いいね!フォロワー数は増えたけれど...ネット世代(原田謙介さん、春香クリスティーンさん、石垣達也さん)による「ネット選挙反省会」(前編)

日本で初めてネットを利用した選挙活動が解禁された参院選が終了した。果たして、政党や候補者たちはネットを使いこなせていたのか? 若い世代にその声は届いたのか? ネット選挙解禁を支援してきた、原田謙介さん(27)、「永田町大好き! 春香クリスティーンのおもしろい政治ジャパン」の著者である政治好きタレント、春香クリスティーンさん(21)、慶応大1年で10代の政治関心の向上を目的に活動しているの副代表、石垣達也さん(18)に、参院選を振り返っていただく「ネット選挙反省会」。ネット世代である3人から見たネット選挙とはーー。
宇津宮尚子

日本で初めてネットを利用した選挙活動が解禁された参院選が終了した。果たして、政党や候補者たちはネットを使いこなせていたのか? 若い世代にその声は届いたのか? ネット選挙解禁を支援してきたNPO法人「YouthCreate」、原田謙介さん(27)、「永田町大好き! 春香クリスティーンのおもしろい政治ジャパン」の著者である政治好きタレント、春香クリスティーンさん(21)、慶応大1年で10代の政治関心の向上を目的に活動している学生団体「僕らの一歩が、日本を変える。」の副代表、石垣達也さん(18)に、参院選を振り返っていただく「ネット選挙反省会」。ネット世代である3人から見たネット選挙とはーー。

■ずばり、「ネット選挙」は盛り上がった?

ーー日本で初めてのネット選挙が終わりましたが、ネット世代である皆さんから見て、今回の参院選はどうだったか、率直なご感想をお願いします。

春香クリスティーンさん(以下、クリスティーン):ネット選挙、微妙でした(笑)。盛り上がってなかったですね。各政党も動画をいっぱい配信したり、ツイッターやフェイスブックに力を入れたりする候補者はいて、情報量はすごい増えました。でも例えば、維新の東京選挙区候補者、小倉淳さんは毎日、ネット動画配信してましたし、自民党の比例区候補者、伊藤洋介さんもネット中心に活動されてましたが、結局、有権者に響かず落選されました。

ネットでそうした情報を見る人は、そもそも政治に興味がある人です。同級生ぐらいの子に聞いてみたら、「ネットだけだと気持ちがいまいち伝わってこない」と言われました。街頭で話しているのを聞いて、じゃあどんな人だろう?とネットで調べることはあるけれど、よほど炎上して気になって見にいかない限り、ネットだけだと本当に生身の人間として、どういう人なのかがなかなか伝わらない。

実際、町中に「ネット選挙解禁」という情報が出てましたけれど、別の友だちに電話して「ネット選挙どう?」って訊ねたら、「聞いたことないよ」と言われてしまって。政治経済のニュースを普段からスルーしてしまうような人には、やっぱり引っかからないんですね。でも、その2分後ぐらいに「今、目の前にネット選挙解禁のポスターあるわー」って電話かかってきましたけれど(笑)。今回のネット選挙、興味ある人はどんどん、興味を持つんだけど、そうじゃない人はあえて避けているところもあった。二極化してしまったなと感じました。

春香クリスティーンさん

原田謙介さん(以下、原田):僕はあえて、ポジティブな意見を出します(笑)。僕は仲間と一緒に「One Voice Campaign」という活動で、ネット運動解禁に向けて動いていたのですけれど、今回、すごく良かったのはいろいろデータに出ているんですが、若い人ほど「ネットの情報がためになった」「ネットの情報を参考に投票に行った」という人が多かった。多いといっても、20代の2割。でも、40代以上になると1割を切るぐらいなので、初めて若い人が使いやすいと思えるツールが選挙の中に入ってきたことは良かったと思っています。もちろん、2割という数は少ないと思いますが、自分自身が政党や候補者をフォローしてなくても、誰か僕みたいな政治に興味のある友人がいれば、情報が流れてきて「なんか見ちゃった」という人がある程度いたようなので、拡散性というSNSの特性によって少しは響いたかなと予想しています。

今まで、本当に選挙運動は一方通行で、駅前で誰に向かってかわからないけどがんばって話しているとか、そういうことが多かった。今回はその様子がネット動画にアップされ、ツイッター上で双方向性が出てきたことが良かったです。あくまで、日本では初めてのネット選挙解禁なので、日本中の誰もが解禁してどうなるかわかっていなかった中、若い人を中心に、少しでも影響があったことはポジティブなことだった。今後、選挙のない期間も有権者と政治のコミュニケーションが行われて、また次の選挙を迎えた時に、もっと大きな力になっていると確信しています。

石垣達也さん(以下、石垣):僕たちは「僕らの一歩が日本を変える。」という学生組織で10代の政治関心の向上を目指しています。自分自身は18歳なんですけど、投票権を持っていない若者として、投票権を得る前に政治への関心を高めていけば、将来の有権者として投票率がアップにつながると思っています。ネット選挙運動でも、選挙の投票につなげることが意義だと思っているんですが、今回、政党や政治家はフォロワー数を増やすことにだけに集中してしまっていた。

でも、有権者はツイッターでフォローしていても、選挙カーを見たとか会ったとか、そういう一致があるか、ないかでけっこう投票行動を変えていたと思いました。候補者側も工夫すべき点があったのではないでしょうか。ネットは手段だと思うので、使おうと思う人がいなければ活用されない。そういう人を増やしていかなければいけない。

原田謙介さん

■街頭演説の告知には便利だったネット選挙

ーー実際、政党や候補者はネットを活用できていたと思いましたか?

