ついにドコモからも発売が決まったスマホの大本命、iPhone。ドコモ、ソフトバンク、auの3大キャリアでiPhoneが使えるようになった今、キャリアを選ぶ重要なポイントは「つながりやすさ」「通信の快適さ」だろう。
その性能のカギを握るのが、LTE(従来の3Gより高速で通信できる方式)のエリアの広さと密度だ。9月20日に発売されるiPhone 5s とiPhone 5cでは、これまで対応してなかった「プラチナバンド」のLTEに対応した。「プラチナバンド」とは、700〜900MHz付近の周波数帯のこと。山間部やビルの谷間、室内などに電波が届きやすく、通信事業者にとってもユーザーにとっても価値が高いため、「プラチナバンド」と呼ばれている。
つまり、プラチナバンドのLTEに対応した新しいiPhoneになると、これまでのiPhone 5のときの「つながりやすさ」とは状況が一変する可能性があるのだ。
では、どの事業者がプラチナバンドのLTEに強いのか。総務省の資料をもとに集計したプラチナバンドの基地局数では、8月時点でauが圧倒している。
これがiPhone発表前に行われた9月2日の記者会見で、KDDIの田中孝司社長が「LTEのエリア競争はKDDIが断トツで勝てるのでは」と胸を張る理由だ。
もちろん、プラチナバンドの基地局数だけが快適さを表す指標ではない。実際には利用する周波数の幅や、基地局配置、負荷分散など様々な要因が「つながりやすさ」に直結するため、事はそう簡単ではない。
また、auはiPhone 5発売時に、iPhoneでは使えないエリアを使えるかのように「誤記」し、今年5月、総務省から指導、消費庁から景表法違反で措置命令を受け、利用者の信用を失った経緯もある。プラチナバンド以前のauのiPhone 5では、電波表示は問題ないのにデータ通信ができなくなる「パケ詰まり」がたびたび話題にされたり、「ソフトバンクのほうが快適」という比較調査結果も出ていた。
■専門家は「auが有利」「ソフトバンク不利」
だがそれでも、携帯電話に詳しい専門家・専門誌では「プラチナバンドのLTE」で先行するauが有利であるという意見が強い。
「現在、日本で800MHz帯をLTEに利用しているのは、auとドコモの2社だ。auは、今まで800MHzを中心にインフラを整備していて、こと800MHzのLTE基地局免許許可数では、ドコモを上回っている。このインフラを活用できれば、当面、つながりやすさでは、auが有利とみている」(ITジャーナリストの法林岳之さん)
(SankeiBiz「iPhone“秋の陣” 焦点はつながりやすさ (3/3ページ)」より 2013/09/11)
iPhoneを販売することが競争優位性にならなくなったので、ネットワークの強さが重要になってくる。ドコモが、どの周波数を使うかは、まだわかりませんが、品質の良いイメージを持っている。また、auも800メガヘルツ帯を使う予定で、接続品質はかなり良くなると思います。女子高生に対するアンケートがあって、何を基準にキャリアを選ぶか、という質問に対して「接続しやすいかどうか」という回答が一番多かった。女子高生でもそうなので、一般のユーザーはもっと、そういう傾向にあると思います。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング 経営コンサルティング部長兼チーフコンサルタント 細川達也さん)
(THE PAGE「ドコモもiPhone販売 なぜ今? スマホ勢力図は今後どうなる?」より 2013/09/11)
KDDI(au)では、800MHz帯を中心に構築しつつ、iPhone 5に対応すべく、2.1GHz帯の基地局敷設も同時並行にて行っていた。対してソフトバンクモバイルはメインの2.1GHzでLTEを構築、イーモバイルの1.7GHzも使えるということもあって、iPhone 5の時点ではソフトバンクモバイルにやや分があったとも言える。しかし今回のiPhone 5s、iPhone 5cで800MHz帯対応となったことで、同帯域をLTEネットワークの中心バンドと据え、LTEの実人口カバー率を97%にまで拡大しているKDDIが一気に形勢逆転と言えるかもしれない。
(RBB TODAY「iPhone 5s/5cの注目点はプラチナLTE!……キャリア選びの本命は?」より 2013/09/11)
■ドコモ、ソフトバンクはどうか?
一方、注目のドコモについては期待を集めているものの、プラチナバンドの基地局数の少なさから不安視する声もある。
iPhone参入を決めたドコモもLTEエリア覇者の座を狙っている。ドコモが扱う周波数帯もauと同じ2.1GHz帯/1.5GHz帯/800MHz帯。iPhone対応も2.1GHz帯と800MHz帯で同じだが、これらを合わせても2万4400局(2013年3月時点)にとどまり、初めてのiPhone参入という不安要因もある。
(朝日新聞デジタル「生き残りかけ、LTEエリア競争激化へ 新iPhone発表」より 2013/09/11)
iPhoneを国内で最初に販売したソフトバンクだが、先ほどのグラフでもあるように、プラチナバンドのLTE基地局は未だゼロ。2014年からの展開を予定し、出遅れ感が否めない。ソフトバンクが推進するLTEの方式が、今回の新機種ではサポートされなかったことも不安視される要因だ。専門誌のCNET Japanは苦戦を予想している。
窮地に立たされるかもしれないと言われているのがソフトバンクだ。同社は2012年にプラチナバンドである900MHz帯を割り当てられており、日本で発売されるiPhone 5s/5cも、900MHz帯に対応している。しかし、この900MHz帯のLTEサービスが利用できるようになるのは2014年夏になる予定で、それまでは既存の2.1GHz帯とイー・アクセスの1.7GHz帯を使ってLTEサービスを提供することになる。そのため、当初はLTEサービス提供エリアでドコモとKDDIに遅れをとってしまう可能性がある。
(CNET Japan「ソフトバンク、「iPhone 5s/5c」のLTEエリア展開で窮地?」より 2013/09/11)
トップシェアのドコモの参入でいよいよ火蓋が切って落とされる「iPhone三国志」。ネットワークの品質が、勝負のポイントだ。
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