村上春樹がノーベル賞を取れない理由 海外メディアが分析

英国のブックメーカー(賭け屋)のラドブロークスによると、文学賞受賞者として最も人気が高いのが、村上春樹氏だ。賭け率は3倍。2番人気は、米国の作家ジョイス・キャロル・オーツ氏で、6倍である。今までなぜ、受賞できていないのか。
TOKYO, JAPAN - DECEMBER 14, 2004: Haruki Murakami, the Japanese best selling author/writer/novelist and essayist, on December 14, 2004 in Tokyo, Japan. Murakami is best known as the best selling author of books such as 'Norwegian Wood', 'The Wild Sheep Chase', 'Underground', 'Kafka on The Shore' and 'What I Talk About When I Talk About Running'. Murakami is also an experienced long distance marathon runner, and a translator of other authors' works. (Photo by Jeremy Sutton-Hibbert/Getty Images)
TOKYO, JAPAN - DECEMBER 14, 2004: Haruki Murakami, the Japanese best selling author/writer/novelist and essayist, on December 14, 2004 in Tokyo, Japan. Murakami is best known as the best selling author of books such as 'Norwegian Wood', 'The Wild Sheep Chase', 'Underground', 'Kafka on The Shore' and 'What I Talk About When I Talk About Running'. Murakami is also an experienced long distance marathon runner, and a translator of other authors' works. (Photo by Jeremy Sutton-Hibbert/Getty Images)
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村上春樹には政治性が足りない? 海外メディアがノーベル文学賞とれない理由を分析

ノーベル賞受賞者の発表が7日から始まる。まずは生理学・医学賞の発表、10日か17日には文学賞の発表が予定されている。

英国のブックメーカー(賭け屋)のラドブロークスによると、文学賞受賞者として最も人気が高いのが、村上春樹氏だ。賭け率は3倍。2番人気は、米国の作家ジョイス・キャロル・オーツ氏で、6倍である(どちらも日本時間7日19時現在)。

村上氏は、ポストモダン文学の旗手として有名で、作品は現在、数十の外国語に翻訳・出版されている。作品の評価は高く、日本国内外に熱心な支持者がいる。

同氏は既に、エルサレム賞、 フランツ・カフカ賞を受賞している。

【常に人気の高い作家】

村上氏の作品は、売上が減少している出版業界で、常に好調な売れ行きを維持している稀有な存在だ、とウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。最近では、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』が4月に出版され、最初の1ヶ月間で、100万部以上売れたという。英語版は、2014年に書店に並ぶ予定だ。

同紙によると、東京神保町の三省堂書店次長、松下恒夫氏は、4月の発売開始日には、いち早く新刊を手にしようという熱心な村上ファンのために、いつもより3時間早く開店したそうだ。同氏は、「村上氏の小説は、他の作家に比べ、大きな売上になります」「彼が3年から5年ぶりに新刊を出すと必ず大人気になるんです」と述べた。今年のノーベル賞受賞については、「受賞すれば、過去の作品への新たな関心を呼び起こすことになるでしょうね」と受賞を期待しているようだ。

【ノーベル賞を獲れない理由】

村上氏は、これまで何度も候補に挙がったが、受賞を逃してきた。2012年にも、最も有力な候補者と見られたが、受賞したのは中国の莫言氏であった。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、中央大学文学部の宇佐美毅教授による、過去の日本人文学賞受賞者(1968年受賞の川端康成氏や1994年受賞の大江健三郎氏)との比較を紹介している。

同教授は、例えば大江氏の作品では、社会の中で少数派の人々の葛藤や原子力問題など、政治的・社会的問題が扱われるのに比べ、村上氏の作品はあまりそういう要素がみられない、と指摘している。このため、同氏の作品は強力なテーマや目的が欠けているとみられており、それがノーベル賞をいまだに受賞できない理由のひとつだろう、とみているようだ。

実際、村上氏はこれまで、公の場に姿を現すことはあまりなく、政治的な発言もほとんどしてこなかった。しかし、2012年、日本と中国の領土問題に関する緊張の高まりを受け、朝日新聞に寄稿している。同氏はその中で、日本が中国と対立し国家主義の傾向を強めることは、安酒を飲むようなもので、酔が回るのは早いが、ひどい二日酔いになる、と冷静な対処を求める意見を述べた。

また2009年には、エルサレム賞授賞式で、イスラエルによるパレスチナ人の扱いを非難した。

評論家の一部は、これらはノーベル賞を意識しての政治的発言ではないか、と幾分皮肉な見方をしているようだ。

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