「永遠の若さ」は、いくらで買えるのだろうか? 正確に答えるとすれば、4万ポンド(約677万円)だ。
このような大金が簡単に用意できる人たちは、数十年後に必要になったときの場合に備え、自らの健康な細胞を冷凍保存しておくことが可能になった。
このサービスは現在、フランスのバイオテクノロジー企業Cellectis社の子会社であるSceil社によって、英国で段階的に提供されている。
同社はこのサービスについて、山中伸弥氏の研究成果を基礎にしたものだと説明している。山中氏は、成熟細胞を人工多能性幹細胞(iPS細胞)へ変える再プログラムが可能であることを発見し、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。
iPS細胞は、通常の細胞とは異なり、あらゆる種類の細胞に分化する能力を持つ。しかもこれらは、あらゆる年齢の成人の細胞から作り出すことが可能だ。
とはいえ、細胞の冷凍保存はなるべく若いうちに行っておくよう、同社の専門家は勧めている。細胞内のDNAが劣化するスピードは速いため(人間の体は、1秒当たり約180万回のペースで行われるDNA変異によってできている)、最も健康な状態の細胞を確実に保存できるようにするためだ。
採取されたiPS細胞は、摂氏マイナス180度で保存される。そして、再生医療による治療が可能になり、保存していた細胞が必要になった時に、解凍して使用される。
「Sceil社は、急成長している再生医療の恩恵を受ける機会を人々に提供する。再生医療が可能になり次第すぐに、冷凍保存されていた利用者の細胞を、利用者自身の治療のために利用するチャンスだ」
同サービスでは、皮膚組織を採取する際に局部麻酔が施されるため、痛みはなく、手軽に受けることができる。採取された皮膚細胞は、Sceil社のバイオテクノロジー・チームによって「再起動」され、iPS細胞へと変えられ、実際に使われるまで保存されるわけだ。
Sceil社のアンドレ・チョウリカ代表取締役(CEO)は、同社が民間企業として世界で初めてiPS技術の一般の人々への提供を実現したことを光栄に思うと述べている。しかし、イギリス以外の地域で、このサービスが提供できるようになる時期はまだ明らかではない。
「このサービスは、『欲しいものは何でも手に入るが、老化に逆らうことだけはできない』という一部の富裕層の人たちの間で人気となるだろう」と、チョウリカCEOは『The Telegraph』紙の記事で述べている。「20年前には、携帯電話を持てるのは一部の富裕層のみだった。いまは誰もが持っている」
イギリスのシェフィールド大学研究チームが2013年6月に発表した研究論文でも、若返りについての秘密が明かされている。皮膚の中には「眠っている」状態の幹細胞が存在し、それらを目覚めさせることで若返りが可能になるというのだ。
プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)社と共同で実施されたこの研究は、科学専門誌『Scientific Reports』で発表された。同研究チームによると、この研究成果は、肌のシワの治療法の向上や、皮膚癌の治療技術の進歩をもたらす可能性があるという。
[Shelley Emling(English) 日本語版:丸山佳伸/ガリレオ]
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