ファッション界の重鎮、カール・ラガーフェルドを追ったドキュメンタリー映画『ファッションを創る男—カール・ラガーフェルド—』が、2013年11月16日から、シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町他にて全国で順次公開される。
第57回ベルリン映画祭のコンペティション部門にも正式出品された同映画。監督・脚本は、ジェーン・バーキンらが出演した「これが私の肉体」を手がけたロドルフ・マルコーニ。初めてのドキュメンタリーで、2年間に渡りラガーフェルドに密着したという。
映画には、パリの自宅やスタジオ、シャネルのファッションショーの様子、モナコ王妃とのランチ、自家用ジェット機での移動など、ラガーフェルドの日常が、ユーモアに満ちた名言とともに描かれているが、ここでは、彼のドキュメンタリー映画が誕生するまでのストーリーを紹介する。
■孤高の天才、カール・ラガーフェルド
創業者ココ・シャネル亡き後、不振が続いていたシャネルを見事に立て直したラガーフェルド。その後、30年に渡りファッション界を牽引。ファストファッションブランドのH&Mからコカ・コーラまで幅広いブランドとコラボするなど、今なお最前線で活躍している。
また、2000年には、ディール・オムの細身スーツを着るために、42キロの減量をしたことも話題となった。つねに注目を集める一方で、彼自身は年齢も公表しておらず、いつも黒いサングラスをかけて素顔を隠している。ベールに包まれた存在なのだ。
■監督は、3カ月間通いつづけた101人目の男
そんなラガーフェルドの映画を撮るために、監督ロドルフ・マルコーニは3カ月間、彼の広報担当に会いつづけたという。当初、広報は「カールの映画を撮りたいといった人は、監督の前に100人いた」と冷たかったが、後に電話で「明日12時に、彼の家にランチに行きなさい」といってくれたそうだ。
監督は、2人きりで会ったラガーフェルドの第一印象について「彼がほほえみかけたら相手はすぐに落ち着いた気分になれます」「彼の発散するカリスマ性が人を安心させるんです」とインタビューで語っている。
■すべて自然光で、録音技師を使わずに撮影
ドキュメンタリーの撮影にあたり、監督はラガーフェルドの一部となり彼の周囲と一体化するために、すべて自然光で撮ることと録音技師を起用してないことを決めていたという。
ファッションショーの騒然とした世界も、パリの自宅での静寂も、ラガーフェルドの環境が忠実に撮影されている。観客は、画面に現れる彼の世界を体験するように映画を見ることができるのだ。
■具体的にファッションについて描かれない理由
映画では、あまりファッションの世界が描かれていない。ラガーフェルドという男の生き方が伝わるように、映画におけるファッションの割合は、ラガーフェルドの日常におけるファッションの割合と同じにしているのだという。
「彼は本を読み、手紙を書き、あらゆる言語で新聞を読み、写真を撮り、絵を描くことに長い時間を費やします。そして一日の最後にやっと仮縫いにたどりつくのです...」と監督は語っている。
■ラガーフェルド「スクリーン上の私は本当の私じゃない」
「ブラボー。美しい映画だ。あなたは容赦なかったけれど、でもブラボーと言いますよ」と映画を観たカール・ラガーフェルドは、立ち上がって監督に告げたそうだ。
一方、ベルリン国際映画祭の記者会見では「スクリーン上の私は本当の私じゃないということだ。実際の私とは違う人物になっているんだよ」とコメントしている。
天才は、いつまでも孤高の存在なのだ。
※映画『ファッションを創る男—カール・ラガーフェルド—』が公開されます。観てみたいと思いますか? 挑戦をつづけるカール・ラガーフェルドの生き方についてどう思いますか? 意見をお聞かせください。
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