原田:政党も候補者もまだうまく活用できているなと思うところは一部で、「ネット選挙解禁だからネット使わなきゃ」という感じの人が多かった。優勢が伝えられていた地方の候補者のツイッターアカウントを見たら、フォロワー数が80人だったりしますし(笑)。「ネットで選挙やります!」って言っていた候補者でもフォロワー数が3000人だったり。ただ、ひとつ良かったのは、街頭演説の場所の告知をかなりしていたことですね。

クリスティーン:便利でしたね。LINEでも送られてきてましたし。でも、SNSだと私のプライベート空間にそこまで踏み込まないで、という人も中にはいました(笑)

原田:興味のある人が、リアルの場を見つけられるというのはよかったけれど、政党や候補者のツイートが業務連絡になっていたこともありました。街頭演説の告知だけではなく、例えば子育て政策について、一言二言挟むだけでも、中身のある発信になったのかなとは思います。

クリスティーン:みんな動画に興味を持っていましたね。実際の感じが見られるので。

石垣:動画は逆に長いと見たくなくなるので、細かいところに気を配っている候補者もいました。それから、10代からすると、街頭演説の日程をリツイートできる皆さんがうらやましかったです(笑)

原田:20歳未満はネットでも選挙活動ができないんだよね(笑)

石垣:総務省の方は本当にリツイートを知ってるのかなって………

原田:それは一応、知ってたよ(笑)

石垣:リツイートもなんですけど、ルールが曖昧でした。

クリスティーン:ツイッターのアカウントも本当に未成年なのか、特定できないですよね。

石垣達也さん

■「選挙じゃない期間から『いいね!』の積み重ねを」

原田:ただ、若い人に、初めて政治が寄ってきたなということは周囲からも聞いています。ポジティブに評価している若者は多いんじゃないですかね。

クリスティーン:気軽に見られるようにはなりました。課題は「質」ですね。とりあえず、回数いっぱい、フェイスブックを更新してくれるのは、私からすればありがたいのですが、普通の20代の学生が、自分のプライベートスペースで「選挙、選挙」ってなっちゃうと、友達の投稿が見られなくなってしまって、ちょっとうんざりしちゃうかなって。それから、選挙中だけじゃなくて、普段から見られるといいですね。そのあたりのアクセスのしやすさや、内容も面白いことを書いてみたり、そういうことを増やしたらいいかなと思います。

原田:選挙の時っていうのは、普段の関係性の延長線上だと思っています。だから本当は、ネット選挙解禁する前でも政党がアプリをもっと出しておいても良かったし、突然、ネット選挙がきたから出そうってなってたわけで。

クリスティーン:日本の不思議なところは、選挙期間中は「選挙、選挙」になるけど、終わった瞬間にからっぽになります。でも、アメリカの大統領選をみたら、2週間どころじゃなくて、ずーっとやっている。それぐらい熱意、常に持ち続けられるモチベーションでいなきゃいけないと思うんですよね。

原田:そうですね。だから、ツイッターやフェイスブックで、本当はずーっとある種、ライトなファン層を増やさないといけなくて、気になる政治家がいたら、とりあえずフォローしようか、「いいね!」押しておこうかとってならないと。。政治家の後援会に入るのはハードルが高いけど。「いいね!」が積み重なって、選挙になった時にあらためて判断すれば良いと思います。

石垣:普段の政治家の姿といえば、麻生さんがアイスクリーム食べている写真は10代に受けてましたよね。

クリスティーン:そういうところから話題になるだけでも、政治家さんと私たち国民が離れているわけではないというのがわかります。コンビニの前でアイス食べるだけでも拡散されますよね。

原田:ああ、普通にアイス食うんだ、政治家も普通の人なんだって。ネット選挙を通じて見ることができたのはよかったですね。

石垣:安倍首相が「なっちゃん」を飲んでいる写真も受けました(笑)

(後編に続く)

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■原田謙介(はらだ・けんすけ)

東大在学時の2008年、「20代の投票率向上」を目指し学生団体「ivote」を結成。2012年3月に大学卒業後、「政治と若者をつなぐ」をコンセプトに活動を続ける。インターネット選挙運動解禁を目指した「One Voice Campaign」発起人。2013年1月にNPO法人「YouthCreate」を設立。地方議員と若者の交流会「VotersBar」や行政などとのコラボレーションイベントなどを展開中。ブブゼラを購入するほどのサッカー好き。バルカン半島・南アジアなど放浪

ツイッターアカウント https://twitter.com/haraken0814

■春香クリスティーン(はるか・くりすてぃーん)

上智大学文学部新聞学科(休学中)。趣味は、国会議員さんの追っかけ、国会議員カルタ製作。著書に「永田町大好き! 春香クリスティーンのおもしろい政治ジャパン」(マガジンハウス)。国会好きSNSサイト「国会マニアティーン」を主宰。テレビ朝日×朝日新聞モバイルサイト「EXニュース」でも連載中。

ツイッターアカウント https://twitter.com/harukachristine

ブログ http://ameblo.jp/haruka-christine/

■石垣達也(いしがき・たつや)

慶應義塾大学総合政策学部1年。「10代の政治関心の向上、および政治参加の拡大」「政治をクールでスマートでかっこよくしていきたい」を目的に活動している学生団体「僕らの一歩が、日本を変える。」の副代表。

ツイッターアカウント https://twitter.com/zambimoscow

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