子供たちの間では、ネットにまつわる様々な問題が日々浮上し、学校でも対応を迫られる場面が多い。最近では、LINEなどのアプリによる友だちとのグループトークで、「既読」をスルーしたことがいじめにつながるケースもあるという。そこで、福岡を拠点に、子供のインターネット利用について考える「子どもねっと会議所」を主宰し、学校での講演活動などを行う井島信枝さんに、子供たちがSNSを使うことで直面する問題について伺った。
■小学校高学年からSNSに絡んだ問題が急増する
まず、最近の子供たちは、インターネットを利用する中で、どんな問題に直面しているのか。またそういった問題はどれくらいの学年から増えるのか。
「最近多いのは、SNSでのいじめや悪口。それらは、小学生高学年になると増えてきます。まだコミュニケーション能力が未熟な子供たちが、顔が見えないままやり取りするわけですから、言葉の行き違いで悪口と捉えられてしまうことも多々あります。悪気なく書いたことでも、書かれたほうのダメージは直接言われる以上に大きく、それがきっかけで教室に行けず保健室登校になってしまった……といったケースが本当によくあるんですよね」
そのほか、最近問題になることが多いのが、通話やグループトーク、メッセージを送ることができる「LINE」。大人にとっては便利なアプリなのだが、子供たちにとっては、その便利さゆえに問題も多いようだ。
「このアプリは、メッセージを送って相手が読むと、送った側に『既読』と出ます。子供たちの間では、『既読』と出ているのに返事がすぐに来ないと『無視された』『私のこと嫌っている』ということになってしまうようです。子供たちに講演する際には、『忙しくて後から返事をしようとか、ゆっくり考えて返事をしよう、という時もあるよね』と、仲のいい友だちであってもすぐに返信できないときがあることを伝えています。そうすると、そこで初めて『あっ、そうか!』と気づく。子供のうちは短絡的で自己中心的に物事を考えがちなので、大人は、相手に対する思いやりや気遣いといったコミュニケーションの基本から教えていかないといけないですよね」
■親もSNSやフィルタリング機能を使ってみることが大事
では、スマホや携帯に興味を持った子供に対して、親はどう向き合うといいのか。また、親が抱える悩みや問題は何だろうか。
「スマホや携帯について、親同士でなかなか話さないことは問題だと思っています。実は、携帯を持たせたことに罪悪感を感じるためか、あまり語らない人が多いんです。もし親同士でもっと話題にできれば、周りの話を参考に、『SNSってやらせてもいいの?』『メールでの友だちとのやりとりは?』など、子供にどう使わせていくか、物差しの目盛りを探すことができると思います」
また、親がデジタル事情に疎いゆえに、子供のいう通りに特に制限をかけずにやりたいことをやらせてしまうのも問題だとか。
「例えば子供がLINEを使いたいといったら、親御さんも一度使ってみてほしい。そうすれば、良い点も悪い点もわかります。使ったことが無いと、過剰に怖がるだけで終わる人が多い。また、フィルタリングがあまり普及しないのも、フィルタリングをかけないことによって子供がどんなサイトを見てしまうのかを知らず、子供の『大丈夫』という言葉を信じて、そのまま与えてしまうから。そういう親御さんには、まずは自分でアダルトサイトを見てみて下さい、と言っています。子供には見せたくないと感じると思うんです」
■フィルタリングを利用して少しずつ利用範囲を広げる
最近は携帯会社ごとに年齢に合ったフィルタリングをかけられるように設定されているので、まずはそれをかけてみる。そこでもし子供から『見たいサイトまで見られない』と不満が出たら、その時が親子で話し合うチャンス。
「どんなサイトが見たいのかを聞いて、一緒に見てみるのもいいですね。部分的にフィルタリングを外すこともできるので、親子で話し合って、家族内でのルールを決めて下さい。フィルタリングの設定の仕方がよくわからないなら、携帯会社のショップに言って納得するまで聞けばいいと思います」
子供が使う場合のガイドラインについては、各携帯会社のパンフレットやウェブサイトなどでも、詳しく見ることができる。
また、井島さんもメンバーになっている「子どもたちのインターネット利用について考える研究会」では、フィルタリングを利用して、段階的に利用できる範囲を広げていく「段階的利用モデル」を推奨している。これは、モラルやコミュニケーション能力、知識やスキルがどれくらい身に付いているかによって、インターネットの利用範囲を段階的に広げていく、小中学生向けのセーフティガイドだ。何を基準にどこまでOKとすべきかがよくわかるので、これを参考に親子で話し合うのもいいだろう。
■子供にとって、SNSは自己肯定感を得られるツール
子供たちが、友だち同士で絶え間なくメッセージをやり取りしてしまう理由として、井島さんは、やはり心のどこかで満たされない気持ちを抱えているケースが多いのではないかと見ている。Facebookで「いいね!」をもらったり、LINEですぐ反応をもらえることで、一時的に自己肯定感を得られるからだ。
「子供たちに必ずいうのは『夢中になれるものを見つけなさい』ということ。それでも思春期には、誰しも悩みを抱える。そうなった時には、身近な大人に相談してほしいと伝えるんです。ネットを開けば顔も知らないけど愚痴を聞いてくれる人はたくさんいるかもしれない。でも、本当にその人たちがあなたを助けてくれるのかと問いかけます」
思春期の子供に対して、親は何を言っても反発されると悩む。しかし、井島さんいわく「親御さんは、子供が聞いてくれなくても、本当に心配しているということ、応援したいと思っていることを、何度も言葉で伝えてほしい。一緒に住んでいても、言葉に出さなければ伝わらないですから」
子供と一緒にSNSを使い、利用については親子でよく話し合う。井島さんは、これまでのしつけと同じように、安全な利用方法を1つ1つ地道に教えていくことが大事だとポイントを語った。
(相馬由子)
※子供のSNS利用について、どう思いますか? 実際に身近にあった事例や、子供のSNS利用について知りたいことがあればお聞かせください。
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