特定秘密保護法案の修正案が11月26日衆議院本会議で可決され、参議院での審議が開始された。石破茂自民党幹事長は「45時間という極めて長い時間、この法案の審議を行ってきた」と自信を見せるが、ハフポスト日本版には「もっと時間をかけて議論を尽くしてほしかった」という意見も出ている。
「成立されればどのような状況になるのか国民は分かっていないのではないか」との指摘もある特定秘密保護法案について、参議院での審議ではどのような議論がされるべきなのか。
■秘密の範囲が曖昧〜第三者による妥当性のチェックの必要性
特定秘密保護法は、国家にとって特に秘匿が必要とされる安全保障に関する情報を「特定秘密」に指定し、これを漏らした公務員らに罰則を科すというものだ。この法案に対しては「秘密の範囲があいまい」という点が指摘されてきた。
日本を陥れるべくスパイ行為を働いた輩には罰を与えるべきだと思うし、そのようなスパイ行為が起きないよう なんらかの法案が必要となるとは思います。
が、原発の問題や放射能の問題は、国民が知るべきことだと思うので、その国家機密にあたる範囲がどこまでなのか、曖昧なのが問題なのだと思います。
(藤原紀香さんブログ「秘密保全法案って?」より 2013/09/13 18:34:07)
何が秘密として特定されるのか。その特定された内容は妥当なのか。行政が恣意的に決めてしまわないよう、アメリカのように第三者機関で監視し、期間が過ぎれば自動的に公文書館で公開されるような国際標準に合わせるべきではないかと、民主党などから修正を求められていた。
自民党議員でありながら26日の衆議院採決で退席し、造反した村上誠一郎衆議院議員は、第三者機関の必要性を次のように指摘している。
イラク戦争の時のように「大量破壊兵器がある」ってCIA(米中央情報局)が(言ったけど)、なかったわけでしょ。それをどうチェックするのか。それと同じことが今回の問題でも多々ある。
(朝日新聞デジタル『「拙速」「官僚統制強化」4議員造反 秘密保護法案』より 2013/11/26 23:37)
当初の政府案では盛り込まれなかった第三者機関の設置だが、野党との修正協議後、付則において「設置検討」するとされた。安倍首相は26日の衆議院審議で「設置すべきだ」と表明。法案成立後、内閣官房に準備室を設けて検討するという。日本維新の会の山田宏議員の質問に対して答えた。
そもそも第三者機関の扱いは政府原案に明記されず、野党との修正協議の過程で急浮上した。首相は法成立後、内閣官房に第三者機関設置に向けた「準備室」を設け、そこで具体的な検討に着手することも明らかにしたが、準備不足は否めない。
実際に設置した場合、特定秘密を知る立場になる人物の選定基準や適性評価の実施、特定秘密の開示の是非などの課題があり、運用面に不安を残している。
(MSN産経ニュース「【特定秘密保護法案】第三者機関に首相前向き」より 2013/11/26 23:25)
ハフポスト日本版の読者からは、第三者機関の設置について、次のようなコメントが投稿されている。
とにかく、運用基準なり、ガイドラインをなるべく明確にさせることだと思います。法案は通っても、現実的に法案を使うためには、誰かが「その情報が秘密情報」であることを指摘し、起訴し、裁判を起こさないといけません。(裁判なしに有罪にする、ということは現時点ではないと思います。)
その時に、例え政府がその情報の内容を説明しなかったにしろ、訴えられた側が、「これこれの情報を公開したが、秘密情報に指定するのがおかしい」と主張すれば、まだ救われる話は多いと思います。特に内部告発的な話に関しては、こういう形で対応可能ではないかと、個人的には思っています。
今、廃案に持ち込む多大な努力をして無駄に終わるよりも、運用基準とか、ガイドラインを、なるべく明確にさせることに力を注いだ方が有益だと個人的には考えています。
■秘密の保有期間が長くなった?
また法案には、秘密と特定された内容が削除されたりせず、きちんと公開する時期が明確になるのかという指摘があった。政府の原案では5年ごとに延長でき、30年を超えるときは内閣の承認が必要とされていたため、「際限なく延長できるのではないか」との意見が出ていたのだ。
それが今回衆議院を通過した野党との修正案では、「60年を超えて延長することはできない」という指定に変わった。これでは逆に「60年までは延長できる」という捉え方も出来る。
修正案は、秘密指定の期限について、暗号など7項目を例外とし、最長60年まで延長可能とすることとした。秘密指定が「無期限に延長できる」との批判は当初からあり、政府案は30年超の指定は内閣承認が必要との「歯止め」を設けていた。維新が最終的な公開にこだわった末に、与党の逆提案の「60年」が残る結果となった。
維新の妥協が60年という長期間の指定にお墨付きを与えたとの見方もあり、民主党などの批判の矛先は維新に向かいそうだ。
(時事ドットコム「【図解・政治】秘密保護法修正案の問題点(2013年11月)」より 2013/11/22)
村上誠一郎衆議院議員は、この秘密指定の期間を次のように指摘する。
アメリカは25年で解除するのに、最長60年だよ。俺たちは生きている間に正しいかどうかも判断できない。
(朝日新聞デジタル『「拙速」「官僚統制強化」4議員造反 秘密保護法案』より 2013/11/26 23:37)
■「戦争をするかどうかを決める日本版NSC。そこで議論される内容は秘密だ」という状態を国民は分かっているのか
元外交官の佐藤優氏は、特定秘密を保護する法律は必要としながらも、この法律がどのような場面で使われるかを、国民は知らないのではないかと11月1日のラジオで指摘している。佐藤氏は、12月4日に設立されるとみられる日本版NSCについて、結局は「戦争をするかどうかを決める機関」であり、日本版NSCで審議する事こそが特定秘密保護法で保護されると話す。
「日本は憲法9条で、戦争を放棄しているので、戦争をするかどうかを決める機関がない。今までは、攻めてきたときだけに反撃するということだったので、主体的な判断をしなくてもよかった。専守防衛です。しかし、守ることは攻めることだという発想にもなってくる。
古い言葉で『統帥権』という言葉がある。軍隊を指揮する最高権力という意味だ。戦前は、天皇に統帥権があった。この機能を、日本版NSCが持つことになる。
今、台風があった時の対応や、伝染病が流行った時の対応、地震対策、金融危機などに、NSCが対応するのかどうかが議論になっている。しかし、危機管理と日本版NSCは関係ない。
では、日本版NSCで一体何を議論するのか。それは秘密だから言えないということになる。
(中略)
何が本当の問題になっているのかというと、わが国が戦争を出来る体制に転換しようとしていること。国際情勢が変わってきているからしょうがないと考えるのか、そういう情勢であっても戦争という手段だけは取らないというわが国の方針だからと考えるのかという、国民的な議論をした上で選挙を経て決めないといけないことが、なし崩しになっている。」
(文化放送「くにまるジャパン」より。2013/11/1 放送)
特定秘密保護法案については、夏の参議院選挙機関中に大きく話題になることはなかった。安部総理は27日の参議院本会議において、今後も法案について、国民に丁寧に説明していくと話している。政府による説明は真摯なものとなるのか。引き続き注目が集まる。
特定秘密保護法案について、政府の説明は十分だと感じますか。今後参議院で審議すべき内容など、あなたのご意見をお寄せください。