立正大学経済学部の森島賢(まさる)教授が、JAグループ向けの業界紙「農業協同組合新聞」に寄稿した「TPPで1俵2200円の米がやってくる」というコラムがネット上で大きな反響を呼んでいる。TPPに加入すると、日本米の10分の1の価格のベトナム米が日本に入ってくることになり、「日本の米は壊滅するだろう」と論じているためだ。
コトバンクによると、TPPとは環太平洋戦略的経済連携協定の略称だ。シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国が参加する自由貿易協定で、2006年5月に発効した。外務省によると、さらにアメリカ合衆国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシア、メキシコ、カナダ、日本が参加を表明。新たな枠組みの合意に向けて12カ国で交渉を進めている物品の関税は、例外なく10年以内にほぼ100%撤廃するのが原則だ。
森島教授はベトナムの米価は、1俵(玄米60キロ)あたり1764円と指摘。国産米の価格は1万6127円なので10分1程度だと明かした上で次のように論じた。
TPPで米の関税をゼロにすれば、輸送費を加えても2200円で輸入されることになるだろう。これに太刀打ちできる農業者が日本にどれほどいるだろうか。皆無といっていいだろう。
現在、ベトナムで生産されているのはインディカ米。インドカレーなどに使われるパサパサした長細い品種で、日本人が食べている粘りけのあるジャポニカ米とは違う種類だ。だが、森島教授は「現地の企業や日本の企業は、日本米を生産して、日本への輸出をもくろみ、着々と準備をすすめている」として、いずれは安価なジャポニカ米が日本に向けて大量に生産されることを予測している。そして、こう結論付けた。
もしも、TPPで米の関税をゼロにすれば、日本の米は壊滅するだろう。ゼロにするまでに猶予期間をおけばいい、というものではない。猶予期間の後には壊滅する。そうした暗い将来をもつ日本の米に希望を持つ農業者はいないだろう。ことに若い農業者は、日本の米に絶望するしかない。主食の米さえも外国に依存することに、大多数の国民も絶望するしかない。だから、日本はTPPで、米をはじめ農産5品目を死守しなければならない。
この森島教授のコラムがネット上で広く読まれたが、LINE株式会社・執行役員の田端信太郎さんは「消費者としては大歓迎!」とコメント。ベトナム在住の作家、大石哲之さんも「低所得者層は、とても恩恵を受けるはず」と分析するなど、日本の米が壊滅することを悲しむのではなく、むしろ米価格が下がることを喜ぶ意見が続出した。
一方、プログラマーの菅野善久さんは、日本のコメ農家は高級路線に切り替えるべきと主張。価格で外国に対抗するのを諦めて別の道を歩むことを勧めている。
【※】このようにネット上では、さまざまな意見が出ていますが、読者の皆様はTPP加入で日本国内で流通する米の価格が大幅に下がる可能性について、どのように考えますか?コメント欄にご意見をお寄せください。
【訂正】メキシコ、カナダ、日本はすでに交渉に参加している旨を加筆しました。(2013/10/02 13:20)
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