「不安症状の治療にスマホゲームが有効」

社交不安障害(対人場面で過剰な不安や緊張が誘発され、対人場面を避けるようになる障害)の新たな治療手法として、注意バイアス修正治療訓練(Attention-bias modification training:ABMT)と呼ばれる方法がある。
TommL via Getty Images

社交不安障害(対人場面で過剰な不安や緊張が誘発され、対人場面を避けるようになる障害)の新たな治療手法として、注意バイアス修正治療訓練(Attention-bias modification training:ABMT)と呼ばれる方法がある。

これは認知療法の一種で、社交不安を生じさせるような注意バイアス(不安・脅威となる要素ばかりに注意が向いてしまうような注意のゆがみ)の修正を目指すものだ。たとえば、脅迫感を生じさせる刺激(怒った顔など)は無視し、脅迫感を生じさせないもの(幸せそうな表情など)に焦点を当てる訓練によって、注意バイアスを修正しようとする。

このたび、この治療法をスマートフォン・ゲーム化して、不安レベルが高い人に使ってもらうと、不安を和らげる働きをする可能性があることを示す研究結果が発表された。

この研究結果は3月6日付けで「Clinical Psychological Science」誌で公開されたもので、不安レベルを測るテストで得点の高かった約75名の人々が実験に参加した。被験者たちは、「iPod touch」で25分間または45分間のゲーム(「短期」訓練条件と、「長期」訓練条件)を行ったのち、ビデオに撮られながら話をするという、彼らにとってはストレスのかかる作業を行うよう求められた。

被験者の一部は、注意バイアス修正訓練になるように作られたゲームをプレイし、残りの被験者はそのゲームのプラセボ版をプレイした。どちらのゲームでも、被験者は、画面上に現れた2つのキャラクターが芝生を刈りながら進む跡を、すばやく正確にたどるよう求められた。このとき、キャラクターのうちひとつは怒った表情で、もうひとつは無表情か、少しだけ楽しそうな表情をしていた。

ただし、注意バイアス訓練を目的としたゲームでは、無表情か、少しだけ楽しそうな表情のキャラクターが進んだ後にしか芝生に跡が残らないが、プラセボ版では、どちらのキャラクターでも芝生に跡が残された。

研究者らによれば、注意バイアス訓練を意図したゲームをランダムに割り当てられた被験者は、ビデオに撮られながら話をするというその後のタスクで、感じる不安のレベルが小さくなっていた。

「このアプリを、約25分間という『短いあいだ服用する』だけでも、研究室で測定された不安とストレスに対して大きな効果が見られた」と、この研究を行ったニューヨーク市立大学ハンター校のトレイシー・デニス博士はリリースの中で述べている。「こうした技術をモバイルアプリの形に替えられる可能性があることは朗報だ。なぜなら、アプリであれば、短い時間に、どこでも利用されるからだ」

リリースによれば、研究チームは、鬱病や中毒などに関しても、同様のゲームアプリを開発できる可能性があると考えているという。

[(English) 日本語版:佐藤卓、合原弘子/ガリレオ]

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