アベノミクスで金融資産が増えた人は「投資を行っている人」だけだった--。
日銀などでつくる金融広報中央委員会が11月7日に発表した調査によると、金融資産を持つ世帯では、前年と比べて金融資産が「増えた」世帯が増加していることがわかった。2人以上の世帯では25.6%(前回19.2%)となり全体の4分の1が、単身世帯でも44.6%(前回34.7%)と半数近くの人が、資産が増えたと回答していた。
金融資産を保有している世帯の金融資産保有額は、2人以上の世帯では平均1,645万円(中央値900万円)、単身世帯では平均1,274万円(中央値500万円)となり、前回と比べて大きく増やしている。
2人以上の世帯
単身世帯
■金融資産 増加理由は「株式などの評価額アップ」
金融資産が「増えた」理由としては、「株式、債券価格の上昇により、これらの評価額が増加したから」とした人が2人以上の世帯、単身世帯ともに大きく増加した。一方、「定例的な収入が増加したから」をあげた人は減少した。
保有資産を金融商品別構成比では、預貯金の占める割合は2人以上の世帯・単身世帯ともに縮小している一方、株式や投資信託などの「有価証券」の割合が大きく増えている。アベノミクスの影響で株価などの上昇に伴い、これらの有価証券の評価額が上がったことで、資産が増加したとみられる。
2人以上の世帯
単身世帯
■金融資産がゼロの人が過去最多に
金融資産を増やしている世帯がいる一方、金融資産がゼロという世帯も増えている。金融資産を「保有していない」とする世帯は、全体の31.0%(前回26.0%)となり、調査項目として公表を始めた1963年以降で最多であったことがわかった。
年齢別に見ると、30代では30.2%、40代では32.6%となったほか、ほぼすべての年代において、金融資産を保有していない人の割合が前年より増えていた。
単身世帯でも2人以上の世帯と同様、金融資産を保有していない人の割合が広がっている。「金融資産を保有していない」と回答した人は全体で37.2%と、前回(33.8%)に比べて増加した。年代別では、30代は35.8%、40代は37.1%と、単身世帯のほうが、金融資産がない人の割合が多くなっている。
■持つ家庭と、持たざる家庭の格差
金融資産を保有する世帯は金融資産の保有額を伸ばしている反面、金融資産を持たない家庭も増え、「持つ家」と「持たざる家」の二極化が広がっていることが浮き彫りとなった。
ニュースの教科書が配信する記事では、日銀が発表する資金循環統計を受けて、株式などのリスク資産を持つ家庭のみがアベノミクスの恩恵を受ける構図だと分析している。
整理すると、家計の金融資産は増加しているものの、その多くは株式評価額の増加によるものであり、所得の増加ではない。また、日銀から供給された資金は、金融機関に滞留し、市中に十分に出回っている状況ではない、といったところになるだろうか。今のところは、株式などのリスク資産を保有できる層のみがアベノミクスの恩恵を受けている構図といえるだろう。
(ニュースの教科書「【アベノミクス】家計金融資産増加の実情とは?」より。 2013/09/22 10:31)
今回の調査では、金融資産が「減った」とした理由として、「定例的な収入が減ったので金融資産を取り崩したから」とする人が最も多かった。安倍政権では、アベノミクスで物価の上昇目標を定めているが、収入が増えない状況で物価が上がれば、貯蓄が出来る人の割合はますます減るのではないかとも考えられる。
株式投資などを行う人にとっては「バイ マイ アベノミクス(Buy my Abenomics)」かもしれないが、そうでない人にとっては、給料も貯蓄も増えないならば「バイ バイ アベノミクス(Bye bye Abenomics)」と言われてしまう状況にもなりそうだ。
2人以上の世帯
単身世帯
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