国際エネルギー機関(IEA)のマリア・ファンデルフーフェン事務局長は11月28日、2035年までのエネルギー情勢を分析した「世界エネルギー展望2013」について都内の日本記者クラブで会見した。分析によると、2030年前後に中国が米国を抜いて世界最大の石油消費国となり、2020年以降はインドや東南アジアなどで需要が増えるとして、新興国の台頭を予測。世界的なエネルギー情勢が変わりつつあると指摘した。日本の電力については、「福島第一原子力発電所の事故以来、極めて厳しい状況にある」としながらも、現状から判断すれば、原発再稼働にともない原子力発電エネルギーは増え、同時に再生可能エネルギーも拡大すると見通しを語った。
■シェール革命は2020年代までに頭打ち? 長期的に中東は重要
ファンデルフーヘン事務局長は会見で、「グローバルなエネルギー情勢が変わりつつある。米国のようなエネルギー輸入国が輸出国となり、中東諸国も消費を増やして輸入が増えている」と指摘した。世界的な石油使用量のペースは落ちるものの、2035年まで増加傾向にある。一方で米国は、シェール革命によって石油生産を2020年代まで増やすと見られているが、やがて頭打ちとなり、「長期的に石油の需要を支えるのはやはり中東」との見解を示した。
また、「今後、電力エネルギー需要の伸びはアジアの新興諸国から」として、今後10年間は中国がエネルギー消費のメインとなり、インドや東南アジアにシフトしていくと分析した。特にインドでは、あらゆる需要が2035年までに倍増すると言われており、2020年以降に石炭、石油、電力需要が伸びるとしている。
また、世界各地で広がっているガスと電力の価格差にも言及。「エネルギーと経済成長は大きな結びつきがあります。アメリカのシェールガス革命が起こしたブームにより、天然ガス価格が激変しました。それは電力価格にも影響し、アメリカでは電力価格が日本の5分の1、ヨーロッパの3分の1になっています。産業利用では、日本はアメリカの2倍は払わされており、国レベルで大きな影響を与えています」と話した。その上で、「日本の省エネは世界有数のものですが、さらなる改善の余地があります」と対応策として、「エネルギーの効率化」を示唆している。
■日本で再生可能エネルギーを拡大するには?
日本については、「福島第一原子力発電所の事故以来、ストレス下に置かれている」と述べ、「今回の見通しは政府がエネルギー計画をどう決めるかで変わる可能性がある」としながら、現状での判断を示した。それによると、日本のエネルギー需要はゆるやかなペースで伸びをみせ、原子力発電所の再稼働にともなって原子力エネルギーが占める割合が増える一方、再生可能エネルギーによる電力も増加するとしている。
しかし、再生可能エネルギーは、「補助金のコストがかかり、ヨーロッパでもその負担に対する懸念が増大しており、いくつかの国では政治問題になってコストを抑制しようとする動きもある」と指摘。補助金関連のコストは低く抑えることが大切で、インセンティブを導入して投資を誘導するような慎重な設計が求められるとした。