ソニーが業績見通しを大幅下方修正。同社がフツーの会社だと考えれば妥当な内容
ソニーは2014年2月6日、2014年3月期の連結業績予想を大幅に下方修正した。当初300億円の黒字と見込んでいたが、パソコン事業とテレビ事業の低迷などから1100億円の赤字に下方修正する。
同社の2013年3月期の業績は、売上高が約6兆8000億円、営業利益は約2300億円、当期利益は約430億円であった。2013年10月までは、2014年3月期の業績について、売上高7700億円、営業利益1700億円、当期利益は300億円という増収減益の結果を見込んでいた。
だがそのシナリオを崩してしまったのは、パソコン事業とテレビ事業、さらにデバイス事業の業績悪化である。これら3分野が低迷したことから営業利益が900億円の減額となった。5000人の人員削減を行うリストラ費用が当初の見込みから200億円増えて700億円になったことも大きく影響している。
これに加えて、デバイス分野での設備の減損が約320億円、パソコン製造設備の減損が80億円、ゲームタイトルの評価損が60億円となり、合計で500億円近くの損失が確定した。これによって、最終的には1400億円のマイナスとなり、当期利益は1100億円の赤字に転落することになった。
同社はパソコン事業を投資ファンドの日本産業パートナーズに売却する方針を明らかにしている。これによってVAIOブランドで親しまれてきたパソコンは同社から手離れすることになる。またテレビ事業については、完全子会社化することで、意思決定の迅速化を図る。
パソコンやテレビの業績悪化については、おそらく同社内部ではかなり以前から予想されていた可能性が高い。状況を見ながら損失を小出しにしている印象は拭えない。
業績が低迷している部門のリストラを進めればとりあえず一定のコスト削減は実現できる。2015年3月期にはある程度の利益体質に戻せる可能性が高い。ただし、それはリストラで体質をスリムにしただけであり、同社が再び高い成長軌道に乗る道筋を描けたことを意味するわけではない。
ソニーはかつて多くの神話を生み出してきた企業である。同社は高い技術力とデザイン力、さらに豊富なコンテンツを併せ持つ数少ない企業であり、アップルのiTuneやiPhoneといった商品は本来はソニーが生み出すものと世界市場は認識していた。
だが同社はAV機器メーカーというハードウェア中心主義から抜け出すことができず、ポテンシャルを生かせないまま、アップルの後陣を拝する形となった。しかもハーアドウェア事業では、韓国勢や中国勢の追い上げを受け、現在のような業績低迷が続いている。
以前のソニーが持つポテンシャルを基準にすれば、今回の業績見通しの下方修正は大きな失望ということになる。だがソニーにはもはや神話を生み出す能力はなく、普通の電機メーカーになってしまったと考えれば、コスト削減を中心とした今回のリストラ案と業績見通しは妥当なものと考えてよいだろう。
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