韓国の尹炳世(ユンビョンセ)外相がアメリカを訪れ、1月7日にケリー国務長官と会談した。1月中には谷内正太郎・元外務次官も訪米を予定している。2013年末の安倍晋三首相の靖国神社参拝などを巡ってアメリカも「失望」を表明するなど、歴史問題を巡り微妙なすきま風が漂う中、日韓の間を事実上仲介しているアメリカが、両国にどう対応するかが注目されている。
47NEWSによると、尹外相は7日の会談後の共同会見で、名指しせずに日本を非難したが、ケリー国務長官は歴史問題に言及しなかった。
尹氏は会談後の共同記者会見で、安倍晋三首相の靖国神社参拝を念頭に「歴史問題が地域の和解と協力を妨げている。(日本側の)誠実な行動が必要だ」と述べた。日本を名指しはしなかった。
ケリー氏は記者会見では歴史問題に言及せず「今年が全ての近隣諸国にとってより安定し、平和になるように期待する」と述べるにとどめた。会談では日韓両国の対話を促したとみられる。両氏とも会見で質問には応じなかった。
(47NEWS「韓国、日本に「誠実な行動」要求 靖国参拝念頭に尹外相」より 2014/01/08 09:46)
韓国メディアはケリー氏が「一筋の光も漏れる隙間がない」「岩のように丈夫な」などの表現を用いたとして米韓関係の良好さを強調したが、日本の歴史問題を巡っては、アメリカが日本側に傾いているのではないかとの懸念も示している。
ワシントンの外交消息筋は「会談前に米国が韓国記者から質疑を受けるのを避けたいとの意向を伝えてきた」と話した。これに対し米国がアジア・太平洋重視政策の戦略的重点が日本に傾いていることを反映するのではないかとの解釈も出ている。
だが、尹長官は特派員に、会談で安倍首相の靖国神社参拝に対する韓国政府の立場を十分に説明したと明らかにした。これと関連して韓国政府当局者は、「米国政府と議会、学界の人たちの間で安倍首相の靖国参拝を批判する共感があることを確認できた」と伝えた。特に「米国政府が失望という表現を行動に移している。靖国参拝がなければあったはずのことが起きずにいるものがある」としながらも具体的な事例は紹介しなかった。胸の内はどうであれ、表に見える様子から米国の日本を批判する強度には韓国と差がある。
(中央日報『「光の漏れる隙もない韓米同盟」、安倍首相への言及なし…韓米外相会談(2)』より 2014/01/09 09:02)
ケリー国務長官が歴史問題に言及しなかったことについて、朝日新聞デジタルは、以下のように背景を説明している。
米政府はすでに靖国参拝について「失望」と異例の表明をしており、問題を蒸し返して日韓の世論に再び火をつけるような事態を避けようとしたのは明らかだ。
(中略)
しかし、これで米国が日本寄りになったというわけではない。米国は日韓関係の改善を目指し、事実上の「仲介外交」を進めていた。ケリー氏をはじめ、バイデン副大統領やヘーゲル国防長官も日韓両国を訪問した際、お互いが歩み寄るよう働きかけた。米政府関係者らの間には、日本への批判を繰り返す朴槿恵(パククネ)大統領の姿勢を懸念し、韓国に態度軟化を促す声も出ていただけに、安倍首相の靖国参拝で米側の努力が水の泡になったとの思いは根強い。
(朝日新聞デジタル「米外交、日韓関係が影 アジア戦略の要、想定外の不和 米韓外相会談」より 2014/01/09 05:00)
一方、谷内氏の訪米は、7日に始動した国家安全保障会議(日本版NSC)の中核となる「国家安全保障局」の局長としてのあいさつや関係構築を目的としている。アメリカのNSCを担当しているライス大統領補佐官らとの会談を調整中だ。
ただ、安倍首相が年末に靖国神社を参拝したことで、「失望」表明についてのアメリカの真意を探る任務も帯びることになるとみられる。
首相の靖国神社参拝に中国や韓国が反発し、米国が「失望」と表明したことに対し、参拝した真意をオバマ政権に伝える機会にもなる。
(MSN産経ニュース「【安保局発足】谷内局長まず訪米 信頼関係醸成狙う」より 2014/01/07 22:18)
朝日新聞デジタルは別の記事で「政権の安全保障への取り組みを説明するどころか、釈明に追われる可能性もある」と指摘している。
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