経済協力開発機構(OECD)が先月発表した加盟国の教育に関する調査結果「図表でみる教育2013年版」。この調査によると、大学など高等教育機関に在籍する日本人のうち、海外に留学している学生の割合は、日本は1.0%で、比較できる加盟国33カ国中、ワースト2位だった。OECDは「奨学金などの資金面での支援のほか、帰国後、海外での経験や学業がしっかりと評価される制度も必要だ」としている。
発表によると、海外で学ぶ学生は2005年の6万2853人をピークに年々減少。11年は3万8535人だった。OECD加盟国の平均は2.0%。アメリカは0.3%、メキシコは日本と同じ1.0%だった。留学する学生の割合が最も高いのはアイスランドで18.9%。次いでスロバキア14.1%、アイルランド13.0%、エストニア7.7%など。
日本の学生の留学先はアメリカが他の国に比べて圧倒的に多く54.2%を占める。次いでイギリスが9.6%、オーストラリア5.5%、カナダ・ドイツ4.8%と英語圏の人気が高い。
日本人の留学者数の減少傾向について、OECDは報告書で「日本人学生の『内向き』傾向や外国に出るリスクへの恐れを反映している」と指摘。アンドレア・シュライヒャーOECD教育局次長は「日本の学生は留学しなければいけないプレッシャーを感じていない。世界に出て、広く見聞し経験するチャンスがあるのに、それを逃している」と述べた。
一方、日本の高等教育機関は世界の留学生の3.5%を受け入れていて、8番目に高い水準。「この10年のOECD諸国の伸び率は2倍だが、日本はそれを上回る伸び率」と評価した。
日本から海外への留学者数の減少は文部科学省の集計でも明らかになっている。
国際舞台で活躍できる「グローバル人材」が求められる中、これまでも学生たちの「内向き」志向がいわれてきた。若者の留学者数の減少の原因には、経済状況の悪化で留学を希望していても親の収入減で留学を諦めざるを得なかったり、就職活動の早期化で就職活動への影響を恐れ留学を避けたりする問題点も指摘される。
こうした状況を受け、若者たちの留学を後押しする動きが広がっている。
安倍政権が先月閣議決定した「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」には、2020年までに日本人留学生を6万人(2010年)から12万人へ倍増させるという目標値が盛り込まれた。
危機感を持った経済界もすでに対策に乗り出している。朝日新聞の記事によると、経団連の2011年の調査では、海外での売り上げを伸ばすため、海外で通用する人材確保が必要なのに、実際に留学経験のある新卒者を採用できた企業は27%に過ぎなかった。「就職活動期間を削る不安が、留学をためらわせる一因」とみた経団連は昨年8月、長期留学者向けの就職イベントを初開催した。また、留学する大学生に年100万円を支給する独自の奨学金制度も始めたという。(朝日新聞デジタル「若者よ、海外へ飛び出せ 留学増加の兆し」2012年9月28日)
経団連は政府の要請を受け、2016年4月入社の採用から、大学生の就職活動の解禁時期を3年生の3月に繰り下げる指針を定めると決定している。
大学側も対応を進める。東京大学は2015年度末までに4学期制の導入方針を決めた。時事通信によると、現行の2学期制より海外留学や留学生受け入れを容易にして、国際競争力を高めるのが狙いという。
自治体も奨学金制度を設け、若者の海外留学を後押しする。
ここへきて若者の海外留学が再び注目を集め、「内向ち」志向、留学者数減が底を打ちつつあるとの見方もある。
アンドレア・シュライヒャーOECD教育局次長は「奨学金などの資金的な援助も必要だが、海外での経験や学業がしっかりと評価される制度も必要だ」と指摘している。
海外へ向かう若者の留学者数を増やすべきか、増やすためにはどうしたらいいのか。ご意見お聞かせください。