アベノミクス1周年、海外紙の評価とは 問われる安倍政権の志
昨年の衆院選前から提唱され始めた「アベノミクス」が実質1周年となるにあたり、各紙はその評価を試みている。「日本は戻ってきた」のであろうか?
【経済は成功か】
経済面では概ね高評価である。円は下がって輸出業者を助け、株価は上昇した。フィナンシャル・タイムズ紙は「不気味と言って良いほど計画通り」と評した。
同紙は2020年東京オリンピックの決定にも触れ、この大会自体は低コストを売りにした謙虚な計画であるものの、戦争復興後の1964年大会と同様、日本の国際的ステータス回復の象徴になると示唆した。
フォーブス誌は、ちょうど上半期決算で大手銀行や証券会社などが爆発的増益を報告していることや、1年前日本株を買い漁った米ヘッジファンド・サードポイントのローブCEOら、「新世代投資家」の慧眼に注目している。日銀の国債大量購入やインフレ促進は単なる金融緩和ではなく、国債投資のメリットを減らして株式などに資金を向かわせることが真の狙いであり、それこそがアベノミクスなのだという。
CNBCは、悪くはないがいくぶん不足、と感じているようである。日本経済を長期的に強めるための詳細策が見えず、政策の背後に強固な意図が感じられないことが、「日経の回復が失速し、円が1ドル100円レベルを大幅に超えて下がらない理由」なのだという。
また、食品や原油価格を除く9月の消費者物価指数が横ばいであったことから、日銀にはまだ刺激強化の余地があると主張する。
【まだまだ仕事は山積】
それでもフィナンシャル・タイムズ紙は、「日本は戻ってきた」と言う前の、多くの積み残し課題を指摘する。
まずは規制緩和である。TPPと、農業など日本の保護産業の折り合いをどうするか。強固なフルタイム労働者の雇用保護を緩和する目標は、「いまだ願い事の域を出ない」。法人税減税は、財務省や連立与党内から反対に直面している。巨大な政府債務も問題であるが、消費税増税の決断と、5兆円相当の財政刺激策は相反する。
同紙はまた、外交的には強硬策を採っているが、韓国や中国とは緊張が高まっていると指摘。案外、エネルギーに関して思惑が一致するであろう、ロシアとの関係強化が有望かもしれないと示唆している。
関連記事