「人工知能学会」の学会誌「人工知能」2014年1月1日号で、女性型アンドロイドが手にホウキを持ち掃除する姿が表紙に描かれていることについて、「男性の性幻想丸出し」「女性差別に見える」との指摘がネット上の一部で出ている。そのことを12月27日に報じたところ、読者から20件を超える意見が集まった。
「差別とは思わない」とする意見もあれば、「差別につながりかねない」とする意見もある。今のところ真っ二つに分かれている格好だ。
学会誌「人工知能」2014年1月1日号の表紙
「差別につながる」とする側は「ロボット」の語源を特に問題視している。「ロボット」はチェコの作家、カレル・チャペックが1920年の戯曲「R.U.R.」で最初に使った言葉。「強制労働」を意味するチェコ語のロボタ(robota)に由来している。
一方、「差別ではない」とする側は「日本ではロボットに奴隷のイメージはない」「そもそもロボットに性別はない」として、女性差別とするのは過剰反応という指摘をしている。
両者の意見を一部抜粋する形で紹介しよう。
■女性差別に繋がりかねず「問題がある」とする意見
ロボットは語源の通り隷属の意味を持っている言葉であり、そのロボット化した女性に箒を持たせることは、社会における女性の扱われ方を強調して顕在化させる行為に等しく、それを一般教養を持っているはずの学会が認めることの意味を考える必要がある。
要するに「こういう都合のいい女性像を、無邪気に表現している(それで良いのかどうか考えるキッカケすらないという)男性社会」を問題にしているわけですよね。(略)こういう「イメージ」が氾濫してると、「結局オトコが嫁(ニアイコール妻)に求めるものって、セックスまで面倒見てくれる母親なワケ??」と、あらぬ誤解を受けることになるので、男性にとっても不利だと思いますよ。
■「女性差別とは思わない」とする意見
イラストについては差別とは思えない。ロボットの語源がなんであれ、その複製され続けたイメージはもはや原型を失ったシュミラークルに属していると私は思う。特に人形ロボットに執着があることで有名である日本におけるロボットのイメージは、奴隷のそれとは一致しないと私は思う(ついでに箒で掃除をすることも)。
「ホウキを持つ女性」家事は女性の仕事と見るのか、従順なロボットが女性型と見るのか、どちらにしても差別と見るのは過剰な反応のように感じる。所詮、ロボットには性別がないのだから。
このように「ロボット」のイメージをどう捉えるのか。それを現実の女性のメタファーとして見るか、全く別物として見るかによって、今回の学会誌の表紙から受ける印象も全く異なっているようだ。このほかにも読者からは「次回の表紙では男性型ロボットを描けばバランスが取れるのでは?」と、次のようなアイデアも出ている。
次号の表紙には、工事現場で働く、作業着にランニング姿の男性の背中に同じようなプラグが刺さっているイラストにしてみるのも良いかもしれません。そうすることで、性差別を助長するような意図は全く持っていないことを、媒体を通じて表現できるのではないでしょうか。
【※】引き続き皆様からの意見をお待ちしております。
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