ヤフーのブログに無断で写真が掲載され著作権が侵害されたとして、札幌市の写真家がヤフー側に発信者の情報を開示するよう札幌地裁に求めた訴訟があり、地裁の和解案に応じてヤフー側が発信者情報を開示していたことがわかった。朝日新聞デジタルが報じた。
朝日新聞デジタルによると、写真家が撮影した道内の風景写真6枚がヤフーのブログに無断で掲載された。ヤフー側に削除や発信者情報を求めたが回答がなかったため提訴に踏み切ったという。和解の経緯を次のように伝えている。
(編集部注:訴えを起こした写真家によると)ヤフー側は請求棄却を求める姿勢だったが、弁論では争わず、情報を開示するかわりに第三者に和解内容を開示しない和解案を提示。写真家側が拒否すると、ヤフー側は条件なしで発信者情報を開示するよう求めた裁判所の和解案を受け入れ、6月6日付で和解した。
(朝日新聞デジタル「ヤフー、ブログ発信者情報を開示 地裁和解案に応じる」 2013/6/14 3:06)
ヤフー広報は朝日新聞の取材に対し「一般的には、発信者情報を開示するかはケースバイケースで判断しており、裁判にならなければ開示しないわけではない」としている。
違法な掲載や書き込みなどをされた被害者が、接続業者側に発信者の情報開示を求めることができることは「プロバイダー責任制限法」で定められている。
2004年に施行された同法では、インターネットや携帯電話の掲示板などで誹謗中傷を受けたり、個人情報を掲載されたりした場合、接続業者や掲示板管理者などに対して、削除要請が出来るとしている。また、情報を発信者にプロバイダーなど事業者を通じて、情報開示を求めることができる。
ただし、削除するか、開示するかどうかの判断は事業者に委ねられている。
総務省の資料によると、事業者が開示に応じないことによる損害は、故意又は重過失がなければ、免責されるという。
総務省の資料によると、情報開示される要件は次の通り。
①請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであること
②損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他開示を受けるべき正当な理由があること
また、警視庁のホームページによると、開示請求できる発信者情報は、発信者の氏名や名称のほか、住所、メールアドレス、侵害情報に関わるIPアドレスなどという。
ちなみに、この「プロバイダー責任制限法」、ネット選挙とも関係がある。
ネット選挙を解禁とする改正公職選挙法が成立したことにともない、同法に「特例」が設けられた。これまでは、書き込み削除をプロバイダーに求める場合、書き込みをした人から同意を得るまでの猶予期間は7日間だった。これを2日間に変更し、期限内に回答がなければ、勝手に削除してもプロバイダーは賠償責任を問われないことになった。