「新卒採用なんかぶっこわせ」 堀江貴文さんたちの考える"21世紀の働き方"とは

アメリカ大使館とクーリエジャポンの共催で「働くこととは何か?」という問いに新たな答えを求めて、様々な業界の第一線で活躍するビジネスリーダーたちが議論を繰り広げる番組がニコニコ生放送で放送された。番組冒頭で元ライブドアCEOの堀江貴文さんが一言:「俺は新卒採用なんかさっさとぶっこわしたいんですよ」。第一線で活躍するビジネスリーダーたちの考える「21世紀型の働く」とは。

日本での就職活動は毎年12月1日に始まる。就活生を待ち受けているのはキャリアフォーラム、企業説明会、セミナー、インターンシップ、グループディスカッション、役員面接などなど……。髪を黒く染め、慣れないスーツを着るのもすべては志望する企業の内定をとるためだ。

就活が解禁されてからちょうど2週間が経った12月14日に、アメリカ大使館とクーリエジャポンの共催で「働くこととは何か?」という問いに新たな答えを求めて、様々な業界の第一線で活躍するビジネスリーダーたちが議論を繰り広げる番組ニコニコ生放送で放送された。

総合司会を務めた元NHKアナウンサーの堀潤さん

■「新卒採用なんかさっさとぶっこわせ」

「働くをデザインする」「アベノミクスがもたらすのは女子革命」「グローバルと仕事」という3つのテーマでセッションが行われたが、セッション1の冒頭で元ライブドアCEOで出所後も多岐にわたって活躍する堀江貴文さんはいきなりこう言い放った。

左からセッション1に登壇した堀江貴文さんと城繁幸さん

「俺は、新卒採用なんかさっさとぶっこわしたいんですよ。あれ、本当何なんですか?みんな新卒で就職しないとドロップアウトしちゃうって思ってる訳ですよ。でも本当は人生にレールなんかないんですよ、あるって思ってるのがおかしいんですよ。みんなが向こうの方向に向かってるからあっちがレールなのかなって思って、ただそれに付き従って歩いてるだけじゃないですか」

「新卒採用をぶっこわす」−−今就職活動に勤しんでいる就活生が聞いたらびっくりの言葉だろう。どうして新卒採用はぶっこわされるべきなのか、そして壊された先にはどのような採用方法が待っているのだろうか。

新卒採用を徹底的に否定する堀江さんは、新卒採用に見られる同時一括採用ではなく「随時採用」を提案する。大学卒業直後に就職しなくてはいけないという固定概念を捨て、働きはじめたいタイミングで働き、学生の内からインターンやバイトをするなど、仕事への入り口を固定するべきではないとの考えだ。

「もう常識みたいになってる就活だのなんだのというシステムを早くぶっこわしたいと思ってますので。『21世紀型の働く』ということは、今まで想像しなかった働き方が出てくると思います」

■「お見合い結婚型」ではなく「恋愛結婚型」の採用を

番組には堀江さん同様、従来の採用プロセスに疑問を感じ、新しいビジネスをスタートさせた登壇者も登場した。その一人がソーシャルネットワークを使った求人サービス「Wantedly」を開発した仲暁子さんだ。

セッション2に登壇した「Wantedly」創設者の仲暁子さん

「Wantedly」の企業紹介ページには「シゴトでココロオドル人をふやす」というヴィジョンが掲げられている。番組で仲さんは現在の採用プロセスは、恋愛で言うところの「お見合い結婚」だと述べた。

「今までは募集要項を見ていいと思った所に履歴書を送って、そんな別に入りたいと思ってないけど『御社に入りたい』って自分をプロデュースする。そのままお互いのことをそんなに深く知らずに交際期間もなくて結婚しちゃう。だから結婚してもすぐ別れちゃう。それが今の新卒採用なんですよ」

それに対して仲さんが目指すのは「恋愛結婚型」の就職活動だ。交際を始めるカップルのように、まずは求職者が企業に遊びに行って、気軽に採用担当の話を聞いたり自分が仕事に求めるものを話したりする機会を設ける。そこでお互いが双方のことを理解した上でマッチングできそうだったら、採用プロセスに入るという形式がとられている。

