エルピーダの名前が消滅するーー。
アメリカ半導体大手のマイクロン・テクノロジー(Micron Technology)は7月31日、会社更生手続き中の半導体大手エルピーダメモリの全株式を取得し、子会社化したと発表した。今後、エルピーダの社名を「マイクロン・メモリ・ジャパン」に変更し、製品ブランド名も変える方針だという。合わせて、同日付でエルピーダの坂本幸雄社長が退任し、後任に木下嘉隆取締役が昇格する人事も発表した。
エルピーダはNECや日立製作所の事業を統合し、1999年に発足。「日の丸半導体」の復権を目指したが、価格競争の激化で経営が悪化。2009年に300億円の公的資金が投入されたが再建できず、2012年2月に会社更生法の適用を申請して破産した。
このDRAM3位のエルピーダと、4位のマイクロンの統合で、サムスン電子に次ぐ2位のメーカーが誕生したことになる。同日記者会見した木下新社長は「(半導体で首位の)サムスン電子に対抗できるメモリカンパニーの誕生」と自信を示した。
朝日新聞デジタルによると、買収総額2千億円のうち、マイクロンはまず600億円でエルピーダの全株式を取得。2019年までに計1400億円の利益が出るようエルピーダに製造を委託することで、残額を支払うという。
エルピーダのリリース記事によると、マイクロンのCEO、マーク・ダーカン氏の言葉を次のように書いている。
「我々はエルピーダとマイクロンとの統合により、業界をリードするメモリ専業の会社を形成できたことに大変満足しています。今回の統合により、研究開発力や生産能力は強化され、また、コスト面や生産面の相乗効果が得られ、さらには幅広いメモリ製品ポートフォリオが顧客に提供されることになります。」
(エルピーダメモリ「エルピーダとマイクロンがスポンサー契約手続を完了」より。 2013/07/31)
マイクロンはエルピーダとの統合に向け、会社更生法の手続きに入る前の2008年頃から協議を行なっていたという。エルピーダは価格変動の激しいDRAM以外の製品を持っていないため、DRAMのほかにも幅広い製品群を持つマイクロンと組むことで、提供できる製品が広がることにもなる。
DRAMは主にパソコンで使用されているが、パソコン販売が落ち込んでいるにもかかわらず、今年に入ってからメモリーチップの価格が上昇していたこともあり、マイクロンが6月に発表した第3四半期(3−5月)決算は、8四半期ぶりに黒字を計上したという。又、同社は2014年に設備投資を増やす予定だという。
MSN産経ニュースが報じるところによると、マイクロンはエルピーダが持つ主力生産拠点の広島工場(広島県東広島市)や、半導体組み立て子会社の秋田エルピーダメモリ(秋田市)などを引き継ぎ、雇用は原則として維持するという。
いっぽう、同じく半導体のルネサスエレクトロニクスは、政府系ファンドの産業革新機構とトヨタ自動車や日産自動車などが1500億円を出資して官民ファンドを作り、経営再建を目指すことになっている。ルネサスでは合理化が進められており、その一環として、山形県鶴岡市の工場を売却の対象としていたが、売却先が見つからないという状況のため、閉鎖することも含めて調整を進めていることが判明している。また、子会社も整理し、製造や販売、設計・開発担当の子会社8社を3社にまで統合するなどの、組織再編策を発表している。
外資系企業による再編か、それとも官民ファンドによる再編か。半導体大手2社の、今後の行方に注目が集まる。