9月8日、アルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会総会で、2020年の夏期オリンピックの東京開催が決まった。東京、マドリード、イスタンブールの3都市が争ったが、1回目の投票でマドリードが脱落、決選投票において60対36でイスタンブールを退けた。
東京は福島第一原発の汚染水問題が投票を得るのに最大の障壁と考えられていたため、安倍首相自らプレゼンテーションで安全性を強調した。
安倍総理大臣は福島第一原発の汚染水問題に懸念が出ていることについて「状況はコントロールされており、東京に決してダメージは与えない」と述べました。
安倍総理大臣はこの後の質疑でさらに詳しい説明を求められたのに対し、「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメールの範囲内で完全にブロックされている。福島の近海で行っているモニタリングの数値は最大でもWHO=世界保健機関の飲料水の水質ガイドラインの500分の1だ。また、わが国の食品や水の安全基準は世界で最も厳しいが、被ばく量は日本のどの地域でもその100分の1だ。健康問題については今までも現在も将来も全く問題ない」と述べました。
(NHKニュース「首相 汚染水問題「政府の責任で対策」 」より 2013/09/08)
このアピールが勝利につながった、との見方が強く、NHKニュースやMSN産経ニュースも海外記者のコメントや反応を紹介している。
東京のプレゼンテーションを現地に設けられたメディアセンターで見ていたオランダの記者は「総理大臣が原発の問題を説明したことで東京が勝つチャンスは上がったと思う」と評価しました。
また、イギリスの記者も「原発の問題について情熱を持って話をしていたと思う。安全性を保証したことはよかった」と話しました。
また、地元アルゼンチンの女性の記者は「東京は心からプレゼンしていたと思う。福島の話は今までより詳しい説明になったし、皇室がサポートしたこともよかったと思う」と話していました。
(NHKニュース
「国家指導者のなめらかな演説は、IOCが懸念する福島原発問題の不安を解消するために行われた。日本は60対36でイスタンブールを大差で勝利したことから、演説はその目的にぴったりと合っていたようだ」と指摘した。
(MSN産経ニュース「【東京五輪決定】「安倍首相演説が決め手」ロイター通信が絶賛」より 2013/09/08)
■海外主要紙の反応
ウォールストリート・ジャーナルは開催地が決まる前の9月4日の記事で、汚染水問題について英語のウェブサイトを開設して理解を求めていることや、G20の場で首相が安全だと発言したことなどの例を挙げ、日本の対応に一定の評価を与えている。
また、東京開催決定を報じる記事でも安倍首相自ら「汚染水問題はコントロール下にある」など安全性を訴えたことについて触れている。東京と並んで有力候補と見られていたマドリードの落選については、2024年の招致合戦の前哨戦だった、と指摘。2024年のオリンピックをヨーロッパに招致したい国が、2020年のヨーロッパ開催を嫌ってアジアの日本支持に回った、と報じている。
イギリスのガーディアンも、「重要な役割を果たした」と安倍首相を評価。東京の勝因について、2016年の招致レースのときに敗因となった、一般市民の支持率の低さを克服したことを挙げている。また、IOCにとって治安がよく経済が安定した東京はもっとも無難な選択だった、と分析した。
ニューヨーク・タイムズも同様の論調で、「IOC委員にとって、日本の(汚染水をめぐる)環境問題より、シリアが隣国となるイスタンブールや、不景気で失業率が高いマドリードのほうが切迫した問題だった」と分析。1964年の東京オリンピック、1972年の札幌冬季オリンピック、1998年の長野冬季オリンピック、2002年の日韓共催サッカーワールドカップと、大きな大会の開催実績もあり、「安全な選択」であったとしている。
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