立人の陳述内容
今般、画像取り違えの経緯について、より具体的な事情を陳述書(資料12)により説明している。
要約すると、テラトーマの画像の取り違えについては、論文を仕上げていく過程で、論文の論旨を変更する中で、画像の確認を怠ったために、画像の差し替えを忘れ、その結果、画像の取り違えが生じたのである。
7 小括
申立人は、再調査において上記の点を確認いただいたうえ、画像の取り違えが「捏造」にあたらず、研究不正がなかったとの結論を求める。
付属書類
資料5 2014年2月26日付け追加質問に対する回答
資料6 2012年6月9日に撮影されたテラトーマの画像(画像B)
資料7 「調査委員会のご質問に対する回答(STAP論文関連)」と題する文書
資料8 「追加質問に対する回答」と題する文書
資料9 テラトーマ画像のスライド
資料10 「Generation of pluripotent adult stem cell from somatic cell」
資料11 「callus teratoma」と題する写真
資料12 陳述書
以上
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