東シナ海に展開する中国海軍の実力はどの程度なのか?
中国が2013年11月に、尖閣諸島上空を含む空域に、防空識別圏を設定したことで、この海域における軍事的緊張が一気に高まっている。中国は同じ時期、中国初の空母である「遼寧」を、尖閣諸島付近の海域を通過する形で南シナ海に派遣したが、同空母の動向を監視していた米海軍の巡洋艦「カウペンス」に対して、中国側の艦艇が進路妨害を行うなど、その行動はエスカレートする一方だ。
防空識別圏を一方的に設定することは、偶発戦争の可能性高めることになるため、中国側にとってもリスク要因となる。
本来であれば、ある程度熟練した戦闘遂行能力を持っていなければこうした行動に出ることは難しいわけだが、必ずしもそうとは限らないところが、中国の危険なところでもある。
中国軍(人民解放軍)の装備はほとんどが旧式であり、自衛隊や米軍とは比較にならないといわれてきた。だが近年、中国軍はハイペースで技術革新を進めており、その差はかなり縮まっているといわれる。だが、中国軍はほとんど情報公開をしないため、実際の戦闘能力がどの程度なのかは秘密のベールに包まれたままだ。
米国での調査によると、東シナ海および南シナ海における中国軍の戦闘能力はかなり高まってきており、少なくとも中国軍は、相応の局地戦は可能であるという自信を持っているという。
米議会調査局の報告では、中国は同地域に75隻の艦艇を展開しており、このうち45隻はフリゲート艦、22隻は駆逐艦だという(東海艦隊および南海艦隊)。
一方、米軍はこの地域に主に第七艦隊を展開している。第七艦隊の司令部は横須賀にあり、主力部隊は原子力空母ジョージワシントンを中心に2隻の巡洋艦と7隻の駆逐艦で構成されている(写真は主力空母ジョージワシントンと合同訓練を行う海上自衛隊の護衛艦)。また佐世保には上陸作戦に備えて4隻の揚陸艦が配備されている。
米国の民間軍事研究所であるリグネットによれば、中国軍は艦艇の数において米軍を圧倒しているものの、戦闘能力は米軍の方がはるかに高いという。米軍の巡洋艦と駆逐艦は基本的にイージス・システム(統合的な防空兵器制御システム)を搭載しているが、中国の艦艇の多くは旧来型の装備が中心であり、総合的な戦闘能力に大きな差がある。
ただ、ここ10年の中国軍の技術開発はめざましく、最新鋭の駆逐艦やフリゲート艦は、ステルス能力や高度な防空システムを備えている。中国側は最新鋭艦単体の能力には自信を持っており、カウペンスの進路を中国の艦艇が妨害したのはその象徴だという。
ちなみに海上自衛隊は48隻の護衛艦を保有している。このうち6隻には米軍と同様のイージス・システムが搭載されており、米第七艦隊との共同運用が可能となっている。現在の状況においては、米軍と海上自衛隊を合わせた総合力は中国軍をはるかに上回っていると考えてよさそうだ。
だが中国側の艦艇の多くが最新鋭艦に入れ替わるのは時間の問題であることを考えると、圧倒的な優位性を保持できる期間はそれほど長くないだろう。また海上自衛隊単体の能力ということになると、ここからはさらに後退してしまう。圧倒的な実力差があるという認識はそろそろ捨てた方が良さそうだ。
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