上場時期などをめぐり筆頭株主の米投資会社サーベラス
両社の対立はひとまず会社側に軍配が上がるかたちとなったが、上場に向けた協議が実現する見通しは立っていない。
総会終了後、記者団の取材に応じた後藤高志社長は「可及的速やかに上場したい」と述べ、サーベラスに対して「上場に向けた話し合いをしっかり呼び掛けたい」と語った。
一方、サーベラスのシニア・マネージング・ディレクター、ルイス・フォースター氏は記者団に対し、西武は「右手で握手をし、左手で拳を上げているのと同じ」と指摘、オープンな協議を表明しながらサーベラスからの提案を拒否している西武側の姿勢を批判した。事前に提出していた質問に満足する回答がなかったことについても「株主に対する説明責任の意欲を欠いている」と語った。
総会でサーベラスは、西武のコーポレート・ガバナンスを強化する必要があるとして、元米副大統領のジェームス・ダンフォース・クエール氏や元金融庁長官の五味広文氏ら8人の取締役選任を提案した。西武側は、株主に対して賛成しないように呼び掛けていた。
総会には、サーベラスのフォースター氏と弁護士ら計7人が出席して提案理由を説明、一般株主に賛同を呼びかけた。フォースター氏は、西武の株主への対応姿勢や経営実績などに対して問題があると強調した。
議長を務めた後藤社長は「サーベラスの提案は取締役会の支配を意図したもの。中長期的に企業価値を損なう」として、会社側の提案への理解を求めた。
サーベラスは経営全般に関する全36項目に渡る事前質問事項を西武HDへ送付。業績予想が二転三転するのはおかしいなどの指摘に対して、西武側は適切に対応しているなどと回答。後藤社長は「コーポレートガバナンスや内部統制システムの強化を経営の最優先課題として取り組んでいる」などと説明した。他の株主からは、上場が遅れているのではないかとの指摘も出た。
この日の株主総会には、過去最高の900人以上が出席。このため入場手続きに手間取り、開始時間が10分以上遅れた。午前10時13分に始まった総会は、午後3時03分に終了した。
サーベラスは株式公開買い付け(TOB)によって西武HD株式の保有比率を32.44%から35.48%に引き上げた。3分の1以上を握ると株主総会で減資や合併などを決める特別決議を拒否することができる。
総会に出席した個人株主は、西武を支持する声が多かったが、経営姿勢に対する注文も出ていた。ある男性個人株主(65)は「西武は考えが甘い。今までの体質にどこか居座りすぎている。今回の件が、体質改善のきっかけになればいいと思う」と語った。[東京 25日 ロイター]
(布施太郎、江本恵美;編集 宮崎亜巳)