【著作権法改正】「絶版本」がデジタル化され、近くの図書館で読めるようになった理由とは

絶版などで入手困難になった図書や雑誌など「131万点」のデジタル資料が1月下旬から、全国の公共図書館で閲覧できるようになった。資料はもともと、国立国会図書館がデジタル化した資料だが、これまでは国立国会図書館とその関連施設でしか利用できなかった。
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デジタル化された「絶版本」が図書館で読める!どんな「法改正」で実現したの?

絶版などで入手困難になった図書や雑誌など「131万点」のデジタル資料が1月下旬から、全国の公共図書館で閲覧できるようになった。資料はもともと、国立国会図書館がデジタル化した資料だが、これまでは国立国会図書館とその関連施設でしか利用できなかった。

しかし今回のサービス開始により、図書約50万点、雑誌約67万点、博士論文12万点などが、全国各地の公共図書館で閲覧できるようになった。利用できるのは、国立国会図書館の承認を受けた図書館だ。2月7日時点で全国の51館で利用可能で、今後も順次拡大していく予定だという。

ところで、この新サービスは2012年の著作権法改正によって実現したという。具体的にどんな点が改正されたことで、実現できたサービスなのだろうか。また今後、どんな活用法が期待できるのだろうか。著作権法にくわしい雪丸真吾弁護士に聞いた。

●国立国会図書館は「特別な存在」

「国立国会図書館は、『納本制度』によって、国内で発行されたほとんど全ての出版物が納められる特別な図書館です。

そうして集められた多数の貴重な原本ですが、滅失や損傷を防ぐためには、『デジタル化』が不可欠です。

ところが、それは著作権法上、『複製行為』にあたるため、許諾なしで行うと著作権(複製権)の侵害となってしまいます。

そこで、2009年に国立国会図書館法と著作権法が改正され、同館限定の『特例』として、著作権者の許諾なく原本をデジタル化することが認められるようになったのです」

その後、資料のデジタル化はどんどん進んだわけだが……。

「2012年の改正は、その延長として、デジタル化された資料を広く国民が利用できるようにすることが重要である、との判断から行われました。

具体的には、著作権法31条3項が新設され、国立国会図書館による『自動公衆送信』が可能となったのです。

『自動公衆送信』というのは、難しい言葉ですが、ここでは『インターネットを介してパソコンで閲覧できるようにする』くらいの意味だとご理解ください」

●資料を閲覧できるのは「図書館設置」の端末のみ

それはつまり、資料をインターネットで公開し、誰でも見られるようにする、という意味だろうか?

「そういうわけではありません。この自動公衆送信は、無許諾・無償で行われますので、著作権者の利益を害することがないように、慎重な配慮がなされています」

どんな配慮だろうか?

「第一に、自動公衆送信してよい資料の対象は、『絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料』に限られます。市場に流通している書籍は対象になりません。そういう書籍については、自分で市場で購入して入手してくださいということです。

第二に、閲覧できるのは、図書館が設置している端末に限られます。自宅のパソコンで見ようと思っても、それはできないということになります。

第三に、図書館で閲覧した資料の複製についても、『調査研究の用に供するため』『著作物の(全部ではなく)一部分の複製』『1人につき1部』等々、厳しく制限されています」

結局、法改正で送信ができるようになったのは国立国会図書館だけで、今後新たなサービスが続々登場する、というわけではないようだ。

しかし、貴重な絶版資料が近くの図書館で読めるようになるかもしれないと思うと、そこはかとなくロマンを感じてしまう。雪丸弁護士も次のように、今後に向けた希望を口にしていた。

「歴史や社会学の分野での研究等については、資料入手の労が大幅に軽減され、大きな進歩が期待できるのではないかと思います。私も以前から、真田幸村の薩摩落ち伝説に興味を持っているので、このサービスを使って、根拠とされる『甲子夜話続編』等の資料にあたってみたいと思います」

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【取材協力弁護士】

著作権法学会員。日本ユニ著作権センター著作権相談員。慶応義塾大学芸術著作権演習I講師

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