北朝鮮ナンバー2の張成沢氏失脚、シナリオを書いたのは誰? 連行写真も放送

北朝鮮で失脚した事実上のナンバー2・張成沢・前国防副委員長が大勢の目の前で連行される写真を、朝鮮中央テレビが放送した。北朝鮮ウオッチャーからは、金正恩第1書記の独裁強化と、国内情勢の流動化を不安視する声が出ている。
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北朝鮮ですべての公職追放が発表された事実上のナンバー2・張成沢(チャン・ソンテク)・前国防副委員長について、北朝鮮の朝鮮中央テレビは12月9日午後、張氏の追放を伝えるニュースとともに、張氏が大勢の目の前で連行される写真(静止画)を放送した。前日の朝鮮労働党の会議で職位剝奪と党からの除名が決まった直後の写真とみられるが、詳細は定かではない。北朝鮮ウオッチャーからは、金正恩第1書記の独裁強化の動きに伴い、国内情勢が流動化することを不安視する声が出ている。

韓国の通信社・聯合ニュースは12月8日、張成沢氏が北朝鮮の記録映像や公式報道から消えたと報じていた。

聯合ニュースがこの日(12月8日)午後、(朝鮮)中央通信ウェブサイトの検索で「張成沢」と入力した結果、過去の記事が現れず「検索結果がありません」との文言だけが出てきた。

(中略)

7日、朝鮮中央テレビは、張副委員長の姿が削除された金正恩国防委員会第1委員長の記録映画「偉大なる同志第1部 先軍の道から」を放映した。(中略)統一部は、この映画で画面の編集や置き換えなどで張副委員長の姿が削除された場面が17カ所にのぼると明らかにした。

(聯合ニュース「北、朝鮮中央通信ウェブサイトも『張成沢の記事』削除」より 2013/12/08 18:52)

■今年に入り影響力低下の兆候

張成沢氏の影響力が低下した兆候は、今年に入ってから断片的に伝えられていた。

北朝鮮の新聞やラジオ、テレビなどをモニターしているラヂオプレスは、2013年上半期に金正恩氏に関する北朝鮮の公式報道を分析した結果、以下のように張成沢氏の登場回数が激減したことを指摘している。

側近幹部の随行回数(報道で名前が紹介されたもの)を見ると、崔竜海党政治局常務委員・党中央軍事委副委員長・軍総政治局長が74回で抜きん出て多く、

(中略)

張成沢氏は昨年1年間の随行回数が金正恩氏の全動静報道152件(今年に入ってから朝鮮中央テレビの番組で判明した1件を含む)中108回でトップだったが、今年に入ってからの随行回数は26回で、頻度が大幅に低下したことになる。

(ラヂオプレス「北朝鮮政策動向」No487 2013年7月25日発行)

北朝鮮の動向を報道している「デイリーNK」も11月中旬、金正恩氏に対する張氏の影響力が低下したとの見方を伝えていた。

張氏は現在、主に体育分野の事業と外貨稼ぎ分野を担当しているという。北朝鮮内部の取材協力者が明かした。

中国丹東地域に滞在する平壌市在住の消息筋は11日、デイリーNKとの通話で

「経済改革と各種国家建設事業を行う中央党が、最近では外貨稼ぎに集中している。これは現在、張成沢が総括指揮しており、その下で呉克烈(オ・グンリョル、国防委副委員長が)が実務の責任者として動いている。元帥様(金正恩)の執権から2年が経過し、主要な決定を独自に行うことが多くなってからは、張成沢の影響力が弱まった。対外的には彼が国家体育指導委員会委員長であるため関連業務を行うが、実質的には外貨稼ぎに専念しているとされる」

(中略)

「主要政策過程で彼が及ぼす影響力が弱まったのは間違いない。元帥様が他人の意見を聞き入れる回数が減り、張成沢が外貨稼ぎに集中するようになってから自然に影響力が弱まった」

(Daily NK「張成沢影響力減…外貨稼ぎに専念」より 2013/11/14 10:13)

■「体制運営システムの矛盾」

張氏失脚に伴う今後の北朝鮮の影響について、専門家の間では、金正恩氏の独裁強化につながる動きとみているが、主導している勢力が誰なのかが判然としないことから、粛清劇に伴う体制の行方を不安視する見方が多い。

ジャーナリストの李策氏は以下のように述べている。

張氏は故・金正日総書記の実妹である金慶喜(キム・ギョンヒ)書記の夫であり、金書記と崔竜海(チェ・リョンヘ)朝鮮人民軍総政治局長と並ぶ、金正恩第一書記の最大の後ろ盾とされてきた。最近まで党を完全に掌握していると見られてきただけに、北朝鮮の権力構造が一気に流動化する可能性すらある。

(ビジネスジャーナル「北朝鮮ナンバー2・張成沢失脚の真相、万歳事件が引き金か?権力構造流動化の可能性も」より 2013/12/09)

朝日新聞デジタルは経済の開放政策が停滞するとみる以下のような分析を伝えている。

北朝鮮は、外資導入をねらう経済開発区の新設など経済再建に向けた動きも進めてきた。この路線は正恩氏の意向でもあり、実務を担ってきた朴奉珠(パクポンジュ)首相が中心になると見られるが、韓国・IBK企業銀行のチョ奉鉉(チョボンヒョン)研究委員は「張氏の失脚で事業の推進力は落ちるだろう」との見方を示した。

(中略)

張氏の失脚について、日本政府関係者は「張氏の息がかかった人物が軍内部にまだかなりいる。急激に不安定化するとは考えにくい」とみる。一方、別の政府関係者は「軍が力を強め、情勢が変わる可能性は高いだろう」と話した。

朝日新聞デジタル「北朝鮮、独裁強化は必至 張成沢氏の全職務解任・除名 正恩氏の権威、脅かしたか」より 2013/12/10 05:00)

【※】張成沢氏の失脚は東アジアの国際情勢に影響を与えると思いますか?皆さんのご意見をコメント欄にお寄せください。

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