仲さんはこのような採用プロセスを通じて「仕事を辛いもの」と考えるのではなく「人生の3分の1を仕事に捧げたい」と思う風土を作っていきたいという。

■「折り紙付き採用」で新卒採用を効率化

そう語る仲さんを遮るように「でもお見合い結婚の方が続くんだって!」と反論したのは、ロフトワーク共同創設者の林千晶さん。林さんが経営するロフトワークでも、従来の新卒採用とは全く異なる「折り紙付き採用」というものを導入している。

左からコラボラボ創設者の横田響子さんとロフトワーク共同創設者の林千晶さん

「折り紙付き採用は、入りたい人と一緒に社員が推薦状を出す。そうすると(採用プロセスは)社長面接一回だけで済むんです」

林さんが経営するロフトワークでは5年前まで通常の新卒採用を行っていたが、毎年2万人を超える志望者の中からほんの数人を選出するためにたくさんの労力を費やさなければならなかったと話す。過去にはようやく採用した人物が入社4カ月で辞めてしまったという苦い経験もあるようだ。

「折り紙付き採用」を採用してからは「ロフトワークに入りたい」という強い思いを持ち、なおかつ社についてよく知っているという2つの要素を兼ね備えた人物に的を絞ることに成功したという。折り紙付き採用で見事入社すると、紹介した社員にはボーナスが出るというインセンティブも用意されている。

■従来の新卒採用のメリットとは

新しい採用方法を提唱する以上の3名に共通していることは、従来の就職活動のように企業側が用意した採用プロセスに乗っかるのではなく、求職者自身が自ら企業を訪れてネットワークを作ったり、就職のタイミングを選んだりと、自身の就職活動にイニシアチブをとることが要求される点だと言えるだろう。

これはアメリカを始めとする欧米でとられているシステムに通じるものがあり、より求職者個人のスキルや経験、それまで築いてきた「コネ」、社会で何を成し遂げたいのかという意志などが重視される形になる。しかしこのタイプの就職活動は自由度が増える分、個人の裁量が問われるため、シビアな闘いになるとも言える。

それならば従来のようにみな同じスタート地点から出発し、入社以前の経験やスキルではなく、入社後にどれだけ成長できるかというポテンシャルや素養を重視する日本風の採用にもメリットはあるかもしれない。

この日登壇したベストセラー『若者はなぜ3年で辞めるのか?』の著者・城繁幸さんは、全ての人が新卒採用の時点で自分のやりたいことがわかっているわけではないと言う。

セッション1に登場した城繁幸さん

「自分が何をやりたいかということがわかんない人がほとんどだと思うんですよ。僕はそういう人は普通に企業に入って、何をやりたいかそこで考えとけばいいと思います。ベンチャーに行けばいいんだとか、大学で勉強しなくてもいいんだとか聞いて勘違いしちゃう人もいると思うんですけど、大企業で勉強するべきだと思います」

ほとんどの企業が新卒一括採用を行っている現状、何をやりたいのかわからない内から通常の採用ルートではない道をわざわざ選ぶ必要はなく、企業に就職して、そこで自分がどういう人生を送りたいのかということを考えることも一つの手段だという。さらに城さんは、新卒で入社した会社に一生添い遂げる必要はなく、働きながら自分のやりがいを見つけるべきだと強調した。

■20代でどれだけ働くかがその後の人生に影響

株式会社コラボラボを立ち上げ、女性社長の活躍を社会に発信する「女性社長.net」を運営する横田響子さんは、20代の最も吸収できるときにどれだけ働くかが長期的なキャリアパスを方向付けると指摘した。

株式会社コラボラボを設立した横田響子さん

「中小企業庁の事業で、(出産や育児で離職した)主婦の方がインターンシップを経て社会復帰をしようというプログラムがあるんですけど、20代の一番吸収できるときに何をしてきたかっていうのが、(そのプログラムの成果を)規定してるなって。みんなやる気になれば戻れるんですけど、改めて働こうっていう時に実力がついてきてないときがあるんです」

今後新卒採用をはじめ日本の「働く」文化はどのように変化していくのか。いずれにせよ、学生生活を終えて社会に出た直後の20代前半をどのように過ごすかは、その後の人生に大きく関わってくる。議論は尽きない。

※現在の新卒一括採用についてどのようにお考えになりますか?みなさんのご意見をお聞かせください。