週刊文春が行った、自民党比例区公認の渡邉美樹ワタミ会長に関するアンケートが、議論を呼んでいる。
週刊文春は、6月7日〜23日の間、自誌のメルマガ読者1500人を対象にアンケートを実施し、渡邉美樹ワタミ会長が自民党から比例区公認で出馬することをどう思うかについて聞いたところ、79.8%が反対し、賛成の20.2%を大きく上回ったという。
反対理由の多くは、渡邊氏が会長を務めるワタミグループにおける長時間労働を指摘するものである。2008年4月に「ワタミフードサービス」に入社した26歳の女性が、2ヶ月後の6月に自殺したが、女性の自殺は過労による労働災害であると正式に認定されている。このことに対し、渡邊氏は、労務管理ができていなかったとの認識はないとツイッターに投稿している。
また、ワタミグループの介護事業で、複数の死亡事故が発生し、遺族とトラブルになっていることが報じられたり、「365日24時間死ぬまで働け」などの内容が書かれた『理念集』と呼ばれるワタミグループの社内冊子等があることが発覚するなどがあり、同社を「ブラック企業」と呼ぶ声も上がっている。
ワタミグループに対して「ブラック企業」との評判があることについて、渡邊氏は自身のブログで下記のように反論している。
ワタミの外食事業の離職率(平成22年4月入社社員の3年以内離職率42.8%)は、厚生労働省公表(平成23年統計、以下同じ)の宿泊業・飲食サービス業の離職率(同48.5%)を下回っています。
そもそも飲食サービス業の離職率は、全産業(同28.8%)と比べると高い水準にあります。これは深夜勤務などの事業特性による影響が大きいためであり、単純に、ほかの産業と横並びで論じることは、適切ではありません。
ワタミの外食事業の年収は、平成24年度において433万円であり、厚生労働省公表の宿泊・飲食サービス業平均年収370万円を上回っています。
(わたなべ美樹公式サイト「「ブラック企業」と呼ばれることについて」より。2013.05.31)
また、6月8日に行われたワタミの株主総会でも、これと同等の内容が発表されている。
このブログ記事を例に上げ、6月18日の参議院厚生労働委員会で、田村智子議員(共産党)が「長時間労働に対しては、実は大臣告示も出して、時間外は月45時間、年間は360時間を超えないものとしなければならない、というふうにしている」として、下記のように指摘した。
「大臣告示っていうのは、平均45時間ではないです。上限月45時間を超えてはいけないと言ってるわけです。
月38時間を12倍すると、年間456時間となり大臣告示を100時間近く上回る。これは、大臣告示をゆがめて、開き直っている。」
自民党はなぜ、渡辺氏を公認候補に立てたのか。
渡邊氏は、5月31日に、都内で行われた参院選出馬記者会見において、国政の役割は、外交、国防、経済、教育、福祉があり、このうち、経済、教育、福祉の分野で経験があるため、役に立てると話した。
渡邊氏は、アベノミクスにおける第3の矢である成長戦略に触れ、経済の分野では実体経済の成長のために中小企業の育成が必要と述べた。渡邊氏は世界中に店舗つまでになったことを事例にあげ、全くのゼロから、1億の企業、5億の企業というように、その企業の規模に合わせて、どのようなサポートが必要なのかを考える必要があると話した。
また、規制緩和については、農業、介護、病院など、国の規制が強い所での経験を述べ、TPPを開放する必要があると話した。特に農業については、日本で最大クラスの有機農業法人を作り上げたことを例に上げ、農業には「大規模化」、「6次産業化」「経営力強化」が必要と述べた。
渡邊氏はこの記者会見で、4月10日に安倍首相から「今までの経験を政治に活かしてくれないか」と、出馬依頼を受けたと答えている。
中小企業の育成、規制緩和など、経済成長の分野では確かに渡邊氏はこれまでの経験から政策を話すことができるかもしれない。
一方、安倍首相の掲げる成長戦略のなかで、これまでワタミが指摘されてきた雇用環境の問題の解決は、どれぐらい行われるのだろうか。安倍首相は成長戦略のなかで、子育て中の長期間労働を抑制について対策を取る方向としているが、雇用環境については、多様な働き方の実現として、「労働時間法制の見直し」を秋から労働政策審議会で行うとしている。この、労働時間法制を見直すことは、長時間労働を許すことになるとの指摘も出ている。
渡邊氏は、このあたりはどのように考えているのだろうか。
田村参議院議員は厚生労働委員会で渡辺氏の自民党からの出馬に対しても下記のように指摘している。
「渡邉氏は『自民党 参議院比例区全国支部長』と大きく打ち出されている。これでいいのか、ということなんです。」(参議院厚生労働委員会 6月8日)
これに対して田村厚生労働大臣は、次のように回答した。
「厚生労働省として、政治活動等々に対してものを言う立場にはないが、一般論として適正労働時間を守って、しっかりとした雇用環境を作ることに、経営者にとっては責任があると思っている。」
さて、あなたの考えはいかがだろうか。コメントで考えをお寄せください。
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