北海道の公務員の男性(41)が競馬で約78億円の払戻金を受け、馬券の購入費計約73億円分を差し引いた約5億7千万円を競馬の所得として申告したところ、札幌国税局から4億円以上の申告漏れを指摘されたことが分かった。外れ馬券が経費として認められなかったためだ。
これにより、男性が納めるべき税金の総額が競馬の利益を上回ることになり、男性はこれを不服として東京地裁に提訴したという。朝日新聞デジタルが報じた。
日本中央競馬会(JRA)は2002年、大量の馬券をパソコンや携帯電話で手軽に購入できるシステムを導入。男性はこれを利用し、役所が休みの土日はテレビの競馬中継を欠かさず見て、JRAに登録された8千頭の馬の能力や騎手の技術を独自に分析、ネットで年間2千回以上馬券を購入した。課税対象となった05~10年の6年間で、計約72億7千万円の馬券を買って計約78億4千万円の払い戻しを受け、差し引き約5億7千万円の利益を得た。
(朝日新聞デジタル「ハズレ馬券は経費か? 競馬利益に巨額課税、各地で訴訟」より 2014/04/07 10:46)
男性は、競馬で得た利益を「雑所得」として、外れ馬券も経費に算入していたが、国税局は国税庁通達に従い、「一時所得」と認定した。
国税局は国税庁通達に従い「一時所得」と認定。「収入を得るために直接かかった金額」としては外れ馬券を除いた当たり馬券の購入費だけを経費にできると指摘した。
男性は馬券の購入履歴を保存していなかったため、課税対象となる所得額は、男性の馬券購入用口座の入金(払戻金)と出金(購入費)の記録から、約9億8千万円と推計したという。
(MSN産経ニュース「外れ馬券、経費と認めず課税所得9・8億円に 利益上回る追徴課税」より 2014/04/07 12:12)
その結果、男性が納めるべき税金は所得税約3億7千万円のほかに、加算税や延滞税、市民税を加算すると5億7千万円を若干超え、競馬の利益を上回ったという。
「一時所得」とは、懸賞金や福引きの賞金品、生命保険の一時金、法人から贈与された金品など、労務や役務の対価としての性質を有していない所得のことを言う。この場合、経費として認められるのは、当たり馬券を購入するためにかかった費用のみで、外れ馬券を購入した費用は、経費として認められない。
例えば、1枚100円の馬券を10通り分購入、そのうち1つが当選し、2000円の払戻金を受けたとする。計10枚の馬券を購入するのに1000円の費用がかかっているため、利益は1000円だが、「一時所得」の場合、経費として認められるのは、当選した馬券1枚を購入するためにかかった100円のみのため、それを差し引いた1900円分が課税対象となる。実際には、そこからさらに特別控除額(最高50万円)を引いた額が一時所得の金額として計算される。
■過去には外れ馬券を経費と認める判決も
過去にも外れ馬券をめぐり裁判が行われている。2013年5月、大阪地裁で行われた元会社員の男性被告の裁判では、競馬で得た30億円余りの払戻金を申告せずに約5億7千万円を脱税したとして所得税法違反に問われていたが、購入費全額を経費と認める判決が下された。その後、検察が控訴しており、控訴審判決は5月9日を予定している。
男性は2007~09年、約28億7千万円を投じて得た30億円余りの払戻金を申告せず約5億7千万円を脱税したとして起訴された。
しかし、昨年5月の一審・大阪地裁判決は、購入費全額を経費と認めて課税対象所得は1億4千万円だけだと認定。脱税額は約5千万円と算出し、懲役1年の求刑に対し、懲役2カ月執行猶予2年とした。
(朝日新聞デジタル『「外れ馬券は経費か」控訴審判決5月9日 脱税事件』より 2014/03/12 15:53)
この男性の一審判決のポイントは、男性の特殊な購入方法にあった。レースの順位を予測する市販のソフトを改良。日本中央競馬会のサイトから全国のレースで何百通りもの馬券を大量購入していた。そのため、払戻金は得られるが、自動的に大量の外れ馬券が発生していた。一審判決では、「娯楽の範囲を超えており、資産運用とみることができる」として、購入費を経費と認めた。
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