東京電力福島第一原発の貯蔵タンクから放射能汚染水が大量に漏れた問題で、東電は9月5日、タンク南側の観測用井戸で4日に採取した地下水からストロンチウムなどのベータ線を出す放射性物質が1リットル当たり650ベクレル検出されたと発表した。時事ドットコムが伝えた。
東電は「汚染水が土壌にしみ込み、地下水に混ざった可能性がある」とし、タンク漏洩でも汚染水が地下水と混じった疑いが浮上した。
NHK NEWS WEBによると、東電で汚染の広がりを調べるためにタンクから10メートル余り離れた場所に新たに掘った井戸で4日に採取された水から、ストロンチウムなどのベータ線という種類の放射線を出す放射性物質が1リットル当たり650ベクレルという高い値で検出されたという。
水は地下水が流れる深さおよそ7メートルほどのところで採取されたということで、東京電力では漏れ出した汚染水が地下水にまで到達したおそれがあるとみている。
第一原発には敷地西の山側から地下水が流れ込んでいる。流れの方向で見ると、井戸は漏出タンクの上流にあり、東電は「汚染経路は不明」と説明。タンク周辺の追加ボーリング調査や土壌の分析などで、地下水への影響を詳しく調べる。
原子力規制庁は「漏れた汚染水が地下水に達しているのではないかと推測していたが、それが裏付けられた格好だ。東京電力には、周辺の地下水を調べて汚染の広がる範囲を把握し、漏えいの原因を特定するよう指示しているので、しっかり対応してほしい」と話している。
■ ニューヨーク・タイムズ「危機対応能力に疑問視」
アメリカの新聞ニューヨーク・タイムズは5日までに、東京電力福島第1原発の汚染水漏えい問題について「専門家らが政府や東電の危機対応能力を疑問視し始めた」と伝える記事を掲載した。
47NEWSによると、記事は政府が3日、総事業費500億円前後に上る対策を決定したことを紹介。その上で「2020年夏季五輪の開催地を決める国際オリンピック委員会(IOC)総会を念頭に(懸念を払拭しようと)政府が発表した」との見方も出ていると指摘している。
これまで放射性物質への対応を東電の手に委ね、結果的に原発を十分に制御できなかったとして、日本政府に対する国民の批判が最も強いとも伝えた。記事の冒頭はルポ形式で、福島県楢葉町で除染に当たる作業員らの様子などを伝えている。
■ 五輪招致、汚染水説明に不満相次ぐ 形勢一変する可能性も
2020年夏季五輪開催を目指す東京招致委員会が4日、国際オリンピック委員会(IOC)総会が開かれるブエノスアイレスで行った初の記者会見に対し、外国メディアからは東京電力福島第1原発の汚染水漏れ問題に対する説明が不十分だと不満が相次いだ。政府が3日に決めた国費470億円をつぎ込む基本方針は詳しく紹介されず、招致委関係者から対応を反省する声も出た。
会見に出た海外の記者は「失望した」「意図を理解しない答え」と突き放した。東京と福島の距離を強調する姿勢に「東京だけ安全ならいいとも聞こえ、福島の人々への配慮が足りないのではないか」との声もあった。
5日付のイギリスの新聞タイムズは国際オリンピック委員会(IOC)筋の話として、スペイン・マドリードやトルコ・イスタンブールと比べ「東京が優位だ」とする見方を報じた。一方で、東京電力福島第1原発の汚染水問題に対する懸念が高まっているとして、招致レースの「形勢が一変する可能性がある」とも指摘した。
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