尖閣諸島上空が中国の防空識別圏に設定された--。
中国国防省は11月23日、尖閣諸島上空などを含む東シナ海の広い範囲に、戦闘機による緊急発進(スクランブル)の基準となる「防空識別圏(ADIZ)」を設定したと発表した。この範囲が、日本がすでに設けているものと重なることから、尖閣諸島をめぐる日中の緊張が高まるとみられる。
防空識別圏は不審機による領空侵犯を防ぐことが目的で設定されるが、国際法上は不法行為ではない。他国機が領空に侵入してから領土上空に到達するまで、ほんのわずかな時間しかからないこともあり、領空より広い防空識別圏を設定することで、スクランブル対応をするかどうかを検討する基準としているだけなのだ。
自衛隊出身の宇都隆史参議院議員(自民党)は、防空識別圏に通報なく侵入したからといって、必ずしもスクランブルの対象となるわけではないと自身のブログで説明している。
ADIZはあくまで識別圏であって、自衛隊の行動範囲や日本の主権の及ぶ領域を表すものではありません。つまり、この識別圏内を飛行する全ての飛行物体については、味方機(フレンドリー)なのか、敵機(ホスタイル)なのか、あるいは彼我不明機(アンノウン)なのかを航空自衛隊は識別しますという領域を設定しているに過ぎないのです。基本的にADIZの殆んどの範囲は公海上空なのですから、どの国にも自由航行権がありますし、他国にとやかく言われる筋合いはないエリアなのです。
(宇都隆史 オフィシャルブログ「防空識別圏って?【決戦まで、残り46日!】」より 2010/05/27)
日本には防空識別圏が設定されているが、中国には設定がなかったこともあり、中国側はあくまでも「領土領空の安全を守るため」に設定したと発表している。
国防省の楊宇軍報道官は目的について、「国家主権と領土・領空の安全を防衛することだ」と説明。「中国が有効に自衛権を行使するために必要な措置で、いかなる特定の国家や目標を対象としたものではない」と強調し、他の空域にも今後、防空識別圏を設定する方針も示した。
(時事ドットコム「中国、東シナ海に「防空識別圏」=尖閣含む、日中の緊張必至-「不審機に緊急措置」」より 2013/11/23 13:57)
しかし、防空識別圏の設定発表と同時に発表された公告によると、防空識別圏を飛行する航空機は、中国側の指示に従わなければならないとしており、従わなければ武力で防衛的緊急措置が取られることも書かれている。
軍事評論家の神浦元彰氏は、「中国は航空識別圏の意味を理解しているのか」とツイート。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、日中両国が同じ範囲に防空識別圏を設けることで、両国の軍用機の衝突の可能性があると、アメリカの評論家によって指摘される懸念点を報じた。
米政府関係者は中国と日本の軍用機が衝突するようなことになれば、日中が軍事対立に突入する恐れがあり、米国も引きずり込まれる可能性があるとの見方を示している。米国は日米安全保障条約に基づき、日本を守る義務がある。
(ウォール・ストリート・ジャーナル「中国、尖閣上空などに防空識別圏設定―日中の軍用機衝突の恐れ」より 2013/11/23 17:53)
中国はこれまでにも日本の防空識別圏に無人機を飛ばしており、日本の自衛隊がスクランブル発進する事態となっている。そのため、ウォール・ストリート・ジャーナルには、「東シナ海は無人航空機によって始まる世界初の戦争の舞台になるかもしれない」という意見の記事も掲載されている。
このような緊張状態を受け、外務省の伊原アジア大洋州局長は、中国の韓志強駐日公使に対し電話で抗議を行っている。
政府関係者によりますと、中国国防省から北京にある日本大使館に対し通報があったということで、これを受けて、外務省の伊原アジア大洋州局長は、23日夕方、中国の韓志強駐日公使に対し、「尖閣諸島はわが国の領土であり、中国側が防空識別圏を設定することは遺憾だ」と電話で抗議しました。
(NHKニュース「中国 尖閣上空などに防空識別圏設定 NHKニュース」より 2013/11/23 18:06)
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