【ソチオリンピック】ロシア国籍選んだ元韓国代表エース 金メダルで母国にリベンジ

ソチオリンピックで、韓国のかつての金メダリストがロシア国籍を取得して「敵」となり、1500mで銅メダルを獲得したことが、韓国社会に衝撃を与えている。
Russia's Victor An reacts as he his team wins a semifinal of the men's 5000m short track speed skating relay at the Iceberg Skating Palace during the Winter Olympics in Sochi, Russia, Thursday, Feb. 13, 2014. (Brian Cassella/Chicago Tribune/MCT via Getty Images)
Russia's Victor An reacts as he his team wins a semifinal of the men's 5000m short track speed skating relay at the Iceberg Skating Palace during the Winter Olympics in Sochi, Russia, Thursday, Feb. 13, 2014. (Brian Cassella/Chicago Tribune/MCT via Getty Images)
Chicago Tribune via Getty Images

ソチオリンピックで韓国が、「お家芸」とも言われたスケートのショートトラックで、メダル獲得が銀メダル1個、銅メダル1個(15日時点)にとどまっている。その競技でかつての韓国代表エースがロシア国籍を取得して「敵」となり、1500mで銅メダル、1000mで金メダルを獲得したことが、韓国社会に衝撃を与えている。

朴槿恵大統領は2月13日、教育部と文化体育観光部からの業務報告を受ける席で「アン・ヒョンス選手の問題が、派閥主義、足の引っ張り合い、審判の不正など、スポーツ界の底辺に根ざす不条理と構造的な乱脈によるものではないか、振り返る必要がある」と述べ、以下のように言及した。

「ロシアに帰化したアン・ヒョンス選手は、ショートトラックの選手として最高の実力を持っていながら、我が国では夢をかなえられず、他国で選手活動をしている。その理由は何か。

(中略)

選手の発掘において差別する指導者は有能な人材を死蔵させ、韓国のスポーツの競争力を低下させる。選手が実力によって評価されるシステムをつくり、審判の公正さを担保できるよう対策を取るべきだ。スポーツ界の不正については必ず根絶できるよう対策をとってほしい」

(朝鮮日報「朴大統領「アン・ヒョンスのロシア帰化、スポーツ界の不条理のせいなのか振り返るべきだ」より 2014/02/13 13:57)

大統領が言及した「アン・ヒョンス選手の問題」とは何か。

ショートトラックは韓国がメダル獲得のため国を挙げて強化してきた競技だ。2006年トリノオリンピックでは金メダル6個を含む計10個、2010年バンクーバーオリンピックでは金メダル2個を含む計8個のメダルを獲得している。

中でもアン・ヒョンスは韓国ショートトラック界のホープだった。2003年から2007年まで世界選手権を5連覇。2006年トリノオリンピックでは団体種目も含め3個の金メダルと、1個の銅メダルに輝いている

こうした輝かしい実績の裏で、韓国のスケート界の激しい派閥争いに悩まされていたと、韓国の通信社「news1」は伝えている。「韓国体育大出身のアン・ヒョンスは、〝非・韓国体育大〟閥が主流だった当時のショートトラック韓国代表チームの中でいじめられ、男子代表コーチからの指導を受けられなかったために女子代表のコーチのもとで練習した」という。

そうした中で、2006年にアメリカ・ミネアポリスで開かれたショートトラック世界選手権で、韓国代表選手がアンを故意に妨害したとの疑惑が報じられる。

告発したのは実の父だった。帰国した選手を出迎える仁川空港で「選手とコーチが妨害した。ヒョンスがアメリカから泣きながら電話してきた。外国選手よりも韓国の選手の方が激しくヒョンスを牽制した。スポーツマンシップはどこにある。これ以上我慢できない」と訴えたのだ。

2009年、アンは練習中にひざを骨折したが、韓国スケート連盟が過去の実績を考慮することはなく、アンは2010年バンクーバーオリンピックの代表に選ばれなかった。同年、所属していた城南市役所のスケートチームが解散したが、アンを受け入れるチームはなかった。アンは2011年、ロシア国籍を選び「ビクトル・アン」となった。

news1によると、ロシアは年俸12万ドルとロシア語の家庭教師に加え、引退後の代表コーチまで打診しているという。アンは2013年5月に出演したテレビで、ロシア国籍を選んだ理由について「練習する場がなくなった。練習の場と環境が惜しかったからだ」と話している。

主力選手の負傷に加えコーチのセクハラ疑惑などのスキャンダルにもあえぐ韓国ショートトラック代表。「ソチ五輪で金メダル4個」という韓国の目標達成が危ういと、韓国メディアは盛んに報じている。1選手の国籍を巡って大統領が発破をかけた背景には、2018年平昌オリンピックに向けて、スポーツ界の病理を根絶しなければ、「稼ぎ頭」の再建はおぼつかないとの焦りがあるのかもしれない。

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