中国の政府職員が国内の監視と資本規制を逃れるため資産を海外に移転し、家族を国外に移住させる動きが広がる中、当局はこの阻止に徐々に動き始めている。
習近平国家主席が推進する汚職撲滅策の一環として、政府はこのほど、家族が海外へ移住した政府職員を昇進の対象外とすることを決めた。国営新華社が報じた。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると当局はまた、昇進したばかりの政府職員に対し、資産と海外の居住権を公開するよう要請した。先月下旬には、広州市内の村長2000人程度が、海外への逃亡を阻止する目的で、パスポートの提出を求められた。
中国の政府職員の多くは、香港の投資優遇制度である資本投資者入境計画(CIES)を利用し、それぞれ100万ドル以上の資産を隠し持っている。この制度は中国本土の居住者は利用できないため、アフリカ諸国での居住権の取得が伴う。
ガンビアやギニアビサウといったアフリカ諸国に本人および家族の永住権を獲得した本土の中国人は過去最高水準に上っている。
香港政府は10年余り前、CIESを制定し、1000万香港ドル(129万米ドル)の資産を海外に保有し、今後香港に投資する人に対する優遇措置として、優先して香港居住権を与えてきた。
香港の中心街では、代理業者が本土の富裕層をこの制度に勧誘している。手数料は20万香港ドル(2万5800米ドル)前後だ。本土の中国人はこの制度を、政府が課す厳格な規制なしに居住地の近くで投資する手段と見なしている。
一国二制度に基づく高度な自治が保証されている香港に居住権を取得すれば、低い税率と高水準な社会福祉給付金を、資産に対する政府の監視が少ない環境で享受できる。
CIESは台湾やマカオを含む海外の居住者を対象としているが、アフガニスタン、キューバ、北朝鮮と中国本土は除外されている。
中国版長者番付で知られる胡潤研究院の最新調査によると、中国の富裕層の3分の2近くがすでに海外に移住、あるいは移住を計画している。ただ、このうち中国国籍を変えたいと希望する人は15%にとどまっている。大半は海外での永住権取得のみを希望している。
<海外へ資産移転>
海外に資産を移転する中国本土の政府職員やその家族の数は、学者によって予測が異なるが、一部では過去5年間で100万人以上とされている。
香港城市大学の法律学教授、GuobinZhu氏は、「相当の数の職員が家族と資産を海外に移しているが、引き続き政府で働いている」と指摘。「香港の投資制度は職員が海外に資産を移す手段となっている」とした。
「政府はこの現象をもはや許容できないだろう。危機感を感じているはずだ」と述べた。外務省の洪磊報道官は、この問題について詳細は承知していないと述べた上で、「われわれは最近汚職に対抗する一連の措置を公表した。こういった措置の効果が表われると私は確信している」と強調した。
公式データによると、CIESの申請は2013年第3・四半期に過去最高の3380件と、前年同期比で2倍以上に膨れた。香港出入国管理局のデータを基にロイターが算定したところによると、この制度に参加する海外永住権保有の中国本土の投資家は1万7000人以上と、全体の87%を占めている。
代理業者によると、手数料の一部はガンビアやギニアビサウなどの居住権を取得するのに使われる。この2国の居住権を保有する参加者は1万3300人となっている。多くは居住権がある国を一度も訪れることがないだろう。
<香港への早道>
香港のコンサルタント会社、永利国際投資移民顧問はウェブサイトで、CIESの申請者は資産の出どころを明らかにする必要がなく、中国の居住登録を維持できるとしている。つまり、中国本土での事業や身分は影響されない。
移住支援会社のワールドウェイ・グループによると、一家族がギニアビサウに居住権を得るのに必要なのは、中国のパスポートのコピーと出生および結婚証明書、前科がないことの証明と写真のみで、15営業日あれば取得できるという。
中国では1年当たり5万ドル相当を超える外貨両替が資本規制で禁じられているが、代理業者によると、抜け道は複数ある。香港に資金を移すことも、業者を雇って香港に複数の銀行口座を開設するか、お金を体に縛りつけるなどして香港に入ることで可能という。
香港の保安局は中国人の多くがCIES制度を利用するためガンビアとギニアビサウに永住権を取得していることは承知しているとした上で、同制度を見直していると明らかにした。
[香港 27日 ロイター]