秘密保護法案とは何か、藤原紀香さんのブログで話題に【争点:安全保障】

女優の藤原紀香さんが9月13日に自身のブログで記した「特定秘密保護法案」に関する記事が話題になっている。「特定秘密保護法案」とは何か。法案が作成された背景と課題を紹介する。
時事通信社

女優の藤原紀香さんが9月13日に自身のブログで記した「特定秘密保護法案」に関する記事が話題になっている。

藤原さんは「放射能汚染、被爆などのことや、他に、もし国に都合よく隠したい問題があって、それが適用されれば、私たちは知るすべもなく、しかも真実をネットなどに書いた人は罰せられてしまう。。。なんて恐ろしいことになる可能性も考えられるというので、とても不安です(>_

このときの民主党政権下においても、一般の方たちから意見を聞くパブリックコメントが行われ、70件の意見が投稿されたという。このパブリックコメントには、「秘密保全法制の整備が必要である」という意見や、「漏えい行為の厳罰化は、公務員等の情報公開に対する姿勢を過度に萎縮させるおそれがある」、「現行法令で十分であり、新たな秘密保全法制は必要ない」などの意見が寄せられた。

藤原さんが懸念を示した政府案(特定秘密の保護に関する法律案)は、守るべき秘密を(1)防衛(2)外交(3)安全脅威活動の防止(4)テロ活動の防止の4つに分類。そのうち、特に高度な秘匿が必要と認めた情報を「特別秘密」に指定し、外部に漏らした公務員や政治家らに罰則を科す内容となっている。また、特定情報を扱える人についても、「適性評価制度」として「セキュリティクリアランス」のように審査を行うとした。しかし、これらの内容には幾つかの懸念点が指摘されている。

■秘密保護法案の問題点とは

多くの意見が上がっているのが「特定秘密の範囲があいまい」というものだ。

政府案では、守るべき秘密にあたる内容をとして、「自衛隊の運用又はこれに関する見積り若しくは計画若しくは研究」であったり、「安全保障に関し収集した条約その他の国際約束に基づき保護することが必要な情報その他の重要な情報」というように書かれており、ざっくりしているとの指摘がある。

東京新聞は社説で、この「あいまいさ」について、拡大解釈される可能性があると指摘する。

この法案が成立すれば、政府は重要な情報を、これを盾に隠すことができる。例えば、収束のめどが立たない東京電力福島第一原発など原発に関する情報について、政府が「公表するとテロに遭う危険がある」との理由で国民に伏せる事態も想定される。

(東京新聞「「機密」拡大解釈の恐れ 秘密保護法案 見えぬ意義」より。 2013/08/29)

藤原さんも原発の情報公開について指摘し、次のように述べている。

原発の問題や放射能の問題は、国民が知るべきことだと思うので、その国家機密にあたる範囲がどこまでなのか、曖昧なのが問題なのだと思います。

(中略)

「国の情報は公開が大原則のはず。」

そうですよね、国民は知る権利があると思います~

(藤原紀香さんオフィシャルブログ「秘密保全法案って?」より。 2013/09/13 18:34)

この他、日本弁護士連合会(日弁連)では、特定秘密を取り扱う人の範囲は公務員だけにとどまらず、一部の民間事業者や大学等で働く人も含まれると指摘し、「適性評価制度」によってローンなどの返済状況や精神疾患などでの通院歴などが審査されることになるかもしれない点を挙げ、プライバシーの侵害になるのではないかと指摘している。

報道各社からも、報道機関の取材活動が制限されたりするのではないかとする懸念が出ている。

【報道各社の秘密保護法案に対する記事の例】

  • 朝日新聞 2013年8月25日社説:秘密保全法案―権利の侵害は許されぬ
  • 産経新聞 2013年8月18日主張:秘密保全法案 言論に配慮し情報管理を
  • 毎日新聞 2013年6月8日社説:NSCと情報保全 「知る権利」制約の懸念
  • 日経新聞 2013年9月7日社説:疑問点があまりに多い秘密保護法案
  • 読売新聞 2013年9月6日社説:秘密保護法案 報道の自由への配慮が必要だ」
  • 東京新聞 2013年9月13日社説:秘密保護法案 軍事国家への入り口だ
  • 日本新聞労働組合連合(新聞労連) 2013年9月4日見解:民主主義を破壊する「特定秘密保護法」に断固反対する

■政府の動向と周囲からの意見

現在の第2次安倍政権は、この法案を10月召集予定の臨時国会に提出し、成立を目指すとしている。アメリカのズムワルト国務副次官補は9月5日、「特定秘密保護法案」を日本政府が検討していることについて「同盟では情報交換が極めて重要だ」と成立に期待を表明している。

政府はこの法案について9月3日かから、広く国民からの意見を聞くパブリックコメントの受付を開始した。

しかし、パブリックコメントに関しては、受付終了日が9月17日と、わずか15日間しか無いため「短い」との意見も出ている。日弁連は、9月12日、募集期間の延長を求める意見書を提出。NHKニュースは、意見募集の期間の平均は27日間と分析している。

これに対し菅義偉官房長官は13日午後の記者会見において、「国民の皆様からの意見は十分に聞く必要がある」としたうえで、これまでパブコメ期間を2週間としたことは何例もあるとし、延長の考えはないと述べた。

また、公明党は政府がはじめたパブリックコメントの募集に、政府や自民党から十分な説明を受けていないとして懸念を示していた経緯もある。

自民党においても8月27日、インテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチームが特定秘密保護法案の議論を開始した。会合後に座長の町村信孝元官房長官は、同法案における報道の自由との兼ね合いについて、「正常な取材活動は問題ないことを法律上明確にしたい」と話したが、「何が不当な方法かは議論が分かれるかもしれない」とも述べた

■国民の意見は?世論調査では6割が賛成とのデータも

藤原さんのブログや報道を受けて、インターネットユーザーの間でも、意見が増えている。

また、秘密保護法案の賛否について、9月6日〜9日の間に時事通信が行った世論調査では、「必要だと思う」と答えた人は63.4%、「必要ないと思う」は23.7%だったという。「この法案には国民の知る権利や報道の自由を制限しかねないとの異論もある」と説明した上で質問したという。

秘密保護法案についてあなたはどう考えますか?ご意見をお寄せください。

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