アメリカ、なぜブレる? 民間機には中国の防空識別圏を守らせた事情とは
日本航空や全日空は、中国が主張し始めた防空識別圏に当初従う決定をしたが、日本の航空当局からの圧力により、撤回に至っている。ところが、中国防空圏にB-52爆撃機を送り込んで挑戦状を叩きつけたはずの米国で、連邦航空局FAAはユナイテッド航空やデルタ航空に対し、中国側の要求に従って飛行計画を通知するよう勧告した。米国務省も29日、中国の防空圏を認めたわけではないと断りつつも、同様の考えを示している。
【仰天する日本、副大統領に詰め寄る?】
これを聞いて仰天したという元外務省幹部は、「米国が、全世界の目に見える形で、日本の国家安全保障に直接関係する問題において日本の権益を傷つける一歩を踏み出したという、過去にこんなケースは考えられませんでした」などとNHKに語った。産経新聞も「日米協調を弱体化し、中国に利益をもたらす」と評した。
フィナンシャル・タイムズ紙は、日本にとっては米国という「重要な希望の光」だけでなく、他の地域諸国の日本側支持まで損なわれるものだと評した。
また、やはり同様の防空圏重複がある韓国では、批判はむしろ韓国政府の反応の遅さに向いているようだ。同紙によると、ソウルの通行人には無関心派が多かったようだが、防空圏の共有化を目指す方が建設的ではないかとの意見もあったという。尖閣問題で日本と漁業権の合意に漕ぎつけた実績のある台湾では、防空圏宣言への反応は比較的落ち着いていると同紙は報じている。
各紙は、日本が、本来はTPP交渉を前進させる目的であったバイデン米副大統領の訪日に合わせて、対中問題についての協議を優先的に求めるだろうと報じている。
【米国はむしろ日本の暴発を懸念?】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は米国の狙いとして、「東京が攻撃的な反応をするのを抑える必要があると感じた」と分析している。ただし、単に米政府内の意見が統一できていないだけの可能性も強調している。
同紙は別の記事で、平和憲法改正や防衛費増額を進めている安倍首相にとっては、中国との緊張増大はむしろ追い風になると評している。日本国内で提言されている対策としては早期警戒機や戦闘機の配備増のほか、より尖閣諸島に近い場所への航空基地建設、または空母の保有までもが挙げられている。一方で、「日本が熱くなりすぎて自分のB-52を飛ばし始めでもした場合、国際世論の流れはすぐに変わります」と、自制を求める専門家の意見も紹介されている。
関連記事