あらゆる仕事のおよそ半分は、20年以内に、コンピューターによって自動化される可能性がある。そして、これからやって来る津波のようなこの社会的変化に対して「備えができている政府はどこにもない」と、「エコノミスト」誌が巻頭コラムで論じている。
エコノミスト誌は、オックスフォード大学マーチンスクールが2013年に行った研究(PDF)を引用して、今後20年間ですべての仕事の47%が自動化される可能性があると推測している。
同誌は、早いうちに人間の地位を奪うものの例として、自律走行車、機能が進化した家庭製品、速度も効率も向上したオンライン通信、そして、「ビッグデータ」分析などの新しい技術を挙げている。
また、新興企業が数十億ドルの資金を調達する一方で、わずかな人数しか雇用していない点も指摘している。例えば、写真共有サイト「Instagram」は2012年に10億ドルでFacebookに買収されたが、その時点で雇っていた社員の数はわずか30名だった。
同誌によれば、イノベーション(またの名を「進歩の万能薬」)は常に雇用の喪失をもたらしてきたが、これまでは最終的には、経済発展が失業者のための新しい役割を作り出し、埋め合わせをするのが常だったという。例えば、19世紀の産業革命や、20世紀の食糧生産革命だ。
だが、今回の変化の速さは前例のないものに見えると、この記事は述べている。その結果、次の「失われた世代」がどこで仕事を見つければいいのかについて、不確実性が非常に大きくなっているという。その状況は、先進国でも発展途上国でも同じだ。
「技術競争が進む中で、未熟練労働者たちは、コンピューター化の影響を受けにくい仕事、すなわち創造的な仕事や、社会的知性が必要とされる仕事に従事しなおすことになるというのが、この研究の意味するところだ」
エコノミスト誌はさらに、現在でも失職水準は驚くほど高いが、「技術が労働市場にもたらす混乱の波はまだ始まったばかりだ」と指摘している。
一方、1月20日に発売された書籍『The Second Machine Age』の中で、エリック・ブラインジョルフソン氏とアンドリュー・マカフィー氏は、熟練労働と単純労働の両方が自動化されることによって、労働者はかつてないほどのプレッシャーにさらされていると述べている。
ブラインジョルフソン氏は、1月17日に「Salon.com」に掲載されたインタビュー記事の中で、次のように語っている。「技術はこれまで、常に既存の仕事を壊しながら、常に新しい仕事を作り出してきた。大ざっぱに言えば、これが過去200年間の大きな波だ。だが、1990年代から、人口に占める労働者の割合は急落し始めている」
BBCも、1月13日に掲載した記事の中で、「ロボットがわれわれの仕事を奪いにやって来ている」と厳しい調子で論じている。
「人工知能は、われわれの日常生活の構造に組み込まれている」と、シンギュラリティ大学のニール・ヤコブスティーン学長はBBCの取材に対して語った。「人工知能は、医薬、法律、設計、そして自動車業界のあらゆる場所で使われているのだ」
記事によれば、こうした変化はあらゆる種類の仕事に影響を与えることになる。例えば、EMS(電子機器受託生産)では世界最大とされる台湾の鴻海(フォックスコン)は、3年以内に50万人の労働者をロボットに置き換える計画を発表しているが、影響が及ぶのはこうした単純労働者だけではない。弁護士や外科医、公務員等にも影響が及ぶだろう。
近未来の技術革新が労働市場や富の不平等に与える影響に関して、識者の意見は割れている。エコノミスト誌の巻頭コラムの主張は、解決方法は明白ではないものの、教育や課税の方法、そして社会的対応において、政府が責任を持って革新を進める必要があるというものだ。
なお、Aruba Networksは1月17日、従来の労働モデルがどれほど速く変化しているかを示す別の調査を発表している。
この調査によれば、英国人の72%が「自宅で仕事をした方が効率的だ」と回答し、そのうちの63%は「仕事をするのにWi-Fiネットワークが必要だ」と述べている。わずか10年前に標準化された技術としては悪くない割合だ。
[Michael Rundle(English) 日本語版:佐藤卓/ガリレオ]
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